職業紹介サービスの事業収益の大部分を占めるのは、求人企業から支払われる手数料です。これから職業紹介サービスを開業するうえで、「最適な手数料が分からない」と悩む方も多いでしょう。
そこで本記事では、以下の内容を詳しく解説します。
・職業紹介サービスの手数料の種類
・職業紹介サービスの手数料の上限・相場
・職業紹介サービスの手数料に関する注意点
職業紹介サービスの手数料は、上限額や届け出の方法が法律で定められています。最後まで読み、適切な手数料の設定方法を知りましょう。
目次
職業紹介サービスで発生する手数料の種類
職業紹介サービスで発生する手数料は、大きく以下の2種類に分けられます。
- 求人・求職の依頼を受けた際の受付手数料
- 企業と求職者がマッチングした際の紹介手数料
求人・求職の依頼を受けた際の受付手数料
受付手数料とは、職業紹介サービスが求人・求職の依頼を受け付けた際に発生する着手金です。受付手数料は以下の2つに分けられます(*1)。
受付手数料の種類 | 概要 | 上限額 |
求人受付手数料 | 企業が職業紹介サービス に求人情報を登録する際 に請求できる手数料 | 710円 (免税事業者は660円) |
求職受付手数料 ※特定の職種に限る | 求職者が職業紹介サービ スを利用する際に請求で きる手数料 | 710円 (免税事業者は660円) |
原則として職業紹介サービスは求職者から受付手数料を徴収できません。しかし以下の6職種に限り、求職者に対して受付手数料を請求できます。
- 芸能家
- 家政婦(夫)
- 配ぜん人
- 調理士
- モデル
- マネキン
なお受付手数料は上限額が決まっているだけで、必ず徴収しなければならないものではありません。売上に大きな影響を与えないようなら、受付手数料は請求しない方が求人企業・求職者にとってメリットが大きいといえます。
*1(参考)一般財団法人 日本職業協会「職業紹介をめぐる法的な問題等について」
企業と求職者がマッチングした際の紹介手数料
職業紹介サービスは求人企業と求職者がマッチングすると、以下の2種類の紹介手数料を請求できます。
- 上限制手数料・届出制手数料
- 求職者手数料
上限制手数料・届出制手数料
上限制手数料および届出制手数料とは、求人企業と求職者がマッチングした際に、求人企業から徴収できる手数料を指します。上限制手数料と届出制手数料の違いは以下のとおりです(*1)。
手数料の種類 | 手数料の上限 | 事前の届け出 |
上限制手数料 | 6ヶ月分の賃金の11.0% (免税事業者は10.3%) | 不要 |
届出制手数料 | 事前に厚生労働大臣に届 け出る手数料表の金額 | 必要 |
例えば求職者が年収400万円で企業に採用された場合、上限制手数料と届出制手数料はそれぞれ以下のとおりです。(届出制手数料の手数料は30.0%と仮定)
- 上限制手数料:400万円×11.0%=44万円
- 届出制手数料:400万円×30.0%=120万円
届出制手数料の方が上限制手数料よりも徴収額が大きいため、ほとんどの職業紹介サービスは届出制手数料を採用しています。
*1(参考)一般財団法人 日本職業協会「職業紹介をめぐる法的な問題等について」
求職者手数料
求職者手数料とは、職業紹介サービスが紹介した企業に求職者が就職した際、求職者に対して請求できる手数料です。
原則として、職業紹介サービスは求職者から手数料を徴収できません。しかし以下の職種に限り、求職者に紹介手数料を請求できます(*1)。
- 芸能家
- モデル
- 経営管理者(年収700万円以上)
- 科学技術者(年収700万円以上)
- 熟練技能者(年収700万円以上)
求職者手数料の上限は、就職先企業の賃金6ヶ月分の11.0%(免税事業者は10.3%)です。ただし芸術家とモデルを除き、求職者手数料が徴収されるケースはほとんどないのが実情です。
よって特別な事情がない限りは、求職者手数料はなしに設定してもよいでしょう。
*1(参考)一般財団法人 日本職業協会「職業紹介をめぐる法的な問題等について」
職業紹介サービスの手数料は27.5~38.5%が相場
職業紹介サービスの紹介手数料(届出制手数料)は「理論年収の27.5~38.5%程度」が相場です。
相場を上回る紹介手数料を設定した場合、求人企業から敬遠される可能性があります。逆に紹介手数料が相場を下回ると、その分自社の利益が減ってしまいます。
紹介手数料を決めるときは、できるだけ相場の範囲内で設定しましょう。
なお理論年収とは、会社に1年間勤務した際に得られる年収の概算額です。理論年収には以下の収入が含まれます。
- 基本給
- 賞与
- 固定残業代(毎月変動の残業代は含まない)
- 各種手当(通勤手当、住宅手当など)
理論年収の算出方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
職業紹介サービスの手数料は事前に労働局へ提出する必要がある
職業紹介サービスは紹介手数料を設定する際、事業所を管轄する都道府県の労働局へ事前に申請しなければなりません。申請に必要な書類は以下の2つです(*1)。
- 届出制手数料届出書
- 手数料表
また、紹介手数料の金額は途中で変更できます。手数料を変えたい場合は届出制手数料変更届出書に記載し、管轄の労働局を経由して厚生労働大臣に提出しましょう(*2)。
なお労働局へ事前に届け出が必要なのは、届出制手数料を徴収する場合のみです。上限制手数料や求職者手数料は、事前申請なしで請求できます。
*1(参考)西本社労士・行政書士事務所「届出制手数料に関する手続き」
*2(参考)厚生労働省「事業許可までのプロセス」P37
職業紹介サービスの手数料表の書き方
手数料表とは、職業紹介サービスが紹介手数料を定める際、事前に労働局へ提出しなければならない書類です。手数料表の書き方は各都道府県の労働局が公表しています。
例えば以下は、東京労働局が公表している手数料表の記載例です(*1)。
手数料表のフォーマットや書き方は労働局によって異なります。事業所を管轄する都道府県の労働局の公式サイトからフォーマットをダウンロードし、記入例を見ながら作成しましょう。
*1(引用)厚生労働省東京労働局「手数料表一般型(記載例)」
職業紹介サービスの手数料に関する注意点
職業紹介サービスの手数料を設定する際は、以下の4点に注意しましょう。
- 上限を超えた手数料を徴収すると罰則を受ける
- 手数料の返金規定を開示しなければならない
- 求職者には原則として手数料を請求できない
- 手数料が不当とみなされると見直しを命じられる
上限を超えた手数料を徴収すると罰則を受ける
職業紹介サービスが一定の上限を超えた手数料を徴収すると、罰則を受けるため注意しましょう。実際に厚生労働省では、以下のような罰則規定を設けています(*1)。
次のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。 イ 厚生労働大臣の許可を受けて有料職業紹介事業を行う者であって、則第20条第1項及び 第2項に定める額を超えて手数料又は報酬を受け、又は第3項に定める徴収手続きに違反し た者(第2号) |
職業紹介事業において、上限が定められている手数料は以下の3つです。
手数料 | 上限額 |
求人・求職受付手数料 | 710円 (免税事業者は660円) |
上限制手数料 | 6ヶ月分の賃金の11.0% (免税事業者は10.3%) |
求職者手数料 | 6ヶ月分の賃金の11.0% (免税事業者は10.3%) |
上限額を理解していなかった結果、違法性を問われる可能性もあります。上限を超えた手数料の徴収は懲役の可能性もある違法行為と認識し、絶対に行わないようにしましょう。
*1(引用)厚生労働省「第 14 違法行為による罰則、行政処分 」P1
手数料の返金規定を開示しなければならない
職業紹介サービスの運営者は、手数料の返金規定に関する情報を開示しなければなりません。実際に職業安定法では、以下のように明記されています(*1)。
第二十四条の五 法第三十二条の十三の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。 二 返戻金制度(その紹介により就職した者が早期に離職したことその他これに準ずる事由があつた場合に、当該者を紹介した雇用主から徴収すべき手数料の全部又は一部を返戻する制度その他これに準ずる制度をいう。以下同じ。)に関する事項 |
返金規定とは、求人企業に紹介した人材が早期離職した際に、手数料の一部を返金する規定です。職業紹介サービスを運営する際は、自社サイトの見やすい場所に返金規定の有無や内容を記載しましょう。
なお、義務づけられているのは返金規定に関する情報の開示だけであり、返金規定自体は無くても問題ありません。ただし求人企業とのトラブルを防止するため、返金の基準は設けておいた方が好ましいです。
職業紹介サービスの返金規定について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
*1(参考)職業安定法施行規則第二十四条の五
求職者には原則として手数料を請求できない
職業紹介サービスは原則として求職者に手数料を請求できません。職業安定法でも以下のように明記されています(*1)。
有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。 |
そもそも職業紹介サービスの一番の目的は、求職者に安定した雇用機会を提供することです。ただでさえ経済的に不安定な求職者にさらなる負担をかけないために、法律で手数料の徴収が制限されています。
もし違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるため注意しましょう。
*1(参考)職業安定法施行規則第三十二条の三
手数料が不当とみなされると見直しを命じられる
職業紹介サービスの定めた手数料が不当とみなされた場合、厚生労働省より手数料の見直しを命じられる可能性があります。以下のように、職業安定法にもはっきりと記載されています(*1)。
厚生労働大臣は、第一項第二号に規定する手数料表に基づく手数料が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該有料職業紹介事業者に対し、期限を定めて、その手数料表を変更すべきことを命ずることができる。 |
なお、不当な手数料とみなされるのは以下のような場合です。
- 求職者の年齢や学歴によって、手数料を変動させる
- 手数料の種類や計算方法が不明瞭で分かりにくい
- 他の職業紹介サービスと比較して手数料が著しく高い
*1(参考)職業安定法施行規則第三十二条の三
職業紹介サービスの手数料は法律に従い正しく設定しよう!
職業紹介サービスの手数料は、上限額や届け出方法などが法律で明確に定められています。違反した場合は罰則を受ける可能性もあるため注意が必要です。
これから職業紹介サービスを開業しようと考えている方は、本記事で紹介した内容をふまえて適切な手数料を設定しましょう。
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