転職は、決して急いではならない

家を所持していると想像してみてください。
そのうえで、よんどころない事情で、もし「自宅を売りたい」と思った時、どれくらいの期間で売れると思いますか?

1週間?1か月?それとも?

ある調査によれば、家の売却には、3か月から6か月かかる、と言われています。

コロナに伴って、地方や郊外に移住した知人などの話を聞いても、大体同じような期間を要しているので、おそらくそれが普通なのでしょう。

では、本題です。
あなた自身についてお聞きします。

仮に「転職したい」と思った時、
どれくらいの期間、転職活動をしたほうが良いのでしょうか。

探し始めたら、すぐに見つかったよ、という方がいるかもしれません。
会社を勢いで辞めてしまって、早く次の仕事に就きたい、という方もいるかもしれません。

やっぱり家と同じくらいの時間がかかる、という方もいるかもしれません。

様々な考え方があるとは思いますが、個人的には「人間」は家以上に高額ですので、
慎重に慎重を重ねた結果、家を売る以上に時間がかかっても、全くおかしくないのではないでしょうか。

むしろ、じっくり時間をかけて活動すべきだという方のほうが、多いのではないかと推察します。
結論として、私は「転職活動には、少なくとも半年以上かけたほうがいい」と、申し上げたいのです。

転職を急かす人は、100%無視していい

とはいえ、転職のエージェントの中には、もしかしたら、「いいポジションはすぐに埋まってしまいますから、すぐに意思決定してください」という人がいるかもしれません。

でもそれは、商売だからです。
本当にいいエージェントはそんなことは言いません。
いいエージェントは、転職の重みを理解していますから、候補者を急かすことはしません。

転職関連のサービスは、「転職」が成立しないと報酬が発生しないものが多いですから、不動産会社が、決定を急かすのと全く同じで、100%相手の都合と思って構いません。

「早く売らないと、この価格では売れませんよ!」という不動産会社を信用してはいけないのと同じです。

あるいは、企業から「うちからオファーを出したら、すぐに決めてください」と言われるかもしれません。
しかし、本当に向こうが欲しいと思う人材であれば、3か月、半年くらい当たり前のように待ってくれます。

実際、私が在籍していたコンサルティング会社では、意思決定を1か月以上待って、さらに入社は半年以上先、というのは普通にありました。

私見ですが、そもそも、採用側が「一刻も早く採用したい!」という状況にあるならば、だいたいにおいてそれはあまり良くない会社です。

採用をやったことのある人は痛感していると思いますが、人を拙速に採用することほど、恐ろしいことはありません。
私が在籍していたコンサルティング会社では「迷ったら採用しない」という鉄則を掲げていたくらいです。

それなのに入社を急かす会社は、裏があります。
人の入れ替わりが激しい会社であり、悪く言えば「人を使い捨てる」会社です。

もちろん中には、外資系の有名企業のように、戦略的に「今入社したら、ボーナス〇百万!」というオファーを出す気前のいい会社もあります。

が、そんなボーナスもなく「今返事しなきゃ、お断り!」
と脅してくるような会社には、そもそも入るべきではないのです。

もしそれで「埋まってしまいました」と言われても、「縁がなかった」と考えるべきで、そこはあなたの行くべき場所ではない。

理想の転職とは

では、理想的な転職のプロセスとはどのようなものでしょう。

本当のところを申し上げましょう。
実は、先ほど「半年以上かけるべき」と書きましたが、理想的には半年でも短すぎます。

少なくとも、2年から3年はかけたいところです。

「2年から3年もかけてたら、何処も採用してくれないよ」

という方もいるでしょうが、「エージェントに会う」ことや「転職先との面接」だけが転職活動ではないのです。それは、確かに最後の半年で十分です。

ではなぜ、2年から3年かけて転職、と申し上げたのか。
それは、転職活動は、「会社を移ろうと考える前」からやっておくべきだからです。

というのも、「会社を移ろうと思ってからする転職活動」では、待遇の若干の改善、もしくは現状維持にとどまり勝ちです。

大きな待遇の改善を勝ち取る転職活動は、そうではなく、現職で2,3年かけて、次の転職の足掛かりを作る事から始まります。

次に目指すべき業界はどこか。
次に目指すべき職種は何か。
何が次の転職の売りになるのか。
何が他と自分を差別化するのか。

そうした認識を、2,3年かけて作り上げた後の転職は、漫然とその期間を過ごした場合の転職とはるかに違うものになるでしょう。

もちろん、その結果として、現職で出世したり、やりがいのあることを発見できたりし、「転職しない」という事も十分にあり得るでしょう。

しかし、つねに出世と転職を天秤にかけながら活動すれば、いざという時に「転職」が実り多きものになることは間違いありません。

そう考えていくと、「転職で成功した人」は、多くの場合、実はそのまま会社にいたとしても、成功したに違いない人です。

いつ辞めるの?

かつて私が在籍していたコンサルティング会社の一部署は、世の中の多くの方が認識しているように、転職者の多い職場でした。

事実、私が入社した時、同じ部署にいた新卒入社メンバーは、先輩を含めても数十名のコンサルタントの中で私を含めて3名のみ。
上司は「新卒にコンサルタントが務まるわけがない」という考え方の持ち主だったため、周りにはほぼ転職者しかいませんでした。

また、そこに在籍していたメンバーは、コアの一部メンバーを除き、数年でほとんど入れ替わるくらいの、流動性の高い人々で、会社を去っていく転職者の行き先は、シンクタンク、公的機関、弁護士事務所、クライアントの経営層、起業家など、様々でしたが、常に良いキャリアを求めて、世の中を見ていたと感じます。

その中の、私がお世話になったある人は、転職に際して、こういいました。
「安達さんは、いつ辞めるの?」
「次はどう考えているの?」
「どんなキャリアを考えているの?」
と。

この発言は一見、今の会社をないがしろにしているようにも聞こえます。
しかし、彼らは常に、「辞めること」前提で動いていたがゆえに、現職で成果を上げることに対して非常に強いこだわりを持っていました。

「今の給料を上げておくと、次の転職の時に、高い給与の交渉がしやすいからね」と。

転職は、結婚や就職と同じくらい大きな人生のイベント

転職は、結婚や就職、あるいは進学と同じくらいの大きな人生のイベントです。

しかし、中には転職を上のように計画的に行うのではなく

「発作的に会社を辞めてしまった」
「なんとなく不満があって辞めてしまった」
「違う会社なら私を認めてくれるはず」

といった、若干緩い基準で行う方々もいます。
それは、状況によっては仕方のないこともあるでしょうが、出来れば避けたいところです。

転職活動は決して急いではなりません。

「理想の待遇」
「理想の仕事」

を得るために長期的な計画のもとに行う、人生の一大イベントと捉え、少なくとも2年から3年前から、準備をしておくことを強くお勧めします。


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【著者】安達 裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(http://tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
Twitter:安達裕哉