ぼんやりフリーランスに憧れるより、楽しく働ける企業を探すべし!

「フリーランスになろうかなって考えてるんだけど、どう思う?」

これは少し前、学生時代の友人から受けた質問だ。
なんでも、まわりにフリーランスがわたししかおらず、相談に乗ってほしいとのこと。

「どうって言われてもなぁ……。なんでフリーランスになりたいの?」
「このまま会社勤めしててもダメかなって」
「ダメって、なにが?」
「なんとなく……ほら、会社っていってもいつまでも安泰なわけじゃないし、今の時代手に職をつけておいたほうがいいでしょ?」
「少なくともフリーランスより会社員のほうが収入の保証はあるし、会社にいても専門職に就いてる人なんていっぱいいるじゃん」
「うーん、まぁそうなんだけど……」

どうにも要領を得ないので少し突っ込んで聞いてみたところ、「フリーランスのほうがイマドキだし、自由気ままで楽しそうだし、ネットを見ると自分でもできそうな気がしてきたから」らしい。

フリーランスは1,670万人!ただし働き方は多種多様

数年前、わたし世代(現在30歳)と少し年上の人たちが、「新卒フリーランス」「ノマドブロガー」「プロ〇〇」といった言葉を広め、ネットサロンでかなり稼いでいた。

当時のサラリーパーソンvs.フリーランスという構図はわかりやすく、「会社は理不尽で非効率なことばかり」で「結果を出しても評価してくれない」けれど、「フリーランスならもっと稼げるしすべてが自由」という主張が、連日もてはやされていた。

その影響もあってか、ここ数年、フリーランスノウハウがどんどん増加。仕事の見つけ方や単価交渉のコツ、ポートフォリオ作成方法から税金の手続きまで、調べればすぐに模範解答が見つかる。

「ならば挑戦してみよう」と思う人が増えるのは、当然の流れだ。

事実、2018年のフリーランス人口が1,151万人だったのに対し、2021年には1,670万人に増加。経済規模も、約28兆円にまで拡大している。*1

しかし「フリーランス」といっても、その働き方は多種多様だ。

わたしは、「単発の仕事をつねにいくつか抱えていて、在宅で好きな時間に働く」というスタイル。

一方で、実は取引社数が1~2社にかぎられているフリーランスは26.1%もいて、業務委託や契約社員のイメージに近い働き方の人も多い。*2

意外かもしれないが、週5日朝9時にスーツを着てオフィスに出勤するフリーランスもいる。

「フリーランス」といっても、いろんなかたちがあるのだ。かんたんに、「良い・悪い」「向いてる・向いてない」などとはいえない。

フリーになって満足度が上がったのは「会社員ができないから」?

そもそもわたしがフリーランスになったのは、端的にいえば、会社勤めが向いていないからだった。

学生のときから組織のなかで行動するのが苦手で、自分が納得しないと反抗するし、「理不尽なことでも偉い人が言うならしょうがない」と割り切ることができなかった。

アルバイトのときですら、しょっちゅう店長やマネージャーと喧嘩していたくらいで、「こりゃもう会社員なんて無理だな」と思うしかなかったのだ。

まわりのフリーランスも、「指示されるのが嫌い」「朝が致命的に弱い」「過集中だから労働時間に縛られたくない」「オフィスでの雑談が苦手」のように、会社員としての素質がなくてフリーランスを選んだ人が圧倒的に多い。

もちろん、だからといってそれが「悪い」わけではない。
会社勤めでは活躍できなかったから、ちがう土俵で戦うことにした。それだけだ。

フリーランスに関する調査でも、過去に会社勤めをしていた人は95.2%と大半で、会社員時代に比べて仕事に対する満足度が上がった人は86.9%という結果がある。*3

ただ、それはフリーランスという働き方が絶対的に優れているからではなく、フリーランスを選ぶ層は会社勤めに馴染めないからではないか……と思っている。わたしがそうだから。

だから、フリーランス「しか」できない人の「フリーランス最高論」は警戒して聞くべきで、それを鵜呑みにして「じゃあ自分も」というのは、あまりおススメできない。

フリーランスのデメリットを受け入れる覚悟はあるのか

相談してきた冒頭の友人はエンジニアで、現在の働き方はかなり自由。私服でいいし、リモートワークもOKだし、たしかフレックスタイムも使えたはず。

職場の雰囲気もよく、上司との関係も良好。結構稼いでるみたいだし、人並みに悩みはあるにせよ、仕事の愚痴もほとんど聞いたことがない。

それでも、
「30歳になって自分のキャリアを考えたときに、これでいいのかなと思って」
「自分の力でもっとなにかすべきなんじゃないかって気持ちがある」
「フリーランスなら活躍の場を広げられそう」
というふんわりした理由で、新卒から働いた会社を去ろうとしていたのだ。

もちろん、挑戦することはいいことではある。

でも「若い人でもフリーランスになってるし、自由気ままで楽しそうだし、自分もできそうだから」という考えであれば、「わざわざフリーランスになる必要ないんじゃ?」とも思う。

たしかにフリーランスは、好きな時間に起きて、仕事しながらYouTube見ても怒られない働き方ができるけど、ゴロゴロしてるだけじゃ仕事はこないし、事務処理も全部自分でしなきゃいけない。

社会的信用が低いから家を借りるのが大変、クレカの審査が通らないなんてあるあるだし、セルフブランディングも一歩間違えるとと炎上してしまう。しかも、だれも盾になってはくれないし、ダメなところを叱ってくれる人もいない。

フリーランスになる人は、それをすべて理解したうえで、「それでも会社員は無理」「絶対にここは譲れない」という理由があるから選択するわけで、会社員できるならそれでいいんじゃない?と思う。

会社勤めで楽しく働けるのなら、フリーランスのデメリットを、あえて負う必要はないのだから。

実はフリーランスから会社員に戻る人もいる

さらに言うと、フリーランスから会社員に戻る人も、実はそれなりにいる。

背景は2パターンあり、「フリーランスに向いていなかった」か「さらなるキャリアアップ」かのどちらかだ。

たとえば自分を売り込む営業が苦手だっただとか、上司がいないとサボってしまうだとか、毎回交渉したり契約するのが面倒だとか、経理に丸投げしてた事務作業を自分でするのがしんどいだとか、生活にメリハリがなくてダレてしまうとか。

わたしが会社員に向いていなかったように、フリーランスに向いていない人もいる。

そうそう、体を壊して収入が0になった経験をし、福利厚生がしっかりしてる会社に入社した人もいた。そういうとき、フリーランスはしんどいからね……。

一方で、「キャリアアップとしての再就職」もある。

たとえば、フリーライターとして全国を旅してブログを書いていた人が、旅行雑誌の編集者に声をかけられるとか。webデザイナーとして仕事を請け負ったら気に入られて、何度か大きな仕事を任され、そのまま社員になったとかね。

あとは、育児中はフリーランスとして自分のペースで働いて、フルタイムで働けるようになったら会社員に戻った人もいたなぁ。

こういうキャリアはネット上ではあまり目立ちはしないが、「やっぱり最終的には会社員」という人がいることも、忘れるべきじゃないと思う。

自分に合う企業が見つかるならそれが一番おススメ

フリーランス=自由のイメージがあるし、実際仕事を選んだり労働時間を調整したりはしやすい。

でも改めて考えると、企業勤めでも、それは不可能じゃない。

社内で好きなことをやっている人なんてたくさんいるし、柔軟な働き方が可能で裁量労働ができるところもある。自分の力を試したいのなら、キャリアアップを狙って転職してもいいし、副業OKの会社で別スキルを磨くことだってできる。

企業次第ではあるが、会社に勤めながらいろいろやっている人だって、結構たくさんいるのだ。

フリーランスはリスクやデメリットも相応にあるから、「どうしてもフリーランスになる!」「フリーランスという働き方でしか生きられない!」というわけではないのなら、まず自分が理想とする働き方ができる企業を探すほうがいいんじゃないか、と思う。

会社なんて全国、さらにいえば全世界にあるわけだからさ。
それが見つからなければ、そのときフリーランスになればいいのだ。

フリーランスと会社勤めは、それ自体に良い・悪いもなく、楽しく働くためにどちらが向いているか、というだけの話。

だから、友人の「ビジョンはぼんやりしてるけどとりあえずフリーランスになりたい」というのは、強めに止めた。

フリーランスは仕事をするうえでの手段であり、「フリーランスになること」が目標になるのは、ちょっとちがうのだ。


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【エビデンス】
*1 ランサーズ『進化する「未来の働き方」ーフリーランス実態調査2021ー』p6
*2 フリーランス協会『フリーランス白書2020』p14
*3 フリーランス協会『フリーランス白書2020』p17


【著者】雨宮 紫苑
ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。
Twitter:@amamiya9901