【弁護士が解説】有料職業紹介事業に必要な資本金や許可申請の流れ開業の準備とは

転職市場が引き続き活況を呈する中、人材紹介ビジネスへのニーズは高まり続けています。

新規に人材紹介ビジネスへ参入する場合には、職業安定法に基づく「有料職業紹介事業」の許可を得なければなりません。

これから人材紹介ビジネスへと参入しようとする事業者の方は、許可基準を踏まえて事前に必要となる準備の内容や、申請の流れを理解しておきましょう。

転職市場は活況|人材紹介ビジネスへのニーズは高い

出典:「増加傾向が続く転職者の状況~2019年の転職者数は過去最多~」(総務省統計局、令和2年2月21日)
https://www.stat.go.jp/data/roudou/topics/topi1230.html

上記のグラフは、2002年以降2019年までの転職者数と、就業者に占める転職者の割合(転職者比率)を示したものです。

2008年のリーマン・ショックを機に転職者数は大幅に落ち込みましたが、それ以降は上昇・回復傾向を続け、2019年には2002年以降最多となる351万人を記録しています。

転職者比率についても、2019年には15~24歳(12.3%)・25~34歳(7.8%)のいずれも2008年以来の水準を記録しており、転職市場の活況を示すデータと言えるでしょう。

なお、新型コロナウイルス感染症による転職市場への影響が懸念されますが、企業の正社員予定数の減少は小幅にとどまっているというデータがあります(2019年12月→2020年4月で約14.6%の減少)。*1

今後の感染拡大状況やワクチン・特効薬の開発状況などにも左右されると考えられますが、現時点では新型コロナウイルス感染症による転職市場への影響は限定的といえるでしょう。

転職市場が拡大傾向にあることは、人材紹介ビジネスに対するニーズも高まり続けていることを意味しており、今後も人材紹介は注目度の高いビジネスである状況が続くと考えられます。

有料職業紹介事業とは?

人材紹介ビジネスは「有料職業紹介事業」として、職業安定法によって規制されています。

「有料職業紹介事業」とは、求人者と求職者の間における雇用関係成立のあっせんを、手数料または報酬を受けて行う事業をいいます(職業安定法4条3項)。

有料職業紹介事業を行うには、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(同法30条1項)。

もし無許可で有料職業紹介事業を行った場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(同法64条1号)に処される可能性があるため、人材紹介ビジネスを行う際には、必ず事前に有料職業紹介事業の許可を受けましょう。

◎有料職業紹介事業の許可基準を踏まえた必要な準備の内容

有料職業紹介事業は許可制のため、許可の可否について厚生労働省の審査が行われます。

したがって、許可申請を行う事業者は、許可基準の内容を十分に踏まえた事前準備を行うことが大切です。

有料職業紹介事業の許可基準は、職業安定法31条1項および厚生労働省が定める業務運営要領によって定められています。*2

許可基準の内容と、それに対応する必要な準備の内容について見てみましょう。

①申請者が、有料職業紹介事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること。
・資産(繰延資産および営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額が「500万円×有料職業紹介事業を行おうとする事業所数」以上であること
・事業資金である自己名義の現金、預貯金の額が「150万円+(有料職業紹介事業を行おうとする事業所数-1)×60万円」以上であること

資産要件は、純資産とキャッシュの2つの面から審査されます。

資産要件を満たしていない場合には、追加出資などで対応することも考えられるでしょう。

②個人情報を適正に管理し、及び求人者、求職者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。
・求職者等の個人情報を取り扱う職員の範囲を明確化していること
・個人情報漏えい防止の職員教育が実施されていること
・個人情報の開示、訂正に関する規定を定め、当該規定について求職者等に周知していること
・個人情報の取り扱いに関する苦情処理体制が明確化、整備されていること
・個人情報を目的に応じて必要な範囲で正確かつ最新のものに保つための措置が講じられていること
・個人情報の漏えい等を防止するための措置が講じられていること
・個人情報を取り扱う職員以外の者が個人情報へアクセスすることを防止するための措置が講じられていること
・不要となった個人情報を破棄、削除するための措置が講じられていること
など

個人情報保護体制の整備は、個人情報保護法に従って適切に行う必要があります。

可能であれば、個人情報の管理に専念する担当者を複数設置して、情報管理や苦情処理などに関する強固な体制を築くことが望ましいでしょう。

さらに、個人データへのアクセス権・パスワードの設定などを通じて、十分な個人情報漏えい対策を実施していることを説明できるようにしておくことが大切です。

③ ①②のほか、申請者が有料職業紹介事業を適正に遂行することができる能力を有すること。
・適格要件を満たし、かつ知識と経験を有する職業紹介責任者を設置していること
・事業所の位置、面積、構造、設備が職業紹介事業を行うために適切であること
・申請者の社内規程の整備
など

有料職業紹介事業の許可申請を行うに当たっては、職業紹介責任者となる人材の確保・事業所の確保・社内規程の整備も大きなポイントとなります。

人材確保と事業所の確保は一朝一夕には成り立たないので、事業開始までのスケジュールを見据えて計画的に進めることが大切です。

社内規程の整備については、弁護士などのサポートを得ながら進めるとよいでしょう。

有料職業紹介事業の許可申請の流れ

有料職業紹介事業の許可申請を行う場合、事業開始までの大まかな流れは以下のとおりです。

申請準備|都道府県労働局との事前折衝等

申請の準備段階では、都道府県労働局に対して事業計画やその他の必要書類の草案を提示し、許可要件を満たすための修正指示などを受けることになります。

都道府県労働局側での確認作業には期間を要するうえ、何往復かやり取りが行われるため、申請準備の期間だけで数か月はかかることを見込んでおきましょう。

申請書類の準備と並行して、職業紹介責任者のリクルートや事業所の確保を進めます。

なお、職業紹介責任者になろうとする人は、申請前に職業紹介責任者講習を受講することが必要です(職業安定法施行規則24条の6第2項)。

本申請|厚生労働省における審査

都道府県労働局から本申請のゴーサインが出たら、必要書類を揃えて実際に許可申請を行います。

都道府県労働局では、本申請書類を受理し、最終確認が完了次第、厚生労働省の本省に回付します。

厚生労働省では、労働政策審議会への諮問、および審議会での厚生労働大臣への答申を経て、許可または不許可の決定を行います。

本省の審査のプロセスでは、申請書類について追加修正のリクエストが行われることもありますので、その場合は本省の指示に従って対応しましょう。

申請から許可決定が行われるまでの期間は、おおむね2~3か月とされています。

許可証の交付・事業開始

厚生労働大臣による有料職業紹介事業の許可決定が行われた場合、事業者に対して事業所数に対応する通数の許可証が交付されます(職業安定法32条の4第1項)。

許可証の交付を受けたら、有料職業紹介事業を開始することができるようになります。

なお許可証は、有料職業紹介事業を行う各事業所に備え付けておくことが必要です(同条2項)。

まとめ

有料職業紹介事業の許可を得るためには、長期間の準備作業や都道府県労働局との折衝が必要になります。

できるだけ早い段階で人材紹介ビジネスを開始できるようにするためにも、許可基準の内容を踏まえてスムーズに許可申請の準備を整え、都道府県労働局への相談を開始しましょう。


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【エビデンス】

*1 「「新型コロナウイルスが転職市場に及ぼす影響」を発表」(マイナビ)
https://www.mynavi.jp/news/2020/07/post_23955.html

*2 「令和3年4月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172486.html


【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
公式ホームページ:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw