転職には必須のパソコンスキル スキルのない求職者にはどのような支援が考えられる?

就職・転職にはパソコンスキルが必要なのは当然と考えるかと思いますが、じつはパソコンスキルをあまり持たない人が増えています。

背景にはスマートフォンの普及などがありますが、人材として見込みのある求職者であっても、パソコンスキルがなければそれ以前の話、となってしまいかねません。

そこで、パソコンスキルを持たない求職者にエージェントとしてどのような支援ができるかを考えたいと思います。

パソコンスキルの優先度合い

全国でパソコンスクール「アビバ」などを運営する株式会社リンクアカデミーの調査によると、企業の経営者・管理職が新入社員に入社時点で身につけておいて欲しいスキルは以下のようになっています(図1)。

求職者にとっても、これらはもちろん共通事項でしょう。最低限の要素、と言えるかもしれません。しかし、実に5割以上が「パソコンスキル」と回答しているのです。

特に若い人であればパソコンなど小さな頃から存在するものなのだから、パソコンスキルはあって当たり前なのでは?と思ってしまうかもしれません。

しかし、現状はそう簡単なものではないようです。

「PCを使えない大学生」問題

一定以上の年齢層の上司がパソコンに苦戦している、そのような姿は「よくある光景」でしょう。
これはある意味では当然です。
彼らの世代の若い頃はパソコンで仕事をするということがメインではなく、パソコンはあとからやってきたものだからです。そこをなんとか苦戦して用語や操作を覚え、仕事をしているという状況に何ら不思議はありません。

また、ブルーカラーの仕事が長かった人で、スマホは使いこなすもののパソコンは苦手、という人は珍しくありません。触れる機会がなかったからです。

ただ、いわゆる「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代にありながら、パソコンスキルの低い若者がいることが近年問題視されています。

ある大学で、学生1010人から回答を得たアンケート調査があります[*1]。

まず、パソコン操作の基本であるタッチタイピングについては、このような回答が得られています(図2)。

図2 立命館大学で実施されたアンケート調査結果
出所:「日本語入力から見る“PC が使えない大学生問題”」コンピュータ&エデュケーションVol.46 2019 p60

意外に苦戦している様子が見受けられます。

また、2,000文字程度のレポートを作成する過程として、多くは最初から最後までPC上で作業をすると回答しているものの、中にはスマートフォンや手書きで下書きをしてからPCで文字入力する、という学生もいました(図3)。

図3 レポートの作成方法
出所:「日本語入力から見る“PC が使えない大学生問題”」コンピュータ&エデュケーションVol.46 2019 p60

筆者としては少し驚いてしまう手法なのですが、もちろん文書作成のやり方には人それぞれあって良いでしょう。しかし、業務効率を考えたときの疑問は残ります。

そして、ICTスキルに関する自己評価では、3割超が「活用できると思えない」「よくわからない」としています(図4)。

図4 将来へ向けたICTスキルに対する自己評価
出所:「日本語入力から見る“PC が使えない大学生問題”」コンピュータ&エデュケーションVol.46 2019 p60

「若い=パソコンを使いこなす」とは言い切れないのです。スマートフォンのフリック入力は早くても、パソコンのタイピングはあまり得意ではないという姿が浮かび上がります。

企業で求められるパソコンスキルと「インターネットを使いこなす」は別問題です。よって、パソコンスキルについて語るとき、WordやExcel、PowerPointなどをどのくらい使えるのか、といった具体性が必要です。

本人も周囲も、パソコンスキルとは何なのかについての正しい認識がなければ、過大評価を鵜呑みにしてしまう可能性があります。

また、若い人に限らず、職種によってはパソコンを使うことはあっても業務ソフトを使いこなせるわけではない、と言う人が存在してもおかしくはありません。

給付金つきの求職者支援制度も

さて、求職者がパソコンスキルに困っているという場合、エージェントとしてはどのようなことができるでしょうか。

ひとつには、エージェントが自ら講座を開いたり、民間の教室と提携したりすることが考えられます。もちろん、求職者みずから積極的に何かしらの方法でスキルを得るのが一番です。

その際、知っておきたい制度があります。
厚生労働省の求職者支援制度です。

一定の要件を満たせば、パソコンなどの無料職業訓練を利用でき、場合によっては月10万円の生活支援の給付金を同時に受けられるというものです。

おもな要件は下の通りです(図5)。

図5 求職者支援制度の活用要件
出所:「求職者支援制度のご案内」厚生労働省

なお、給付金の支給要件を満たさなくても、無料の職業訓練を受講できます(テキスト代などは自己負担)。

前職を既に辞めており、雇用保険の受給期間が切れたという状況の求職者は積極活用すると良い制度です。

コースの種類は以下の通りです(図7)。

図7 求職者支援制度の主なコース
出所:「求職者支援制度のご案内」厚生労働省

パソコンスキルは情報リテラシーに関わることも

「パソコンスキル」については、一部の民間検定はあっても就職・転職時点でわざわざテストをするという企業はほとんどないでしょう。

ビジネスに必須のスキルでありながらも、何をどのくらい使えるかは自己申告によるものでしかない、というケースがほとんどです。
また、本人が思うパソコンスキルと、就職先企業が求めるパソコンスキルは全く別物ということも大いに考えられます。

このギャップを解消するためにまずエージェントとしては求人企業から「求めるパソコンスキル」をヒアリングし、求職者が持つスキルがそれにマッチするかどうか判断する必要があります。

日頃、対人スキルやマネジメントスキル、専門知識といったことについては求人企業などとよく会話することはあるでしょう。

しかし「パソコンスキル」という基本の基本が盲点とならないよう、エージェントとしては気にとめておきたいものです。


【資料ダウンロード】マイナビ転職エージェントスカウトシステム

「求職者獲得に工数がかかりすぎている…」
「SNSやオウンドメディアで発信しても、集客に繋がっていない…」
そんなお悩みはありませんか?

マイナビ転職スカウトデータベースは、
転職サイト「マイナビ転職」のユーザーに直接スカウトを送れるサービスです。
総会員数は700万人以上!
効率的に求職者にアプローチできます。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
申込み手順:
①下記ボタンをクリック
②リンク先にて、資料お申込みフォームにご登録
③資料をメールにてご送付
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –


【エビデンス】
*1 「日本語入力から見る“PC が使えない大学生問題”」コンピュータ&エデュケーションVol.46 2019


【著者】清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka