個人事業主として人材紹介業の免許を取得するには?費用や期間も紹介

人材紹介業を行う場合、免許の取得が必須となります。人材紹介業の立ち上げや独立を検討しているものの、「個人事業主として免許を取得できるのか」「免許を取得する方法が分からない」と疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、主に以下の内容についてまとめています。

・個人事業主として人材紹介業の免許を取得する流れ
・個人事業主として人材紹介業の免許取得にかかる費用や期間


記事を参考にして、ぜひ免許の取得を目指してください。

※本記事において、「人材紹介業」は「有料職業紹介」のことを意味しています。

個人事業主として人材紹介業を開業するメリット

個人事業主として人材紹介業を開業するメリットは、以下の2つです。

・事務手続きの手間が少ない
・税務調査の頻度が少ない傾向にある

個人事業主として人材紹介業を開始し、成長してから法人化しようと考えている方も多いのではないでしょうか。個人事業主のメリット・デメリットを把握した上で、事業形態を選択するとよいでしょう。

事務手続きの手間が少ない

個人事業主の場合、法人と比べて確定申告や会計処理の事務作業が少なく済みます。個人事業主は法人と比べて申告が必要な税の種類が少なく、知識さえあれば税理士に相談せずに自分で申告できる場合もあります。

また、法人の場合は事業を開始する際に定款の作成や登記の手続きが必要となります。一方、個人事業主は開業届を税務署に提出すればすぐに開業できるため、手間が少ないと言えるでしょう。

税務調査の頻度が少ない傾向にある

法人と比べると、個人事業主は税務調査が行われる頻度が少ない傾向にあります。税務調査への対応には多くの時間を取られるため、回避できる可能性が高いことは個人事業主のメリットと言えるでしょう。

個人事業主として人材紹介業を開業するデメリット

個人事業主として人材紹介業を開業するデメリットは、以下の3つです。

・将来的に法人化する場合は免許を取り直す必要がある
・資産要件を満たすハードルが高い
・信用力が低い

それぞれ解説します。

将来的に法人化する場合は免許を取り直す必要がある

個人で取得した人材紹介業の免許は、法人には引き継ぎができません。つまり、個人事業主として人材紹介業をスタートさせた場合、将来法人化する際には免許の再取得が必要となります(*1)。

免許の取得には、申請書類を準備する手間や時間といったコストがかかります。将来的に法人化を目指しているのであれば、事業のスタート時から法人形態を選択するのがおすすめです。

*1(参考)厚生労働省「第8 その他の手続等

資産要件を満たすハードルが高い

人材紹介の免許を取得するためには、以下を満たす必要があります。

① 資産(繰延資産及び営業権を除く)-負債≧500万円×事業所数
② 自己名義の現金・預金の額≧150万円 +(60万円×(事業所数-1))(*1)

個人事業主の場合は個人と法人の資産の切り分けができないため、資産要件を満たすハードルが高いです。例えば、住宅ローンや自動車ローンなども負債として扱われるため、ローンを差し引いた上で500万円以上の資産が必要となります。一方、法人の場合は個人の負債を別にできるため、資産要件を満たしやすいと言えるでしょう。

*1(引用)厚生労働省「有料職業紹介事業 許可要件(概要)

信用力が低い

個人事業主は法人と比べると社会的な信用力が低く、金融機関や企業との取引が難しいといったデメリットがあります。例えば金融機関からの融資をなかなか受けられない、法人でないという理由で企業との取引を断られるケースも考えられます。さらに、求職者は大手の人材紹介会社に信頼をおく傾向にあるため、大手との競争に勝つのが難しいといった懸念もあるでしょう。

求人と求職者を集めるためには、業界や業種の限定などで差別化を図ることが重要です。新規参入時は特に信用力が低いため、市場をリサーチして戦略を立てる必要があります。

人材紹介業の免許を取得するまでの流れ

人材紹介業の免許は、以下の流れで取得します。

①事業計画を立てる
②開業届を出す
③職業紹介責任者講習を受講する
④申請書類を提出する

申請書類は最終的に厚生労働省に渡り、許可証が発行されると事業を開始できるという流れです。要件が満たせていない場合には不許可通知書が交付され、事業計画の再考が必要となるため、要件をクリアした上で申請しましょう。

免許取得のプロセスをそれぞれ解説します。

①事業計画を立てる

まずは事業計画を立案しましょう。免許を申請する際には、事業計画書の提出が必要となります。

また、免許取得の要件を満たす事業所等の準備も必要です。以下のように事業所に関する要件が定められています。

1.プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能であること。具体的には、個室の設置、パーティション等での区分により、プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能である構造を有すること。

2.事業所名(愛称等も含む。)は、利用者にとって、職業安定機関その他公的機関であるとの誤認を生ずるものでないこと。

ただし、上記の構造を有することに代えて、以下のA又はBのいずれかによっても、 1の要件を満たしているものと認めること。また、当分の間、以下のCによることも 認めること。

A.予約制、近隣の貸部屋の確保等により、他の求人者又は求職者等と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるような措置を講じること。この場合において、当該措置を講じない運営がなされた場合には、許可の取消し対象となる旨の許可条件を付するものとすること。

B.専らインターネットを利用すること等により、対面を伴わない職業紹介を行うこと。この場合において、対面を伴う職業紹介事業の運営がなされたときは、許可の取消し対象となる旨の許可条件を付するものとすること。

C.事業所の面積がおおむね 20 ㎡以上であること。(*1)

対面を伴わずにオンラインでのみ人材紹介業を行う場合は、「B」に該当するため事業所要件を満たします。ただし、バーチャルオフィスによる開業は認められません。バーチャルオフィスの扱いに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

(参考)「バーチャルオフィスの利用で考えられる問題点とは?気を付けておきたいトラブル例もご紹介
*1(引用)厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業パンフレット-許可・更新等マニュアル-

②開業届を出す

開業届は、事業を開始した日から1カ月以内に納税地を所轄する税務署長に提出する必要があります。

e-Taxソフトを活用すれば、インターネットを通じて届出書の作成・提出ができます。e-Taxは、国税に関するさまざまな手続きを電子的に行うシステムです。初めて利用する場合は、「開始(変更等)届出書」を作成・提出し、利用者識別番号を取得する必要があります(*1)。

*1(参考)国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続

③職業紹介責任者講習を受講する

人材紹介業を始めるには、職業紹介事業者講習を受講した責任者を選任する必要があります。「公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会」や「一般社団法人 日本人材紹介事業協会」などが講習を実施しているため、申請書類を作成する前に受講しましょう。

新規受講者の場合は、以下の5つの講義科目を座学形式で学ぶことになります。

・民営職業紹介事業制度の概要について
・職業安定法及び関係法令について
・民営職業紹介事業の運営状況及び職業紹介責任者の職務遂行上の問題点について
・具体的な事業運営について
・個人情報の保護の取扱いに係る職業安定法の遵守と公正な採用選考の推進について(*1)

*1(参考)厚生労働省「職業紹介事業 現行の制度・運用

④申請書類を提出する

申請書類は、都道府県労働局に提出します。各都道府県の労働局ホームページからダウンロードし、申請書類を作成しましょう。

労働局に相談すれば要件の説明や助言を受けられるため、必要に応じて相談するとよいでしょう。

個人事業主として人材紹介業の免許を取得するのに必要な書類一覧

個人が免許を取得する場合に必要な申請書類と添付書類は、以下のとおりです(*1)。

申請書類(正本1部、写し2部)
・有料職業紹介事業許可申請書
・有料職業紹介事業計画書
・届出制手数料届出書(上限制手数料による場合は不要)

添付書類(正本1部、写し1部)
・代表者(職業紹介責任者)の住民票
・代表者(職業紹介責任者)の履歴書
・精神の機能の障害に関する医師の診断書(認知や判断、意思疎通を適切に行うことができない おそれがある者である場合のみ)
・代表者役員の法定代理人の住民票の写し、履歴書及び医師の診断書
・職業紹介責任者講習受講証明書
・最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書
・預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類(貸借対照表から計算される基準資産が納税証明書及び確定申告書により証明される場合は不要)
・所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書(同上)
・最近の事業年度における確定申告書の写し
・最近の事業年度における法人税又は所得税の納税証明書
・個人情報の適正管理及び秘密の保持に関する規程
・業務の運営に関する規程
・建物の登記事項証明書
・建物の賃貸借又は使用貸借契約書
・手数料表(届出制手数料の届出をする場合)

準備漏れがないよう、チェックリストを作って管理するのがおすすめです。

*1(参考)厚生労働省「事業許可までのプロセス

人材紹介業の免許を取得するのにかかる費用

手続きにかかる費用は、主に以下の2つです。

・職業紹介責任者講習の受講費用
・人材紹介免許の申請費用

職業紹介責任者講習を実施している主な団体は、「公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会」と「一般社団法人 日本人材紹介事業協会」です。受講にかかる費用は、いずれも非会員は12,500円(税込)、会員は8,800円(税込)です(*1)(*2)。

人材紹介免許の申請時にかかる費用は以下のとおりです。

登録免許90,000円
収入印紙50,000円+18,000 円×(有料職業紹介事業を行う事業所の数-1)
合計140,000円(事業所が1カ所の場合)
(*3)

開業届の提出には費用はかかりませんが、要件を満たす事務所の準備などに費用がかかるため、あらかじめ予算計画を立てることが重要です。

*1(参考)公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会「受講料
*2(参考)一般社団法人 日本人材紹介事業協会「職業紹介責任者講習日程・申込
*3(参考)有料職業紹介事業許可申請に必要な書類(個人用)

人材紹介業の免許を取得するのにかかる期間

厚生労働省は、事業開始する予定の時期から2〜3カ月前までに書類を提出して申請するよう求めています(*1)。申請書類の提出までに開業届の提出や職業紹介責任者講習の受講なども必要となるため、余裕を持って準備しましょう。

*1(参照)厚生労働省「事業許可までのプロセス

まとめ|個人事業主として人材紹介業を成功させよう

個人事業主として人材紹介の免許を取得する方法を紹介しました。免許取得の流れは以下のとおりです。

1.事業計画を立てる
2.開業届を出す
3.職業紹介責任者講習を受講する
4.申請書類を提出する

個人事業主として人材紹介業を開業する場合、メリットだけでなくデメリットも存在します。ゆくゆくは法人化を目指すのであれば、最初から法人とした方が資産要件をクリアしやすく免許の取得も1度で済むため、どちらが自分に合っているかしっかり検討しましょう。個人事業主として開業する方は、ぜひ本記事を参考にして免許を取得してください。


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