人材紹介で手数料が払われない?契約・法的側面から対処法を解説

人材紹介を事業として行う中で、時には手数料が払われないトラブルが発生します。

手数料の未払いは、正当な理由がある場合と、正当な理由がなく、手数料を請求できる場合があり、対処するためには、必要な知識を持っておくことが重要です。

この記事では、手数料未払いのトラブルをいくつか想定し、契約・法的側面から、対処するために必要な知識について解説します。

手数料が払われないケースとは

人材紹介事業では、様々な原因により手数料未払いのトラブルが生じてしまうことが考えられます。ここでは、手数料が未払いになってしまうケースに関して、以下の3つを紹介します。

① 中抜き

手数料が未払いとなる最も一般的なパターンとして、中抜きが挙げられます。
中抜きとは、人材紹介業者が紹介した人材を、企業が内密に採用し、手数料の支払いを回避する手法のことを指します。
特に成果報酬型を採用している人材紹介業者に関しては、企業が手数料を支払わないまま、紹介した人材を採用することができてしまうのです。

② 不適切な手数料

人材紹介業者が指定した手数料が、相場に比べて高すぎる、あるいはサービスの質に合っていない、と判断されると、企業から手数料の支払いが行われないケースがあります。
具体的に考えられるケースとして、人材紹介をおこなったものの、求職者の紹介から採用までのフローに何らかの問題があり、企業が支払いを拒否、あるいは連絡が取れなくなるという事例が挙げられます。

③ 許可がない

そもそも人材紹介業者は、手数料を請求するために厚生労働省からの認可が必要です。もし認可がない場合は、請求した企業側が違法となります。

手数料が払われないケースは以上の3つになります。これらに対する対処法を知る前に、「手数料を請求しても良い条件」と「手数料の相場・請求できる価格帯」について理解し、手数料が払われない場合の対処法をより深く理解できるようにしていきましょう。

手数料を請求しても良い条件

ここまで、手数料の未払いに関するトラブルの例を紹介しましたが、前提として人材紹介事業は、報酬を受け取るために許可が必要です。それでは、企業に手数料を請求する条件について解説します。

職業紹介の認可について

人材紹介を行った際に報酬として手数料を受け取るためには、職業安定法第30条第1項の厚生労働大臣の許可が必要です。厚生労働大臣から許可を受け、報酬を受け取ることができる場合は有料職業紹介事業、対して許可がなく、報酬を受け取ることができない場合は無料職業紹介事業と呼ばれます。

職業紹介の許可については、こちらの記事で解説しております。ぜひご覧ください。

有料職業紹介事業(手数料を請求できる)

有料職業紹介事業は、厚生労働省が発行する「職業紹介事業の概要」において、次のように紹介されています。

有料職業紹介事業とは、営利を目的とするか否かにかかわらず、職業紹介に関し、手数料又は報酬等の対価を受けて行う職業紹介事業をいいます。

具体的には、転職エージェント・人材紹介・人材バンクと呼ばれるものが有料職業紹介事業です。
職業安定法第30条第1項の許可を得た有料職業紹介事業は、手数料を請求することが可能となります。

無料職業紹介事業(手数料を請求できない)

無料職業紹介事業は、厚生労働省が発行する「職業紹介事業の概要」において、次のように紹介されています。

無料職業紹介とは、職業紹介に関し、営利を目的とするか否かにかかわらず、いかなる名義でも手数料又は報酬等の対価を受けないで行う職業紹介事業をいいます。

具体的には、大学のキャリアセンターやハローワークが無料職業紹介事業になります。
無料職業紹介事業でも、場合により厚生労働大臣への届出や許可が必要です。

参考:第1 職業紹介事業の概要|厚生労働省
参考:【弁護士が解説】有料職業紹介事業に必要な資本金や許可申請の流れ開業の準備とは

手数料の相場・請求できる価格帯

手数料に関する法整備

有料職業紹介事業を開業した際、企業から受け取ることができる手数料は次の2種類になります。

・受付手数料
・紹介手数料

受付手数料は、求人を受理したタイミングで受け取ることができる手数料であり、上限は690円です。

対して紹介手数料は、求職者が企業に採用されたタイミングで請求が可能となる手数料となり、紹介手数料の金額は、以下の2つに分けられます。

①上限制手数料

上限手数料とは、厚生労働省によって定められた割合を上限とする手数料のことを指します。上限となる割合は細かく定められていますが、例外を除くと、賃金額(年収)の10.8%以下です。

②届出制手数料

厚生労働省へ手数料表に関する届出を提出すると、届出た手数料表の金額が適用されます。こちらは、職業紹介事業側が手数料の割合を自由に定めることが可能です。ただし、厚生労働省に手数料の割合が不適であると判断された場合、変更命令が出される場合もあります。
一般的に、上限制手数料よりも高い割合で手数料を定めることが可能であるため、こちらが採用されるケースが多いです。

参考:第6 手数料|厚生労働省

届出制手数料の相場

届出制手数料で定められる手数料の割合は、一般的に賃金額(年収)の30%〜35%程度とされており、さらに50%より高い値で設定すると、厚生労働省から変更命令が出される可能性が高くなります。

届出制手数料で設定される手数料の割合は、上限制手数料で定められている割合に比べて、3倍以上の差があり、職業紹介事業側に上限制手数料を採用するメリットはほとんどないため、基本は届出制手数料を採用する企業が多いです。

手数料が払われなかった際の対処法

契約に基づく請求(中抜きの場合)

中抜きによる未払いに対する対処法は、契約を締結した際に、契約違反の項目を作成しておくことが重要となります。
契約書の中に、中抜きに該当する行為を行った場合は、違約金などが発生し、それを請求する旨を記載しておけば、中抜きに対する対処を行うことが可能です。

適切な手数料(手数料額に不満があった場合)

3-2.届出制手数料の相場で解説した内容を確認し、それに基づいた手数料の割合を設定しましょう。それにより、こちら側の金額設定の正当性を証明することが可能です。
届出制手数料に関する書類なども準備しておくと、より信憑性が高くなります。

有料職業紹介事業の許可を受ける(許可がなかった場合)

この場合は、逆に手数料を請求することが違法となってしまうため、必要事項を準備し、厚生労働省による有料職業紹介事業の許可を受けましょう。
営利目的でない場合も、いかなる形で報酬を受け取ることは違法になります。

トラブルを未然に防ぐためには

ここまでは手数料が払われないケースや、払われなかった際の対処法について解説してきました。払われなかった際の対処法を理解しておくことも大事ですが、トラブルを未然に防ぐことに越したことはありません。トラブルを未然に防ぐために、以下の4つの項目を確認しましょう。

①職業紹介事業や手数料などに関する知識を確実に押さえる

本記事で解説した内容を身につけておけば、未払いのトラブルを想定し、事前に備えておくことが可能となります。

②「手数料が払われなかった際の対処法」で解説した内容を事前に準備しておく

契約書に違約金に関する項目を追加する、相場に見合った手数料の割合を設定するなど、手数料の未払いを事前に防ぐための準備は念入りに行いましょう。

③手数料に関するトラブルが起きないよう、適切なサービスを求職者・企業に提供する

紹介される人材の質が低い、企業側への対応が悪いなど、人材の紹介から採用までのフローに不満があった場合は、手数料の支払いを拒否されることが想定されるため、大前提として、手数料を払ってもいいと思われるようなサービスの提供は必須項目です。

④求人データベースなどを利用し、悪質な企業との取引をなるべく回避する

手数料未払いに対して、こちらが事前に対応策を準備していたとしても、企業側に問題があった場合、トラブルに巻き込まれてしまう可能性が高くなります。
そのため、求人データベースなどを使いながら、事前に収集できる企業データを集め、なるべくリスクヘッジができるように努めましょう。

この4項目を押さえ、手数料未払いのトラブルを回避し、もし巻き込まれたとしても、手数料の請求に正当性があることを証明する準備を整えておくことが重要です。

まとめ

手数料未払いのトラブルはいくつかのケースが考えられますが、正確な知識などを押さえておけば、対処や回避は決して不可能なものではありません。

こちら側の正当性を証明し、トラブルに巻き込まれないために、確実な準備を行うことを推奨します。


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