人材紹介の利益率は?人材派遣との違いを含めて解説

市場規模が拡大している人材紹介業界で独立して事業を立ち上げたい、人材派遣業から人材紹介業に切り替えたいという事業者・経営者が近年増加してきています。

しかし、「人材紹介業がどのように利益を創出しているのかよくわからない」「人材派遣業と人材紹介業はどのように違うのだろう」という疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では人材紹介業の利益の仕組みをメインに取り上げながら人材派遣業との違いを解説していきます。

人材紹介事業のビジネスモデル

人材紹介とは、企業が人材を採用する方法のうちの一つです。人材紹介会社は、顧客である企業が求めている人材をヒアリングし、その人物像にマッチする人材を紹介することで企業の採用活動を支援します。要件に合った人材が見つかり、面接などの選考を通して採用が決定した場合、企業から手数料を受け取ることで収益を得ることになります。

人材紹介事業(職業紹介事業)は、国の許認可事業であり、事業を行う場合には職業安定法の規制を受けることになります。事業者は職業安定法をよく理解したうえで、同法に基づいた事業運営をすることが重要です。

人材紹介事業のビジネスモデルなど詳しくはこちらの記事をご覧ください。

参考:職業紹介事業の事業報告の集計結果について

人材紹介事業と人材派遣事業の違いは?

人材紹介会社とよく似ている形態の事業としては人材派遣業が挙げられます。こちらは労働者派遣法によって許認可されるものであり、本記事で解説する人材紹介とは大きく異なります。

人材紹介事業:求職者と求人者のマッチングを行うことで雇用契約の斡旋(職業安定法)
人材派遣事業:雇用契約は求職者と派遣会社の間で結ばれる(労働者派遣法)

上記のような雇用形態によって、人材紹介事業は、自社が求める人材を選定することができますが、人材派遣事業の場合は人材を派遣される企業は、派遣されてくる人材を選定できないという違いがあります。
こうした雇用形態の観点から、両者は大きく異なる事業形態であり、各々で異なる事業運営が必要であることが分かります。

人材紹介事業の利益率

利益率とは、営業利益が売上高に占める割合です。利益率が高いほど、利益を効率よく作り出せているということになります。

人材紹介業の利益率は人材紹介事業を運営している企業の決算書やIR等みるに20%程で推移する傾向があります。

不動産業が約10%、製造業が約4%(1)、人材派遣の利益率が1.2%(2)なので、人材紹介業の利益率は高いことがわかります。

しかし、人材紹介業は高い利益率である一方で、人材紹介業は景気変動の影響を受けやすい業種でもあり、市況や企業の状態に左右されることがあります。リーマンショックや新型コロナウイルスが流行した時期に有効求人倍率が大幅に減少するなど様々な要因に影響されるので注意が必要です。

*1(参考)中小企業庁「中小業実態調査 令和4年確報」3.売上高及び営業費用(1)産業別・従業者規模別表」

*2(参考)一般社団法人日本人材派遣協会「人材派遣を知る/データ」

人材紹介事業の利益の出し方

上記では利益率を紹介しました。このセクションでは売上高や利益を出す際の、各項目を紹介します。人材紹介事業の利益は、売上からコストを差し引いた額です。ここでの売上は、主に紹介手数料によって生じ、コストは人件費、オフィス運営費、マーケティング費といった多岐にわたる項目が該当します。

人材紹介事業の収益源となる売上

人材紹介事業で利益率に貢献する売上についてみていきます。

・紹介手数料
人材紹介事業の紹介手数料は、人材紹介業における主要な収益源です。企業が求める人材を紹介することで、紹介手数料が発生し、これが直接的な売上となります。

その他、他者との共同キャンペーンによる収益などを得られることもありますが、基本的にメインで売上に直結してくるのは紹介手数料です。
したがって、売上を上げるためには、より多くの顧客を集めることが必要不可欠になっていきます。

人材紹介事業で必要となる初期コスト

人材紹介事業で高い利益率を実現するために、必要となる初期コストについて解説していきます。

まず、初期コストですが、人材紹介事業を新たに立ち上げる際には、以下のような初期コストがかかってきます。

・会社設立費用
会社を新たに設立する際に発生するコストで、定款用収入印紙代などから構成されます。会社形態や資本金の額などの条件によって前後しますが、約15万円のコストが会社設立費用としてかかります。

・基準資産額
人材紹介会社を立ち上げる際、クリアする必要がある財政状況の条件です。資産から負債を引いた基準資産額を500万円以上、そのうち150万円は現金預金で確保する必要があります。

・免許申請費用
人材紹介事業の立ち上げには免許の取得が必要となります。免許取得の際に「責任者講習会受講料(8,800円〜12,500円)」「登録免許税(90,000円)」「印紙費用(50,000円)」といったコストがかかります。
結果的に、免許取得においても15万円前後の費用がかかることになります。

参考:公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会

・事業所のオフィス費用
求職者との関わりを持つ人材紹介事業において、適切な環境を持つ事務所は必須要件となります。
以下のような要件が定められています。

1. プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能であること。具体的には、個室の設置、パーティション等での区分により、プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能である構造を有すること。

2.事業所名(愛称等も含む。)は、利用者にとって、職業安定機関その他公的機関であるとの誤認を生ずるものでないこと。

参考:厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業パンフレット-許可・更新等マニュアル-」

人材紹介業の免許を取得する流れやコストなど詳しくはこちらの記事をご覧ください。

人材紹介事業で必要となる運用コスト

続いて、人材紹介事業で高い利益率を実現するために必要な運用コストについて解説します。

・人件費
人件費は人材紹介事業における最大のコスト要因といえます。

・求職者との面談を行うキャリアアドバイザー
・求人の獲得を担う法人営業担当者
・その他のバックオフィス担当者

これらの人件費が事業運営には必要となり、コストが発生します。

・顧客獲得(マーケティング)コスト
売上を得るために必要な、求職者・求人の獲得を行うためのマーケティングコストも発生します。

・広告宣伝費
・スカウトデータベース利用費
・求人データベース利用費
・テレアポ代行費
・リスト作成費

上記に加え、事務所の賃貸料やその他諸費が運用コストとしてかかってくることになります。

人材紹介事業と人材派遣事業の利益の違い

人材紹介事業の利益は上記を元にすると以下のようになります。

人材紹介事業の利益=売上高ー(人件費+顧客獲得コスト+初期コスト)

一方人材派遣事業の利益は

人材派遣事業の利益
=売上高ー(派遣労働者の賃金+派遣労働者の社会保険+人件費+顧客獲得コスト+初期コスト)

になります。

人材派遣事業は人材を直接雇用しているため、労働者の賃金や社会保険が売上原価として計上されます。

この違いにより人材紹介事業は人材派遣事業より利益率が良いです。

人材紹介事業において利益率を高めるための戦略

人材紹介事業の利益率を高めるには、複数の戦略があります。このセクションでは、収益の増加とコストの削減に焦点を当て、具体的な方法を探ります。

戦略①:適切な紹介手数料を設定し、多くの顧客を集める

利益率を向上に導くために最も重要な要素の1つは、紹介手数料の増加です。顧客にとって納得のいく適切な手数料を設定することで、より多くの顧客を集め収益を増やすことが可能です。
なお、高すぎる手数料は顧客を遠ざけるリスクが伴います。
高額な手数料で1件あたりの収益をあげる戦略よりは、多くの顧客から適切な手数料を収益として得ていく方が、長期的な戦略として適切と言えるでしょう。

戦略②:広告費などの変動費を少なくする

変動費、特に広告費の削減は、利益率の維持に大いに貢献します。
デジタルマーケティングの効果的な活用、SNSを用いたコスト効率の高い広告戦略はコスト面で効率的と言えます。
また、口コミやリファラルによる無料の宣伝は、広告コストの節約につながる上に、事業としての信頼度の向上にも繋がります。
事業規模や状況に応じて、適切な広告戦略を策定していくことが重要です。

戦略③:業務を効率化する

業務の効率化は、コスト削減と生産性向上の両方に寄与します。
マーケティングオートメーションやRPAといった自動化のプロセスの導入、テクノロジーを活用した予実分析、業務フローの見直しと最適化、あるいはリモートワークの導入などによっても、時間とコストの節約が可能になります。
また、従業員のトレーニングとスキルアップに投資することで、長期的な効率化を図ることができます。

まとめ

人材紹介事業では、利益率を高めるためには、収益の最大化とコストの最小化が不可欠です。手数料の適切な設定、広告費の削減、業務の効率化は、これを達成するための重要な戦略です。また、人材派遣業との違いを理解することも、市場での競争力を高めるために重要となります。


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