人材紹介における返金規定とは?返金額の相場や記載すべき内容

人材紹介における返金規定は、きちんと定めておかないとトラブルの原因になる可能性があります。しかしながら、「返金規定とは、何を定めておけばいいの?」「そもそも、返金規定を定めないとダメなの?」と考えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、人材紹介における返金規定について以下の内容をまとめました。

・返金規定の基本情報
・返金額の相場と保証期間の目安
・返金トラブルを回避する方法

これから人材紹介の事業を始めようとしている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

人材紹介における返金規定とは

人材紹介の返金規定とは、企業へ紹介した人材が短期間で退職した際、規定に基づいた紹介手数料の一部を返金する規定のことです。職業安定法施行規則では、「返戻金制度」と明示されています(*1)。

2018年1月より職業安定法が改正され、厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトにおいて、返戻金制度の導入の有無や内容について情報提供を行うように義務付けられました(*2)。

情報提供の義務化に伴い、人材紹介企業は紹介手数料や返金規定の内容(保証期間や返金割合など)を正しく記載しなければなりません。

*1(参考)e-Gov法令検索「職業安定法施行規則 第二十四条の五
*2(参考)厚生労働省「職業紹介事業者の皆様へ~事業運営のルールが変わります~<職業安定法の改正>

人材紹介における返金規定で「返金なし」としても大丈夫?

人材紹介企業の返金規定(返戻金制度)は、設けていなくても法律上の問題はありません(2024年1月時点)。

もし返金規定(返戻金制度)を設けていない場合は、設けていない旨を人材サービス総合サイトなどに記載する必要があります。

ただし、トラブル防止の観点から、返金規定(返戻金制度)は導入するのが望ましいとされています(*1)。

円滑な運用を目指すためにも、可能であれば返金規定(返戻金制度)の設置を検討しましょう。

*1(参考)厚生労働省「第9 職業紹介事業の運営(条件明示)

紹介した人材が早期退職した際の返金額の相場と保証期間の目安

人材紹介企業の多くが、保証期間を3ヶ月(90日)と定めています。

また返金額の相場は以下のとおりです。

・入社後1ヶ月未満の場合は80%
・入社後3ヶ月未満の場合は50%

ただし、返金規定(返戻金制度)は各企業によって異なります。

返金率を大きく設定すれば利用したいと思ってくれる企業が増える一方、自社の利益を損なう可能性があります。逆に自社のリスクを抑える目的で返金率を小さくすれば、利用しづらいサービスだと思われかねません。

返金規定を設置する際は、他社が設けている規定や厚生労働省の人材サービス総合サイトを参考にしましょう。

返金ではなくフリーリプレイスメントという選択肢も

フリーリプレイスメントとは、早期退職した人材の代わりを手数料なしで手配する制度です。

人手が不足している企業にとっては新たな人材を探す手間が省け、人材紹介企業にとっては返金手続きを介さないため、両者にとってWin-Winな関係を構築できます。

ただしフリーリプレイスメント制度の導入には、新たな人材を派遣できるリソースを整えなければなりません。自社に登録している人材の状況を把握したうえで、フリーリプレイスメントの導入を検討しましょう。

人材紹介会社が返金規定を明示すべき3つの場所

返金規定は、人材紹介を利用する事業者が把握できる箇所に明示する必要があります。

返金規定を明示すべき箇所は、以下の3つです。

・人材紹介契約書
・厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」
・自社の事業所内またはホームページ内

ひとつずつ解説します。

人材紹介契約書

人材紹介契約書とは、利用事業者との間で結ぶ契約内容が明示された書類のことです。利用事業者との認識違いや契約後のトラブルを防ぐためにも、必ず返金規定を明示しなければなりません。

また人材紹介契約書には、返金規定以外にも記載しなければならない項目が多くあります。
人材紹介契約書の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」

前述したとおり、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」内においても、返金規定を明示する必要があります。返金規定を設けているのか、もし設けている場合は規定内容を正しく明示しなければなりません。

また返金規定以外にも、紹介手数料や就職者・離職者の状況などを明示する必要があります。

とくに就職者・離職者の状況については、情報を更新する時期や掲載期間も定められているため注意しましょう(*1)。

*1(参考)厚生労働省「人材サービス総合サイトを積極的にご活用ください!

自社の事業所内またはホームページ内

返金規定の掲示について、以前までは自社の事業所内に書面掲示しか認められていませんでした(*1)。しかし、2024年4月の改正職業安定法施行規則の施行により、自社ホームページ内の掲示でも可能となりました(*2)。

自社のホームページ内に掲示する場合は、人材紹介を利用する事業者がわかりやすい場所への明示が望ましいとされています。利用事業者が閲覧するトップページ、もしくは利用規約を確認できるページなどに手数料・返金規定を掲示しましょう。

*1(参考)厚生労働省「令和5年 改正職業安定法施行規則 Q&A(労働条件明示等)【令和5年12月時点版】
*2(参考)厚生労働省「求職者への労働条件明示のルールなどが変わります

人材紹介の返金規定において記載すべき内容

人材紹介の返金規定(返戻金制度)を導入している場合は、規定の詳しい内容を記載する必要があります(*1)。主な記載内容は以下のとおりです。

・返金の適用条件(具体的な日数や期間を明示する)
・返金額の割合
・免責事由など

なお返金規定に記載する内容は、各企業によって異なります。適用条件や返金割合の誤り、免責事由の問題などはないかを確認し、正しい内容を明示しましょう。

*1(参考)厚生労働「職業安定法改正 Q&A

人材紹介で返金が絡むトラブルを回避する方法

人材紹介企業と利用事業者のトラブルを回避する方法として、以下の3つが挙げられます。

・返金規定の最新情報を更新する
・事業者の求めるスキルと求職者のスキルを擦り合わせる
・厚生労働省のトラブル事例・解決策パンフレットを確認する

それぞれのトラブル事例と回避策を解説します。

返金規定の最新情報を更新する

返金規定の内容を変更した場合は、最新情報をできる限り早く更新しましょう。間違った情報の掲示は、利用事業者や求職者にとって不利益となります。

また返金規定だけではなく、労働条件なども同様に早めの更新が必須です。

厚生労働省のトラブル事例集では、「募集時の労働条件と契約締結時の条件が違った」という事例が取り上げられています(*1)。

正社員(雇用期間の定めがない)の求人に応募し採用が内定した求職者から、「労働契約締結時に求人者から明示された労働条件では、1 年間の有期雇用契約に変更されていた。」という苦情が寄せられた。
募集開始後に求人者から 1 年間の有期雇用に変更したという連絡もなかったので、求人者に確認をしたところ、「将来は正社員にするつもりであるが、しばらく様子を見たいので、1 年間は有期契約としたい。」との回答だった。(後略)

求職者が申し込みをした際の労働条件から内容を変更していたにも関わらず、求人者は変更した旨を報告せず、また人材紹介企業も条件を確認していなかったことがトラブルの原因です。

上記のようなトラブルを回避するためにも、返金規定や労働条件などが変更になった際は速やかに更新作業を行いましょう。

*1(引用)厚生労働省「職業紹介事業者向け トラブルを未然に防ぐためのポイント・事例集 15ページ

事業者の求めるスキルと求職者のスキルをすり合わせる

利用事業者が求めていたスキルと求職者のスキルがマッチしなかったことで、利用手数料の返還を求められる場合があります。

厚生労働省のトラブル事例集においても、「採用した人が事業者が求めるスキルを所持していなかった」事例が取り上げられています(*1)。

(前略)ある紹介所の紹介で、大手 IT 企業の管理職経験者を社内研修の責任者として採用した。仕事は社内研修の企画、研修資料の作成、講師業務で、それらを一人で行ってもらうつもりでいた。
ところが、大手 IT 企業出身者ということで、当然使えると思っていた office関連のソフトが使えず、研修資料を作成できなかった。(後略)

利用事業者が求めていたスキルに対し、人材紹介企業側で求職者のスキル確認を怠ってしまった点がトラブルの原因です。

人材紹介企業は利用事業者が求めるスキルを把握したうえで、求めるスキルを求職者が有しているか確認を徹底しましょう。

*1(引用)厚生労働省「職業紹介事業者向け トラブルを未然に防ぐためのポイント・事例集 20ページ

厚生労働省のトラブル事例・解決策パンフレットを確認する

厚生労働省の「人材紹介を取り扱う事業者に向けたトラブル事例・解決パンフレット」は、人材紹介のあらゆるトラブルを未然に防ぎ、人材紹介業界の健全な発展を促すことを目的とした資料です。

厚生労働省が令和3年に実施した「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 」によると、人材紹介の利用事業者の約34%が「紹介された人材がすぐやめてしまう」などのトラブルがあったと述べています(*1)。

人材紹介事業におけるさまざまなトラブルの発生を未然に防ぎ、万が一トラブルが発生した際にも誠実な対応ができるように、研修資料として活用しましょう。

また、返金対応を発生させないためにも、紹介人材の早期退職を防ぐことが大切です。利用事業者と求職者の立場に立って、最適なアプローチを実施しましょう。

以下の記事では人材紹介の営業の失敗パターンをまとめているので、参考にしてください。

*1(参考)厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査
報告書

人材紹介においては返金規定を設定しておくのが望ましい

人材紹介において、返金規定の導入は義務化されていないものの、導入が望ましいとされています。適切な返金規定を設けることで、企業が利用しやすいサービスを構築できます。

今後、人材紹介会社を起業する場合は、返金規定を設けることを検討しましょう


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