有料職業紹介事業に必要な「事業報告書」とは?項目ごとの書き方や注意点について解説

人材紹介事業に携わる方は、厚生労働省により「職業紹介事業報告書」の提出が義務化されています。しかし「事業を始めたばかりで、書き方がわからない」「それぞれの項目の記入例が知りたい」このような悩みを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、以下の内容をまとめています。

  • 有料職業紹介事業における「職業紹介事業報告書」の位置付け
  • 職業紹介事業報告書(様式第8号)の各項目の書き方・記入例
  • 職業紹介事業報告書を作成する際の注意点

有料職業紹介(人材紹介)事業に携わる方は、ぜひご一読ください。

有料職業紹介事業における「職業紹介事業報告書」の位置付け

「職業紹介事業報告書」とは、職業紹介事業者(人材紹介事業者)が毎年提出しなければならない書類の一つです。有料・無料の違いを問わず、職業紹介に携わるすべての事業主に提出が義務付けられています。

職業紹介事業報告書は、政府が人材紹介業界の動向を統計的に把握するために用います。具体的には、日本全体の求職者数や求人数、人材紹介実績の推移などを年度ごとに把握することが目的です。

職業紹介事業報告書の提出時期は、年度始めです。毎年4月1日〜4月30日の期間に、前年度の報告書を管轄の都道府県労働局に提出する必要があります。

都道府県労働局に提出された報告書は、最終的に厚生労働省で取りまとめられ、「人材サービス総合サイト」にて一般公開されます。

職業紹介事業報告書を提出しないと行政処分の対象になる

職業紹介事業報告書の提出は「職業安定法」の第三十二条の十六において定められており、未提出の場合、事業許可の取り消しや事業停止命令などの行政処分を受けるリスクがあります。

例えば令和4年には、東京都労働局が未提出の事業者に対し、職業紹介事業報告書が提出されるまでの間の事業を停止するよう命令を下した事例がありました(*1)。

職業紹介事業報告書は、開業初年度で前年度の紹介実績がまったくない場合でも、提出が必要です。とくに事業を立ち上げたばかりの方は、提出漏れのないように注意しましょう。

*1(参照)厚生労働省「職業紹介事業者に対する職業紹介事業停止命令 及び職業紹介業務改善命令について

職業紹介事業報告書の作成・提出方法

職業紹介事業報告書は所定の様式(様式第8号)を使って作成する必要があります。

様式第8号は、都道府県労働局のウェブサイトまたは、厚生労働省の下記サイトにてダウンロード可能です。

参照:厚生労働省「令和5年4月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領

作成した報告書は、4月30日までに管轄の都道府県労働局宛に郵送で提出します。郵送が難しい場合は、e-Gov(イーガブ)からの電子申請も可能です。

職業紹介事業報告書に記載すべき項目

職業紹介事業報告書の様式で記載を求められるのは、主に以下の9項目です。

①許可番号
②事業所のし名称および所在地
③紹介予定派遣の有無
④活動状況(国内)
⑤活動状況(国外)
⑥収入状況
⑦職業紹介事業の業務に従事する者の数
⑧返戻金制度
⑨従業員教育

詳しく見ていきましょう。

引用:厚生労働省「様式第8号(第1面)

①許可番号

許可番号(職業紹介許可番号)とは、厚生労働省から認可された職業紹介事業者に付与されている番号を指します。

許可番号の最初の数字2桁およびカナは、プルダウンメニューから選択します。カナは事業種別を表しているので、有料職業紹介事業者は「ユ」、無料職業紹介事業者は「ム」を選択しましょう。最後に、末尾6桁の数字を手動で入力します。

自社に割り当てられている許可番号が分からない場合は、下記のサイトから検索可能です。

参照:厚生労働省職業安定局「人材サービス総合サイト

②事業所の名称および所在地

事業所の正式名称と所在地を記入します。

なお、事業所が複数ある場合には、事業所ごとに職業紹介事業報告書が必要です。例えば、東京事務所と大阪事務所に分かれて事業を運営している場合、1通の報告書にまとめて記載するのではなく、2通の報告書を作成します。

③紹介予定派遣の有無

紹介予定派遣の実績があるかどうかについて、「有・無」のどちらかを選択します。有料職業紹介事業に加えて紹介予定派遣を実施している事業者の方は、「有」を選択しましょう。

紹介予定派遣とは、将来的に正規雇用に切り替えることを念頭に、求職者を求人先に派遣する事業です。紹介予定派遣は「人材派遣」の一種であるため、通常の「有料職業紹介事業許可」に加え、「一般労働者派遣事業許可」を保有していることが前提となります。

紹介予定派遣の仕組みにご関心のある方は、下記の記事をぜひご覧ください。

④活動状況(国内)

国内における職業紹介実績を集計表に記載します。集計表の横軸にある記載項目は、以下の4カテゴリーに大別されます。

  • 求人実績
  • 求職者実績
  • 就職者実績
  • 離職者実績


実績がない場合は「0」を入力してください。縦軸にある「取扱等の業務区分」は、プルダウンメニューから適切な職種コードを選択します。

厚生労働省の人材サービス総合サイトにて実績が公開されるため、必ず正確な数値を申告しましょう。

⑤活動状況(国外)

国外における職業紹介実績を集計表に記載します。④と同様の項目を、国別に記載しましょう。

近年、IT分野や介護分野などを中心に、海外からの求職者と国内企業をマッチングするサービスも増えつつあります。

海外人材向けの職業紹介事業に関心のある方は、以下の記事をぜひご覧ください。

⑥収入状況

人材紹介事業で得られた手数料収入について、集計表に記載します。

具体的には、以下の手数料が記載対象に含まれます。

  • 求人者手数料(上限制または届出制)
  • 求人受付手数料

どの手数料を採用しているかは、各社の収益モデルによって異なるため、自社で設定している手数料項目の欄に記載しましょう。自社で設定していない手数料項目には「0」を入力してください。

なお、人材紹介で顧客(求人企業)から受け取れる手数料は、「受付手数料」または「紹介手数料」のいずれかです。

人材紹介に関する手数料設定については、以下の2記事にてより詳しく解説しています。本記事とあわせてぜひ参考にしてください。

⑦職業紹介事業の業務に従事する者の数

職業紹介事業に従事する従業員数を記載します。「職業紹介責任者」を含めた数を記載してください。職業紹介責任者とは、有料職業紹介事業において配置が義務付けられている役職です。

職業紹介責任者については、以下の記事にてより詳しく解説しています。

⑧返戻金制度

返戻金制度の有無について、「有・無」のどちらかを選択します。

返金規定として返戻金制度を導入している場合、「有」を選択し、制度の概要を記述する必要があります。

返戻金制度とは、マッチングの成立後に労働者が早期退職してしまった場合に、人材紹介事業者が顧客企業に対し人材紹介手数料を返還する制度です。なお、2018年の職業安定法改正にて、返戻金制度についての情報提供が義務化されており、返戻金制度の導入が推奨されています。

人材紹介における返金規定の詳細については、以下の記事にてより詳しく解説しています。

⑨従業員教育

従業員教育の実施状況について、実施日時や実施人数、実施内容を記載します。「実施人数」の欄には「職業紹介責任者」を除いた数を記載してください。

「実施内容」の欄には、社内研修のほか、外部講師を招いた講習会や社外セミナーなどを記載できます。

従業員教育を実施していない場合には、「未実施」と記載しましょう。ただし、未実施の場合、労働局の指導の対象となる点に注意が必要です。

従業員教育は職業安定法により実施が義務付けられています。毎年必ず実施しましょう。

職業紹介事業報告書を作成する際の注意点

職業紹介事業関連の法改正は頻繁に行われるため、法改正の動向に常に注意を払っておく必要があります。

とくに職業紹介事業報告書は、2018年から義務化されたばかりの新制度であり、将来的に提出書類が追加されたり、届出様式が変更されたりする可能性があります。

職業紹介事業報告書の様式は使い回しをせず、年度ごとに最新の様式をダウンロードして使用するようにしてください。知識をこまめにアップデートし、最新の法令に合わせた対応を取りましょう。

有料職業紹介事業の事業報告書の提出はもれなく実施しよう

本記事では、有料職業紹介(人材紹介)事業者向けに、職業紹介事業報告書の位置付けや書き方を解説しました。

事業報告書は、毎年4月に必ず提出しなければならない書類です。人材紹介関連の法改正に注意を払いながら、もれなく対応しましょう。

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