
人材紹介ビジネスには、数多くの法律が関連しています。
人材紹介を取り扱う事業者は、適法に業務を行うために、法規制の全体像について理解しておかなければなりません。
今回は、人材紹介ビジネスに関して問題となる法律について、その概要を解説します。
これから人材紹介ビジネスを始めようとお考えの方は、それぞれの法律について深掘りして検討を行い、ビジネスモデルに問題がないかをチェックしてください。
人材紹介ビジネスの規模は拡大傾向

令和元年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000761347.pdf
平成30年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000614248.pdf
平成26年度職業紹介事業報告書の集計結果|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000117595.html
上記の表は、職業安定法に基づく有料職業紹介事業の報告内容につき、2019年度・2018年度・2014年度の集計結果を抜粋したものです。
各データを見ると、人材紹介ビジネスに関するいずれのパラメータも、2014年から2019年の5年間で大幅に向上したことがわかります。
なお、新型コロナウイルス感染症による転職市場への影響が懸念されるところですが、現時点ではその影響は限定的と考えられます。*1
今後のコロナ禍をはじめとした社会情勢を注視する必要はありますが、人材紹介ビジネスを巡る市場環境は、今後も活況で推移する可能性が高いでしょう。
人材紹介ビジネスに関連する法律の種類・概要について
人材紹介ビジネスを行う際には、職業安定法に基づく許認可規制などを遵守する必要があります。
また、事業者が労働条件の交渉などを仲介するにあたっては、労働関係の各種法令についても理解を深めておくべきです。
以下では、人材紹介ビジネスに関連する各種の法律について、それぞれの概要を解説します。
職業安定法
人材紹介ビジネスは、職業安定法において「有料の職業紹介事業」として規制されています。
まず、人材紹介ビジネスを行う場合には、あらかじめ厚生労働大臣の許可を受けることが必要です(職業安定法30条1項)。
許可の可否については、財務状況・情報管理・人材確保などの観点から審査が行われます。
そのため事業者は、許可を受けるための条件を整えて申請を行う必要があります。
有料職業紹介事業の許可については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。
【リンク】https://tameni.mynavi.jp/recruitment/3392/
有料職業紹介事業の許可を受けた事業者は、職業安定法に基づき、厚生労働省の監督を受けることになります。
その一環として、事業者は厚生労働大臣に対して毎年事業報告書を提出しなければなりません(同法32条の16第1項、同法施行規則24条の8第1項)。
また、有料職業紹介事業の運営について問題点が発見された場合には、厚生労働大臣による指導・助言、さらには改善命令・勧告・公表などが行われる可能性があります(同法48条の2、48条の3)。
労働基準法
事業者が労働条件に関する交渉を仲介する際に、意識しておかなければならないのが「労働基準法」です。
労働基準法は、使用者に比べて立場が弱い労働者を保護するために、労働条件の「最低ライン」をさまざまな要素について定めています。
労働基準法における主な規制内容は、以下のとおりです。

人材紹介ビジネスを行う事業者は、コンプライアンスの観点から、労働基準法に違反した労働条件が使用者から提示されていないかを随時チェックしましょう。
労働契約法
「労働契約法」においては、労働契約の終了に関する以下の重要なルールが定められています。

特に短期雇用を前提とした人材紹介を行う場合には、労働者側から継続雇用に関する不安が吐露される可能性があります。
その際には、上記の労働契約法のルールを踏まえたうえで、適切なアドバイスができるようにしておきましょう。
男女雇用機会均等法
未だに「男性は仕事、女性は家庭」という固定観念に基づいて運営されている会社が存在することも事実です。
しかし、「男女雇用機会均等法※」6条では、性別を理由として労働者を差別的に取り扱うことを禁止しています。
※雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
人材紹介ビジネスを営む事業者としては、性差別を助長していると評価されることがないようにしなければなりません。
そのためには、男女雇用機会均等法に違反する雇用主について、案件の取り扱いを停止するなどの対応をとるべきでしょう。
パートタイム・有期雇用労働法
人材紹介ビジネスでは、パート・アルバイトの紹介を行うケースも多いかと思います。
その際には、「パートタイム・有期雇用労働法※」による規制内容に留意する必要があります。
※短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
パートタイム・有期雇用労働法における規制の中で、もっとも重要なのが「同一労働同一賃金」の原則です(パートタイム・有期雇用労働法8条、9条)。
同一労働同一賃金の原則に従えば、パートやアルバイトであっても、正社員と同じ業務と職責を担っている場合には、正社員と同等の待遇を保障しなければなりません。
同一労働同一賃金は近年注目を集めているため、人材紹介ビジネスを取り扱う事業者が、労働者から質問を受ける機会も増えると考えられます。
その際適切に回答できるように、同一労働同一賃金の考え方をよく理解しておきましょう。
同一労働同一賃金の原則については、以下の記事でも解説しているので、併せてご参照ください。
参考:アルバイトとパートの違いとは?法律上の位置づけと待遇に関する誤解|ナレビ
https://nalevi.mynavi.jp/solving_problems/organization/12477/
まとめ|法令を遵守して健全な人材紹介ビジネスの運営を
事業者が人材紹介ビジネスを運営するにあたって、労使双方からの信頼を勝ち得るためには、各種の法令についての理解を深めておくことが大切です。
本記事で紹介したのは、あくまでも各法律の概要に過ぎません。
実際に人材紹介ビジネスを開始する際には、弁護士などの専門家に相談しながら、法令上の留意点を深掘りして検討することをお勧めいたします。
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【エビデンス】
*1 「新型コロナウイルスが転職市場に及ぼす影響」を発表|マイナビ
https://www.mynavi.jp/news/2020/07/post_23955.html
【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
HP:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw