「限定正社員」とは?多様な働き方を知り、転職の選択肢を広げよう

限定正社員とは?

限定正社員とは、通常の正社員に比べて、以下のいずれかまたは複数の労働内容・条件が限定された正社員を意味します。

・労働時間
(例)1日6時間の時短勤務、週4日勤務
・勤務地
(例)転勤なし
・職務、職種
(例)IT業務専任

近年の働き方改革推進の流れの中で、「限定正社員」は多様な働き方の一つとして厚生労働省が推進しており、各企業も積極的に導入を進めています。

参考:「多様な正社員」について|厚生労働省

限定正社員に対する企業のニーズ

企業アンケート調査結果概要|厚生労働省 p7、p8

少し古い資料になりますが、上記は2011年に行われた、厚生労働省主宰の研究会による正社員の雇用区分に関する調査結果です。

一つ目のグラフからは、企業の規模に関わらず、概ね5割前後の企業において、正社員に複数の区分が設けられていることが分かります。

また二つ目のグラフからは、
「優秀な人材を確保する」
「従業員の定着を図る」
「ワーク・ライフ・バランスの支援」
といったポジティブな理由から、正社員に複数の区分を設けている企業が多いことも明らかになっています。

これは約10年前の調査結果ですが、現在ではさらに働き方の多様化が進んでおり、正社員に複数の区分を設ける企業も増えていることが想定されます。
こうした労働市場の環境において、「限定正社員」という働き方は、すでに幅広く市民権を得ているといえるでしょう。

限定正社員として働くメリット

「限定正社員」という働き方は、労働者にとって、主に以下の3点においてメリットがあります。

ライフスタイルに合わせた働き方を実現できる

家事・育児などとの関係で、フルタイムの勤務が難しい方にとっては、限定正社員として1日の労働時間や勤務日を限定して働くことが有力な選択肢でしょう。

また、単身赴任を避けて家族と一緒に暮らしたいという方は、「転勤なし」の条件で限定正社員として働くことが考えられます。

このように、個々人のライフスタイルに合わせて働き方を調整できる点は、限定正社員の大きなメリットの一つです。

特定の職域について専門性を高められる

通常の正社員の場合、部署移動によってさまざまな経験を積み、ジェネラリストとして社内でキャリアアップすることが主に想定されています。

これに対して、職域・職種を絞った形で限定正社員として働く場合は、その職域・職種に特化したスペシャリストとして能力を磨くことができます。

限定正社員として働きながら専門性を高めれば、転職市場での価値も上昇し、その後の転職がしやすくなる可能性が高いでしょう。

雇用が安定する

限定正社員には、通常の正社員と同様に、雇用期間の定めがありません。

無期雇用の正社員であれば、契約終了による雇い止めを心配せずに済みます。
また、会社による一方的な解雇はきわめて厳しく制限されています(解雇権濫用の法理。労働契約法16条)。

そのため、契約社員や有期契約の派遣社員などと比べると、格段に雇用が安定している点が、限定社員の大きなメリットです。

限定正社員として働くデメリット

限定正社員には、柔軟かつ安定した働き方である長所がある一方で、以下のデメリットも存在します。
しかし、いずれもスキルアップ等によってカバーし得るものですので、デメリットに捉われ過ぎることなく、ご自身の働き方をどうデザインするかを検討してください。

通常の正社員より待遇が劣るケースがある

単純に労働時間を減らす、勤務地を限定するといった形で限定正社員として働く場合、通常の正社員に比べると、賃金などの待遇はどうしても見劣りしてしまいます。
ワーク・ライフ・バランスの観点から、待遇についてはある程度妥協するという考え方もあり得るでしょう。

その一方で、専門性の高い労働者として付加価値を備えることができれば、むしろ通常の正社員より良い待遇を得られるケースもあります。
限定正社員として働きながら、高待遇も同時に追求したい場合には、ご自身の専門性を磨くことに邁進しましょう。

社内でのキャリアアップが難しくなる

限定正社員としての働き方は、社内でのキャリアアップとは相性が悪い面があります。
労働時間や勤務地、職域・職種を限定している場合、通常の正社員に比べると、総合職として会社にフルコミットするキャリアパスには乗りにくいと考えられるからです。

しかし、専門性を有する限定正社員の方であれば、ジョブ型採用を行う会社に転職してキャリアアップを図ることも考えられます。
つまり、従来型の社内での出世を目指すのではなく、スペシャリストとして、ご自身の能力を活かせる場を求め続ければよいということです。

この辺りは、キャリアに関する考え方にもよるところですので、ご自身がどのようなキャリアを目指すかをよく考えたうえで、働き方を選択してください。

限定正社員が向いている方の具体例

限定正社員としての働き方は、特に以下のような方に向いていると考えられます。

家庭と仕事のバランスを図りたい方


限定正社員の大きな特長は、やはりワーク・ライフ・バランスの点にあります。
労働時間や労働日を少なめに設定したり、転勤を無くしたりすることで、家庭と仕事の両立がかなりしやすくなるでしょう。

家族とともに過ごす時間を大事にしたい方には、限定正社員は特におすすめの働き方です。

専門的な資格やスキルを持っている方・資格取得を目指している方

各種士業やエンジニアなど、すでに専門的な資格やスキルを保有している方は、職域・職種を限定したうえで、限定正社員として働くことも有力な選択肢です。
人事異動に振り回されることなく、ご自身のスキルを存分に発揮できる可能性が高いでしょう。

また、これからスキル習得や資格取得を目指す方にも、特定の職域・職種に特化した能力や経験を磨く観点から、限定正社員がお勧めの働き方になります。

まとめ

「正社員か非正規社員か」
という従来型の区分けにとどまらず、最近では非常に多様な働き方が認められてきました。
限定正社員も、会社・労働者の双方にメリットのある働き方として、近年急速に普及しています。

現在転職活動をしている方は、柔軟な働き方を実現しながら正社員の地位を得られる、限定正社員という働き方もをぜひご検討ください。

また会社側から見ても、限定正社員を含めた幅広い働き方を認めることで、自社にマッチした優秀な人材をリクルートできる可能性が高まります。
人材採用をご検討中の会社・人事担当者の方は、「正社員としての採用」に少し柔軟性を持たせるなど、採用計画を見直してみてはいかがでしょうか。


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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
HP:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw