成功する人は実は「偶然」から職業を選ぶ?フォレストガンプな生き方

キャリアプランを考えるとき、多くの人が過去の職業経験から、自分の強みや弱みを診断したり、新しいキャリアを組み立てようとします。もしかしたら、実は小さい頃に決めた「大きくなったら」の思い込みに縛られているかもしれません。

しかし、実は「偶然」を利用することで、さらに世界が広がる可能性があることをご存知でしょうか。

「フォレスト・ガンプ」の主人公のように生きられるか?

アメリカ映画「フォレスト・ガンプ」の、主人公フォレストは、「あなたは将来何になるのか?」と聞かれ、「僕は、僕だよ」と答えます。そして、自分を定義しないまま、さまざまな職業に挑戦していくのです。

まず、足が早いことから、誘われるままに大学のフットボール・チームへ入ります。卒業後はたまたま入った軍隊で力を発揮し、今度は軍隊で出会った友人に言われるままに漁師になり……といった具合です。
自分の「なりたい」や「適性」をほとんど考えることなく、偶然の出会いをどんどん新しい職業に飛び込んでいくのです。

「自分にはそんなことはとてもできない」と思われるでしょうか。
しかし、世の中には芸能人やスポーツ選手になった経緯について、こんなことを言う人もいます。
「たまたま友達がオーディションを受けるというのでついて行ったら、自分がスカウトされてしまった」
「友達が入ったクラブ活動に一緒に入ったら、自分の方がプロになってしまった」
このような「偶然」によって職業を選んだ人たちの中にも、成功する人がいるのです。

そして実際にキャリアに「成功した」人の多くが、「偶然から」そのキャリアを選んでいるという説があります。
スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱している計画的偶発性理論(Planned Happenstance)です。*1

実は人生は「偶然」でできている?

「計画的偶発性理論」とは、将来のための特定の計画を持つのではなく、「計画外の出来事」を取り入れながらも、機会を見つけることにフォーカスせよ、というものです。

実際に、ジョン・クランボルツ教授の書籍「その幸運は偶然ではないんです!夢の仕事をつかむ心の練習問題」を読むと、まずこんな一文が出てきます。

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慎重に立てた計画よりも、想定外の出来事や偶然の出来事が、あなたの人生やキャリアに影響を与えていると感じたことはありませんか?*2
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この「偶然がキャリアを支配する」考え方は、例えば、総合職として入社したビジネスパーソンにはおそらく納得できるのではないでしょうか。

あるひとは、経理部に配属されたことで、経理を一生のキャリアと思い込むかもしれません。たまたま営業に配属されて、その面白さに目覚める人もいるでしょう。実際には「たまたま」誘われたり、ある部署に配属されたりして、上司に言われるままにやってみたことが、「意外に面白いじゃないか」と、その後のキャリアにつながることは多いものです。

将来の夢を一旦脇に置いて、偶然に身を任せてみるキャリア選択もあり

クランボルツ教授は、小さい頃に人々が持つ「夢」の多くは、「大きくなったら何になりたいの?」と聞かれ続けることによって、「無理に決められている」可能性があるというのです。

「大きくなったら何になりたいの?」の質問は、実は大人でも難しい将来を子供に予測させています。

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この質問は、トレーニングを受けた大人(エコノミスト、証券のディーラー、気象学者、政治アナリストなど)でさえ、将来を正しく予測することは難しいという現実を無視して、子供が将来を予測できると想定した質問です。毎日たくさんの想定外の出来事や偶発の事態が起こり、将来を正確に予測することは不可能です。*3
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中には、大人の顔色を伺いながら、とりあえず知っている職業を口にしてしまう。「弁護士になろう」「医者になろう」と親が好むキャリアを決めてしまうことがあるかもしれません。小さい頃の視野の狭い選択によって、同じ場所、同じ業界に居続けなくてはならないと思い込んで、仕事に行き詰まってしまう人もいるというわけです。

もしくは学生時代から思い込んだキャリアに囚われて、そのまま一生を「狭い範囲」で過ごしてしまっていないでしょうか、と彼は問いかけるのです。

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そして、ある調査の結果、一八歳のときに考えていた職業に就いているという人は、全体の約二%にしかすぎないことがわかりました。*4
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クランボルツ教授は、「自分の将来を今決めるよりも、積極的にチャンスを模索しながら、オープンマインドでいるほうがずっとよいのです。ひとつの職業にこだわりすぎると視野が狭くなってしまいます」と促します。*5

そんなわけで、この本には、偶然の出会いでキャリアを選んだ例がこれでもか!というほど出てきます。失敗や、うまくいかなかった体験ーー例えば予定していた飛行機に乗れなかったことから、なぜかキャリアが開けた例まであります。

そしてこの人生における「偶然の重要さ」をわかっているカウンセラーこそが、「正しい道に戻ったキャリアカウンセラー」だというのです。

確かに、このキャリア戦略なら、ガチガチに固めた計画に沿って生きるより、なんだか時流に沿って生きられる気がします。
とくにITの世界は10年でまったく変わってしまいますし、次々に新しい職業が生まれます。今データサイエンティストをやっている人の中に、子供の頃に「データサイエンティスト」と思った人がどれだけいるでしょうか。存在しない職業を想像することは難しいです。

偶発性を生かすために必要な特性

ただし、綿密に計画を立てて予定通りに行かなかったときの態度が重要です。その時に嘆いてばかりいては、代わりに降ってきたチャンスを見逃してしまいます。

つまり、この偶発性を生かすためには、ある特性が必要になるようです。
クランボルツ教授によると、それは以下のような特性です。

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想定外の失望を利用する。
場所や職業を変えることに対してオープンマインドでいる。
あなたが出会う興味深い人々と、自分の興味や経験を共有する。
フラストレーションをチャンスに変える。
偶然の出来事は、さらなる偶然の出来事につながることを理解する。
自分に合わせて仕事を工夫する。*6
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偶発性がないと、新しいものが取り入れられません。
オープンマインドでいること、何か予定外のことが起きたとき、いかに心を立て直し、周りの人の言うことに素直になり、その中で何かを掴むこと。その生き方が重要だというわけです。

「パソコン雑誌編集者」は、筆者が就職活動のときは存在しませんでしたし、今はほぼ無くなっています。30年前には「Webプロデューサー」という職業すらありませんでした。なにしろ当時就職活動している人たちには、インターネットですらよく知られていなかったのですから。

こんな風に時代やキャリアに対して柔軟になっておくと、思わぬ自分と出会える可能性があるかもしれません。


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【エビデンス】
*1 University of Sunderland in London「Planned Happenstance
*2-*6 J・D・クランボルツ,A・S・レヴィン. その幸運は偶然ではないんです!夢の仕事をつかむ心の練習問題 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.168-170). Kindle 版.


【著者】のもと きょうこ
早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者、「マレーシアマガジン」編集長などを歴任。著書に「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。2013年ごろから、マレーシアの教育分野についての情報を発信している。