副業禁止は実は違法?解雇は有効?事前確認の重要性を判例を基に弁護士が解説

近年では、副業が認められる会社が増えてきているとはいえ、依然として副業について何らかの制限を設けている会社も多いところです。

就業規則上の副業に関するルールに違反すると、最悪の場合解雇されてしまう恐れおそれがあります。

もしこれから副業をしようと考えている労働者の方は、就業規則のルールを事前にきちんと確認しておきましょう。

この記事では、副業に関する就業規則上の取り扱いや、副業ルールに違反した場合のリスクなどについて解説します。

副業を認める企業は約半数に到達

出典:働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)|株式会社マイナビ p8
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上記のグラフは、全国の民間企業等を対象に行われた働き方、副業・兼業に関する調査(回答数:1910件、調査期間2020年8月7日~11日)において得られた、勤務先の企業において副業が認められているかどうかを示す統計データです。

同グラフによると、調査対象企業のうち、調査時点で副業・兼業を認めている割合は49.6%で、すでに約半数に到達しています。

また、将来的に従業員の副業・兼業を拡充するという方向で回答した企業は、全体の57.0%と過半数を占め、今後も副業・兼業推進の傾向は広がっていくと予想されます。

副業が認められているかどうかを知るには、就業規則を確認する

自分の会社で副業が認められているかどうかは、就業規則を確認すると分かります。

就業規則は、その内容が合理的であり、かつ労働契約の締結時に労働者に周知された場合には、契約の一内容として労働条件を規定します(労働契約法7条本文)。

副業に関するルールについても、上記の条件を満たす限りにおいて、労働者を拘束するルールとして機能するのです。

なお、使用者は労働者に対して、就業規則の内容を掲示・備え付け・書面交付などの方法で周知する義務を負っています(労働基準法106条)。

周知方法は会社によって異なりますので、不明な場合は人事担当者に確認してみましょう。

就業規則における副業ルールのパターン

就業規則における副業に関するルールは、大きく以下の4パターンに分かれます。

①一律禁止

内容・理由を問わず、副業を一律禁止とするパターンです。

後述するように法的な問題があるため、最近では減ってきています。

②許可制

副業を認めるかどうかを会社が判断し、許可を受けた場合に初めて副業が認められるパターンです。

副業の許可制は、多くの会社の就業規則で定められていますが、後述するように、運用次第では法的な問題を生じる可能性があります。

③届出制

副業の可否について、会社は基本的に審査を行わないものの、状況把握のために届出を求めるパターンです。

届出制を採用している会社は、副業に対して比較的寛容といえるでしょう。

④完全に自由(届出も不要)

副業について完全に従業員の裁量に任せ、届出も求めないパターンです。

従業員の自主性を重んじる会社でよく見られます。

副業の一律禁止・許可制は法的に有効?

上記の副業ルールのパターンのうち、「一律禁止」と「許可制」については、法的な観点から問題が生じる可能性があります。

なぜなら、就業時間以外は基本的に労働者の自由時間であるはずなのに、「一律禁止」と「許可制」は、会社が労働者の自由時間をコントロールする意味合いがあるからです。

まず副業の「一律禁止」は、労働者の自由時間を過度に制約するものとして、違法の疑いがきわめて強いと考えられます。

後述する「小川建設事件」でも、以下のとおり、副業の一律禁止は合理性を欠き違法であることを示唆しています。

「就業時間外は本来労働者の自由な時間であることからして、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く」

これに対して、副業を「許可制」とすることは、以下の観点から一定の合理性があると解されています。

・副業によって充分に休息や睡眠がとれず、本業に影響が生じるおそれがある
・競業避止義務に違反しないかを確認する必要がある
・公序良俗違反に当たるなど、会社の信用やブランドを毀損するおそれのある副業に従事していないか確認する必要がある

逆に言えば、上記以外の恣意的・不合理な理由によって、従業員が許可を申請した副業を会社が認めなかった場合には、従業員の自由時間に対する不当な制限として違法になる可能性があります。

副業に関する就業規則のルールに違反するとどうなる?裁判例を基に解説

従業員が会社に無断で副業・兼業をしたケースでは、しばしば会社によって従業員が解雇されています。

会社とのトラブルを避けるためにも、副業・兼業に関する就業規則のルールは必ず事前に確認しましょう。

副業・兼業について、就業規則違反による解雇が問題となった裁判例を2つ紹介します。

橋元運輸事件|懲戒解雇

【名古屋地裁昭和47年4月28日判決】

運輸会社の副社長が、管理職等の地位にある従業員3人を勧誘して取締役に就任させ、別の運輸会社を設立した事案です。

従業員3人は、元の運輸会社から懲戒解雇されましたが、解雇処分の無効等を主張して訴訟を提起しました。

本件では以下の理由から、従業員3人の行為が元の運輸会社の企業秩序を乱す行為であると評価され、結論として懲戒解雇が有効と認められました。

・従業員3人が、新会社の経営に直接関与する事態が発生する可能性が大きいこと
・従業員3人は、元の運輸会社で管理職の地位にあったため、営業秘密が流出する可能性があること

さらに本件では、従業員の退職金が6割カットされています。

小川建設事件|普通解雇

【東京地裁昭和57年11月19日判決】

建設会社の従業員が、会社に無断で、勤務時間外にキャバレーの会計係として副業を行っていた事案です。

従業員は、建設会社による普通解雇処分の無効を主張して訴訟を提起しました。

本件では、建設会社において副業の許可制が採用されていました。

東京地裁は、本記事ですでに解説した理由などにより、副業の許可制自体の合理性を認めています。

そして東京地裁は、従業員が会社に承諾を求めることなく、無断で二重就職したことは、それ自体が企業秩序を阻害する行為であると評価しました。

これに加えて、副業の勤務時間が6時間にわたり、深夜勤務であったため、本業の労務に支障を来す可能性が高い点を重視し、普通解雇処分は有効であると判示しました。

まとめ

「会社に相談したら、副業を認めてもらえないかもしれない」という懸念により、会社に黙って副業をする方もいらっしゃいます。

しかし前述のとおり、会社から懲戒処分を受けるおそれがありますし、そもそも本業の会社に言えないような副業は、長続きせずに破綻してしまう可能性が高いでしょう。

安定した副業活動によって収入を底上げするためには、本業・副業の両方に注力できるようなバランスを見つけることが肝心です。

それぞれの勤務先と適切にコミュニケーションをとりながら、副業に対する理解を得られるように努めましょう。


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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
HP:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw