派遣社員か、エージェント仲介で転職か?給与・キャリア形成を弁護士が比較

転職を目指す際には、人材派遣会社に登録する(派遣社員として働く)、または人材紹介会社(転職エージェント)にポジションを紹介してもらうという2つの選択肢が有力になります。

両者は雇用形態や法制度が異なるため、給与の仕組みやキャリア形成のしやすさにも、自ずから違いが生じます。
ご自身の希望や状況に応じて、メリットの大きい方を選択し、より良い形で転職を成功させてください。

今回は、派遣社員として働くことと、エージェントの仲介による転職を目指すことの2つについて、雇用形態や法制度の違いを踏まえつつ、給与やキャリア形成の観点から比較してみたいと思います。

労働者派遣とエージェント仲介の仕組みの違いは?

大前提として、まずは「労働者派遣」と「エージェント仲介」の仕組みの違いを理解しておきましょう。

労働者派遣は、派遣元事業主(派遣会社)に雇われている派遣労働者が、派遣先の指揮命令下で働く仕組みです。
雇用契約は派遣元事業主と派遣労働者の間に存在するものの、実際に働くのは派遣先のオフィス・現場である点が、労働者派遣の大きな特徴となっています。

これに対してエージェント仲介の場合、転職エージェントはあくまでも、企業と採用候補者の間を仲介するのみです。
したがって、採用候補者は採用元企業の正社員または契約社員となり、採用元企業のオフィス・現場で働くことになります。

労働者派遣の場合、派遣元事業主が派遣先(職場)を探してくることから、エージェント仲介における転職エージェントと似たような役割を果たしているように見えるかもしれません。
しかし上記のように、労働者派遣とエージェント仲介は、実際には全く違う仕組みによって行われているのです。

派遣社員とエージェント仲介による転職、給与はどちらが高い?

転職を目指すに当たって、給与が高いか低いかという点は、ほとんどの方にとって主要な関心事となるでしょう。

派遣社員として働く場合と、エージェント仲介により転職する場合とでは、どちらの方が給与の面で有利なのでしょうか?

知っておくべき「マージン」の仕組み

給与についての傾向を正しく理解するためには、労働者派遣とエージェント仲介の「マージン」の仕組みを知っておく必要があります。
「マージン」とは「中抜き」という意味合いを持ちますが、ここでは派遣元事業主や転職エージェントが、労働者派遣やエージェント仲介から得る利益を意味するものとします。

労働者派遣の場合、派遣先が派遣元事業主に支払う派遣報酬の方が、派遣元事業主が派遣労働者に支払う給与よりも高くなっています。
この差額が、派遣元事業主の得る「マージン」です。

派遣元事業主のマージンは、労働者派遣の期間中はずっと発生します。
そのためマージンの仕組み上、派遣労働者の給与は、絶えず低く抑えられる方向に力が加わっていると言わざるを得ません。

これに対してエージェント仲介の場合、基本的には雇用が成立した時点で、「年収の〇%」という形の成功報酬(マージン)が、採用元企業から転職エージェントに対して支払われます。
雇用期間中にずっとマージンが発生するわけではないので、エージェント仲介の場合は、労働者派遣よりも給与が上がりやすい仕組みになっていると言えるでしょう。

派遣社員の給与は月ごとの変動が大きい

派遣労働者の給与形態は、一般的に時給制が採用されています。
つまり、純粋に稼働時間に応じて給与が支払われるので、正社員や契約社員よりも歩合の側面が強くなります。

したがって派遣労働者の場合、たくさん働いた月の収入は増える一方で、あまり稼働できなかった月の収入は少なくなり、月ごとの変動が大きい点に留意すべきでしょう。

具体的な待遇は雇用先の企業による

平均的にはエージェント仲介の方が給与は上がりやすい、労働者派遣の場合は月ごとに変動が大きいといった一般的な傾向はあるものの、具体的な待遇についてはケースバイケースと言わざるを得ません。

転職の際に給与を最優先事項とする場合には、エージェント仲介・労働者派遣という枠にとらわれず、幅広く選択肢を検討することをお勧めいたします。

キャリアにプラスになるのは、派遣社員?エージェント仲介による転職?

転職の際に、給与と並んでキーポイントとなるであろうキャリア形成については、労働者派遣とエージェント仲介では、かなり特徴が異なります。

中核的な役割を担当しやすいのは、エージェント仲介による転職

エージェント仲介により転職する場合、正社員または契約社員としての採用になります。

基本的には長期雇用を前提としますので、採用元企業で中核的な役割を任せてもらえる可能性が高いでしょう。

これに対して派遣社員として働く場合、実際に働く派遣先の従業員という立場ではないため、いわゆる「外様」としての扱いを受けるケースが多いようです。
また、後述する「3年ルール」の存在により、長期にわたって同じ職場に定着することが難しい事情もあります。
そのため、あくまでも派遣先の従業員の補助的な役割にとどまるか、または特定の領域に特化した業務を任せられるケースが多いと思われます。

派遣社員は多様な職場を経験できる

派遣労働者には、3年を超えて同じ事業所・組織単位に派遣することができないという「3年ルール」が存在します(派遣元事業主に無期雇用されている派遣労働者などは、3年ルールの対象外)。

この3年ルールの影響で、多くの派遣労働者は、3年以内の周期で複数の職場を転々とすることになります。
「腰を据えて働くのが難しい」というネガティブな捉え方もありますが、「多様な職場で経験を積むことができる」とポジティブに捉えて、派遣労働者としての経験をご自身のキャリア形成に活かしていくのがよいでしょう。

派遣社員とエージェント仲介による転職、どちらを選ぶべき?

派遣会社に登録して派遣労働者として働くか、エージェント仲介による転職を目指すかは、待遇やキャリアの観点を総合的に判断して決めましょう。

大まかな指針としては、

・安定的な待遇・総合職キャリアを求めるなら、エージェント仲介による転職がベター
・労働集約による高給、スペシャリストとしてのキャリアを目指すなら、派遣社員も有力

といった形になりますが、具体的な検討の際には、個々の募集要項をよく比較検討することをお勧めいたします。

まとめ

最近では働き方が多様化しており、転職活動の際に検討すべき働き方の選択肢も、かなり幅広くなっています。

今回は「派遣かエージェント仲介か」という切り口で分析を行いましたが、具体的に転職先を選ぶ際には、ご自身のライフスタイルやキャリアビジョンに合った働き方ができるかどうかを総合的に判断することが大切です。
十分な情報収集を行い、ぜひベストな転職先を見つけてください。


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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
HP:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw