労働法違反のブラック企業に要注意!よくある問題点・見分けるポイント

ブラック企業に転職してしまうと、転職前よりもワークライフバランスが悪化し、精神的にも肉体的にも疲弊してしまいます。
転職を決める前の段階でブラック企業を見極めるためには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか?

今回は、ブラック企業を見分けるためのポイントを、労働法の観点から弁護士が解説します。

法的な観点から見た、ブラック企業の代表例

労働法を遵守しない企業は、従業員を大切にしないブラック企業と言えます。

特に、以下の3つのパターンに該当する企業は、悪質なブラック企業である可能性が高いので、オファーを受諾することは避けましょう。

ブラック企業①|違法な長時間労働を放置している

労働者の健康を保護するため、労働基準法では、労働時間に関する規制が設けられています。

労働基準法・契約・労使協定などに違反し、過剰な長時間労働を課す企業は、従業員を使い捨てる悪質なブラック企業です。

ブラック企業②|残業代を正しく支払わない

契約で定められた労働時間(所定労働時間)を超えて働いた場合、従業員は会社に対して残業代を請求できます。
自分の時間を割いて労働力を提供している以上、残業代を受け取るのは当然の権利と言えるでしょう。

しかし、人件費を抑えたいという思惑から、正しく残業代を支払わない企業が存在することも、残念ながら事実です。
残業代の不払いを起こす企業は、従業員の貢献に対して正当に報いることのないブラック企業と考えられます。

ブラック企業③|従業員を簡単に解雇する

従業員の雇用を守る観点から、いわゆる「解雇権濫用の法理」(労働契約法16条)によって、解雇は厳しく制限されています。

それにもかかわらず、少々の経営不振や軽微なミスなどにより、従業員を簡単に解雇する企業は、労働法を遵守する意識のないブラック企業と言うべきでしょう。

違法な長時間労働に関するチェックポイント

違法な長時間労働が横行している企業への転職を避けるには、以下のポイントを必ず確認しましょう。

36協定は締結されているか?その内容は?

会社が従業員を残業させるには、労働組合などとの間で「36協定」と呼ばれる労使協定を締結する必要があります(労働基準法36条1項)。
36協定が締結されていないにもかかわらず、従業員に残業をさせることは違法です。

また、従業員に対する残業指示は、36協定で定められた上限時間の範囲内でのみ認められます。

そのため、違法な長時間労働が心配な場合は、36協定の中で定められた残業の上限時間について質問してみましょう。

労働時間の管理はきちんと行われているか?

36協定で残業時間が定められていても、実際の労働時間が上限を超過しているようでは意味がありません。
違法な長時間労働を避けるためには、残業に関する実態を把握することも重要です。

特に、残業時間の記録方法がずさんな場合には、ルール破りの違法残業が横行している可能性があります。
タイムカードなどを用いて、きちんと客観的に労働時間が記録されているかを確認しましょう。

残業代不払いに関するチェックポイント

残業代の不払いに関しては、法律上さまざまな問題点が存在します。
その中でも、以下の3点については違法な取り扱いがよく見られるため、転職の際には確認しておくとよいでしょう。

無給で準備や片付けが義務付けられていないか?

従業員が、会社の指揮命令下で労働している時間には、すべて賃金が発生します。
これは、仕事を始める前の準備時間や、仕事が終わってからの片づけの時間も同様です。

もし会社から、所定労働時間外での準備や片付けが指示されているにもかかわらず、その時間が無給とされている場合、残業代の不払いが発生している可能性があります。
転職活動の際には、出退勤の方法や様子について、それとなく質問してみましょう。

固定残業代制の場合、正しく運用されているか?

「固定残業代制」とは、固定残業時間に対する残業代を、毎月必ず基本給に上乗せして支給する制度です。

固定残業代制は、「どんなに残業しても、残業代は定額」という制度ではありません。
固定残業時間を超過した場合には、超過分について残業代が発生します。

もし転職先候補の企業が固定残業代制を採用している場合には、超過時間についてきちんと残業代が支払われるかどうかを確認しておきましょう。

「名ばかり管理職」ではないか?

管理職としての転職を希望する方は、「名ばかり管理職」問題に注意する必要があります。

労働基準法41条2号により、「管理監督者」には残業代を支払う必要がないとされています。
しかし、すべての管理職が「管理監督者」に該当するわけではありません。

管理監督者に該当するのは、あくまでも経営者と一体的な地位・待遇・権限・裁量を与えられている従業員に限られます。
たとえば、店長や課長・係長などは、管理監督者に該当しないケースが大半と考えられます。

転職先候補の企業が「管理職だから残業代は支払わない」と主張してきた場合、その取り扱いが本当に正しいのかを検証すべきです。

不当解雇に関するチェックポイント

従業員を不当解雇するブラック企業かどうかを、転職段階で見極めることは難しいかもしれません。

それでも、以下のポイントについて情報収集を行い、できる限り不当解雇のブラック企業を避けられるように努めましょう。

契約・就業規則上の懲戒事由・解雇事由はどのような内容か?

従業員を解雇する場合には、原則として、契約・就業規則で定められた懲戒事由・解雇事由のいずれかが要件となります(整理解雇は例外)。

懲戒事由・解雇事由の内容を確認すれば、どのような行為をすると解雇され得るのかを把握できます。
解雇の対象となる行為があまりにも軽微なものであるなど、会社が従業員を簡単に解雇できるかのような規定になっている場合には、ブラック企業であることを疑いましょう。

過去にどのような理由で解雇が行われたか?

転職先候補の企業において、過去にどのような理由で解雇が行われたかを把握できれば、不当解雇を行うブラック企業への転職リスクを最小化できます。

過去の解雇については純粋な内部情報であるため、聞き出すことは難しいかもしれません。
しかし、もし従業員や元従業員と話をする機会があれば、教えてくれるように頼んでみるとよいでしょう。

まとめ

ブラック企業への転職を100%回避することはできませんが、事前の情報収集を行うことで、そのリスクを極力小さくすることは可能です。

転職活動を行う際には、労働法の観点を踏まえたうえで、違法な労務管理が行われているブラック企業を見極めるよう努めてください。


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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
HP:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw