会社を辞めるのは、実は怖くない

転職についての話を伺うと、少なくない数の転職未経験の方が「転職をしたいと思うことはあるが、怖くて踏ん切りがつかない」と語ります。

しかし、転職をすでに複数回している人に聞くと、「転職は面倒だけど、怖くはない。時間を無駄にするほうが怖い」と真逆のことを言うのです。

また、よく観察をすると、「転職」に限らず、仕事の中の様々な状況において、新しい経験に恐怖を強く感じる人と、そうでない人がいることもわかります。

いったいなぜ、このような差異が生じるのでしょう。

なぜ新しいことは怖いのか

これについては、「恐怖」がいったいどこから生まれるのかを理解する必要があります。

私がそれに気づいたのは、まさに初の「営業」をするときでした。
コンサルティング会社では、マネジャーになると営業業務をやらなければいけなくなります。

もちろん、案件の継続や、コンサルティングのクロスセルは、すべてのコンサルタントに課せられた職務であり、マネジャーになる前からやる必要があるのですが、マネジャーになると、全くの新規のクライアントを訪問し、営業する仕事が新たに割り当てられました。

とはいえ、新規の訪問は、緊張するものです。
会社の顔として、他社に訪問するわけですから、下手を打つわけにはいきません。

また、お客さんからの質問にたいして、私が失言してしまう可能性もあります。
「あの時、こう言ってたじゃないか」
「これくらいの金額っていわれたけど」
と、後から指摘されるのも、困ります。

その上、せっかくの引き合いを失注しようものなら、「あいつに営業を任せるわけにはいかない」と見られてしまうかもしれない。

そんな恐怖が、営業を任せられた時にはありました。

そこで私は、当時、営業を私に教えてくれていた方に尋ねました。
「営業ってどうしたら緊張しなくなるんですかね」と。

すると、先輩は言いました。
「営業で緊張するのは、意識が高すぎるからだよ」
「高すぎる?」

「失注しちゃいけない、上手くしゃべらなくちゃいけない、うまくプレゼンしなくちゃいけない、そんなことばかりを考えてると、緊張してしまうんだよ。
そもそも、失注しても、嫌われてもいいんだよ。そもそも営業という行為は、失敗のほうが多いから。
提案書を出したら、受注率は50%を目標としないとダメだけど、提案書を出さない客も含めると、受注率はたぶん2~3割じゃないかな。いや、もっと低いかも」

一見まっとうなことを先輩は言いました。
失敗が基本、というのは、私も「聞いて」はいました。

しかし、自分が失敗するというのは、話は別です。誰でも失敗したくはないのです。

そこで私は言いました。
「でも、やっぱり失敗したくはないです」

それを聞いて、先輩は言いました。
「その考え方は、危ういなあ」
「なぜですか?」

「だって、失敗しないということは、裏返せば、あたらしいことは何一つしない、ってことじゃない?重要なのって、”同じ失敗を何度も繰り返さない”であって、”失敗しない”じゃないよ」

それを聞いて、私は目から鱗が落ちました。

なるほど、「失敗しないようにする」というのは、新しいことを覚えようとしない態度、停滞につながる。一番まずいことだ、と。

むしろ「失敗」をどう扱うかが重要なのだと。
そう理解したのです。

それ以降、私は「失敗」のとらえ方を大きく変えました。

「失敗」とは、同じミスを繰り返すことだ、と。
「試してみて、どのような結果が返ってくるかを見て、同じことを繰り返さなければいいのだ」と考えるようになったのです。

そして、何より「一発勝負」の環境は、基本的にダメな環境であり、人を保守的にさせると考えるようになりました。

逆に「トライアル&エラー」を許される環境であれば、人は創造的、活動的になれる。
だから、できうる限り「再チャレンジ」が許される環境で勝負をしようと考えるようになりました。

「失敗できない状況」に追い込まれるのが一番怖い

同様のことが「会社を辞めること」についても、言えるのだと思います。
つまり「会社を辞める」ことを、恐怖に感じるひとは、それを一発勝負だととらえている。

受験や就職の失敗で思いつめてしまう人も、同様です。
「失敗できない状況」が、怖いのです。

しかし、人生において真に「失敗できないこと」というのは、原則的には「生死の判断」
しかありません。

死んだり、殺したりするのは、不可逆的であり、「再チャレンジ」ができませんが、
ほとんどの仕事は、生死にかかわるものではない。

そう考えれば、転職よりもむしろ、「車の運転」のほうがはるかに怖い。
私は運転は好きですが、基本的には転職などよりもはるかに「怖い」と感じながら運転をしています。なぜならば、場合によって「生死にかかわる」ことが、仕事よりもはるかに高い頻度で起きるからです。

でも、転職はそうではありません。

仮に1度の転職で、「合わない会社だな」と思ったら、再チャレンジすればよいのです。
また、「合わない」原因が自分にあれば、修正すればよいのですから、これも「一発勝負」ではない。

人間は、新しいことに挑戦をしないと、既存の環境に自分を合わせていくしかなくなります。
すると、ますます「失敗できない状況」に追い込まれる。

本当に怖いのは、「失敗」ではありません。「失敗できない状況」に追い込まれることです。
そう考えれば、会社を辞めるのは、実は怖くない。勇気も湧いてくるのではないでしょうか。


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【著者】安達 裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(http://tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。Twitter:安達裕哉