なぜムカつくと言われる?利用してわかった転職エージェントに足りないモノとは

もう20年程も前の話ですが、忘れられない転職活動の記憶があります。

結婚1年目で第1子を授かったばかりだった当時、まだ28歳だった私は務める会社の経営が頓挫し、無職になりました。

しかし貯金などほとんどなく、このままでは2ヶ月で生活費も尽きる・・・。

新婚早々、なかなかの人生の危機です。

もちろんすぐに転職・・・というよりも再就職活動を始めますが、そう簡単にはいきません。

私が役員を務めていたその会社は、当時IPO(株式の新規上場)本命銘柄とおだてられ、銀行系・独立系のVC(ベンチャーキャピタル)から、億を超える投資をして頂いていました。

そしてそのお金をお預かりし、運用する責任者である経営企画の担当役員として会社を溶かした形です。

いわば大きな仕事を、相当目立つ形で失敗した直後でした。

であれば、同じ経営企画責任者の立場で転職活動をしても、なかなか私を評価してくれる会社などないでしょう。

思いつめた私は、当社に出資してくれていたメインバンクの投資部長に会いに行き、泣きつきました。

「部長、ご迷惑をおかけした直後で申し上げにくいのですが・・・。ご投資先で私がお役に立てる会社をご紹介して頂けないでしょうか。」

「いろいろと大変でしたね。再就職活動は苦労すると思います。ところでこれからもまだ、同じようなポジションで仕事をしていきたいと考えているのですか?」

「はい、このまま逃げたくありません。」

「そうですか。満足できる会社は難しいかも知れませんね。」

「・・・自覚しています。」

「・・・わかりました。では、火中の栗を拾いに行くつもりはありますか?」

そういうと部長はある会社の決算書のサマリーを取り出し、説明を始めました。

B/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)を見る限り、どうみても経営破綻は免れない絶望的な状況の会社です。

「相当難しい仕事ですが、この会社で、経営の立て直しに取り組む意志はありますか?」

「・・・」

「さすがに即答できないと思います。2回連続で会社を潰したら、さすがにどうしようもないでしょう。でも、成功すればきっと、人生もキャリアも変わると思いますよ。」

「・・・少し考えさせて下さい。」

「わかりました。またご連絡下さい。」

もちろん部長の立場で言えば、私は「大損させられた投資先の担当者」です。

顔を見るのも腹立たしかったと思いますが、怒るでも呆れるでもなくただ淡々と、私の身の丈と立場にあったポジションを紹介してくれた形でした。

これが現実かと、28歳の若さで改めて、失敗の重さと飯を食う大変さだけが身に沁みたミーティングとなりました。

適材適所とはなにか

話は変わりますが転職エージェントという職業は、社会的にも個人の人生を左右するという意味でも、非常に重い責任を担っています。

しかしながら、日々の忙しさの中でともすれば、その重要性に想いが至っていない人を見かけることも少なくありません。

言うまでもなくこのサービスは、仕事を探している求職者からの登録を受け付け、企業が求める人材を紹介し、報酬を得ます。

転職が当たり前になった世相に加え、そのサービスを利用する人も事業者数も右肩上がりの事業と言えるでしょう。

その成長ぶりは、数字でも明らかです。

画像:厚生労働省「平成 30 年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」P6、P25
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000614248.pdf

しかし私はかつて、採用する立場で何度も転職エージェントのサービスを利用し、そのたびにがっかりさせられていました。

自分たちがどれほど重い責任を担い大きな仕事をしているのかについて、全く自覚が足りていない人が多いからです。

googleで「転職エージェント むかつく」とで検索すれば、採用側、求職者側の双方で、そのサービスに不満を持つ人が多いことがわかるでしょう。

「人を金にしか思って無さそうで信用できない」「合わない」「不快」など感情的な言葉が並びます。

そして私は、採用側からみてもこれら意見に概ね同意です。それはなぜか。

話は私が成長著しい中堅メーカーで経営企画担当の役員をしていた時のことです。

当時、事業の拡大につれて会社は従業員800名を超えるまでに増え続けていました。

しかし、街の中小企業から急に大きくなった会社では、拡大する事業を支えられる人材などいるものではありません。

そのため、大手の転職エージェントを通じ、経営幹部や事業部の幹部を募集することにしました。

しかしこの際、転職エージェントが連れてくる人材は

・大手商社で海外と大きな取引をしていた営業マン

・大手医療機器メーカーのやり手営業部長

・メガバンクを早期退職した元行員

といった、履歴書は素晴らしい、しかし的外れな人材ばかりでした。

なぜ的外れなのか。

これら経歴の方は、役割が分担され秩序が成立している大きな組織で、与えられた仕事をこなすことには確かに長けているでしょう。

しかし、成長する事業に合わせて自ら役割を変え、また混乱する現場を落ち着かせマネジメントすることが求められるニーズからは、まったく対極にいる人達です。

ストレスが大きな「0から組織と仕事を作ることができる幹部」とは、組織の大小に関わらず、そのような経験を実際にしてきた人でなければなりません。

であれば必要な人材は、仮に潰してしまったとしても起業経験のある元経営者か、あるいは新規事業の立ち上げを実際に担ってきた責任者です。

私はそのように説明し履歴書を突き返しますが、エージェントの担当者は、

「大きな会社になってきたら、大きな組織を運営したことがある経験者が役に立つんです。」

と、もっともらしい全く無関係な理屈で売り込んできました。

「これだけ優秀な人材はなかなかいません。数ヶ月で不適任と判断された場合、仲介手数料はお返しします。」

と、なかなか酷いセールストークまで繰り出してきます。

結局これら人材は、

「ダメだった場合でも、ウチにリスクは無いんだし、試してみよう」

という経営トップの判断で採用し、それぞれ各事業部などの仮責任者として任せてみることになりました。

しかし営業責任者を任せられた商社出身の幹部は、数字が伸びないことを株主から追求され、我慢しきれずに1年ほどで辞めてしまいます。

IPO(株式の新規上場)に詳しいということで入ったはずの元メガバンク行員は、自社の株価算定根拠すら説明できずやはり株主を怒らせ、こちらも長くもたずに会社を去りました。

結局、エージェント経由で採用した幹部社員はいずれも全く組織に貢献できず、短期間で会社を去った形です。

残念ながら、やはりミスマッチな仕事であったと言わざるを得ません。

転職エージェントとは、会社の状況を正確に理解し、求められる人材をアサインすることが求められる仕事です。

並大抵の難しさではないでしょう。場合によっては、その会社の社長以上に、会社の人事を把握する能力が求められるからです。

しかし多くのエージェントでは、そのような能力を持ち合わせている担当者がほとんどいません。

さらに熱意も誠意も無く、

「不適任だと判断された場合、仲介手数料はお返しします。」

などと言ってしまうようであれば、もはやその会社の成長に興味がなく、「人事は当て物」と言っているようなものです。

転職エージェントに求められる資質は、まず第一に「成長の伴走者である」という熱い想いにほかなりません。

それすら持ち合わせていない会社や担当者であれば、いずれ「転職エージェント むかつく」という検索結果に、自社の名前が出てくることになるのは目に見えています。

転職エージェントに求められるものとは

話は冒頭の、私の転職のお話についてです。

私は結局、その潰れそうな会社の役員を引き受けることにしました。

そして一通りの立て直しに成功し、事業を拡大させ、転職エージェントを使い幹部社員を求めるまでに成長させることができました。

上記のお話の会社です。

このお話で一番凄いのは、私を同社に紹介してくれたメインバンクの投資部長であり、適材適所を見抜く力です。

私はベンチャー企業の若手経営者として一つ会社を潰し、路頭に迷いかけていたただの無職でした。

しかし私の仕事や能力を客観的に観察し、理解していた部長は、一度損をさせられたにも関わらず、別の投資先に斡旋してくれたのです。

私のポテンシャルが最も活きる、これ以上はない混乱しきった潰れかけの会社でした。

私はその会社の立て直しを通じ、自分でも気がついていなかった適性に気付かされ、

「成功すればきっと、人生もキャリアも変わると思いますよ。」

という部長の予告どおりになりました。

同部長はもう定年退職されてしばらくお会いしていませんが、今でもとても、足を向けて寝られない大恩人です。

そしてこれこそが、転職エージェントに本来求められる、本当の役割ではないでしょうか。

最後に

私が転職エージェント事業を営む皆様に、この経験を通じてお伝えしたいことは、以下のとおりです。

(1)求職者の人生を決めるという想いと覚悟を

転職エージェントとは、求職者という一人の人間の人生に大きく関わる仕事であり、とても重い責任のある仕事です。

確かに、エージェントにとって求職者は「商品」という側面もあるかも知れません。

しかしそれならそれで、どんな世界でも、本当に良い仕事をする人は自社の商品を心から愛し、知り尽くしているものです。

それはエージェントであっても、決して例外ではないのではないでしょうか。

(2)経営者以上に会社を知る努力を

求職者を会社に紹介する以上、紹介先の企業について深く知りえていることも、最低限の条件です。

経営者から頼りにされないエージェントの担当者は、求職者をクライアントに紹介することそのものをゴールと考えて、仕事をします。

しかし会社は、その人材を雇用するところがスタートです。

であれば、エージェントにとっての「成功」とは紹介そのものではなく、その人材が転職先で十分に活躍することであると言えるでしょう。

そのためには、時に経営者以上に会社を知る努力を傾ける必要があるのではないでしょうか。

(3)何よりも真摯さを大事に

近江商人には、「三方良し」という言葉があります。

すなわち「売り手よし 買い手よし 世間よし」という心構えを説いたものですが、私の事例でご紹介した投資部長はまさに、売り手(部長、私)よし、買い手(会社)よし、世間よし(事業の成長)を実現しました。

求職者(私)と会社の成長を真摯に、心から願ってくれていたからこその結果だと言えるでしょう。

転職エージェントに対する不信感がネットにあふれている中では、そんな「アタリマエの真摯さ」を徹底するだけでも、きっと無敵の競争力を発揮するはずです。


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