USPとは?転職エージェントの生き残りのために必要な「独自性」を考えよう

競合が多い中、規模の小さな事業所が生き残っていくことは容易ではありません。
ひたすらシェアを奪い合っていく消耗戦ともなると、小さな事業所は不利になります。

しかし、そのような中でも顧客を獲得し、注目を集めているところもあります。

顧客獲得の決め手となるものとは、一体何なのでしょうか。

オンリーワンの存在になることの重要性

今や多くの企業が、少子化による国内市場の縮小や、AIなどの技術革新の影響により、変革を余儀なくされています。
そのような中、一つの会社に定年まで勤めるという考え方は無くなっていき、今や誰でも転職を経験するのは当たり前の時代になってきました。

この流れは、転職を支援するエージェントにとっては大きなプラス要素です。
今後も、次世代通信技術や自動運転などの流れを受けて、デジタル人材の争奪戦が激しくなるものと予想されます。

追い風が吹く転職業界ですが、そのようなビジネスチャンスのある市場には多くの業者が参入してくるものです。

厚生労働省の統計によると、令和2年度における有料職業紹介事業所の数は、全国で26,208事業所もあります。*1
これを見るとかなりの数であり、多くの事業所は従業員数が数人程度のところがほとんどであると考えられます。

このような多くの事業者がひしめき合っている状態で、自社の転職支援サービスのことを認知してもらうのは容易なことではありません。

先ほどの厚生労働省の統計では、就職実績があった有料職業紹介事業所は、12,288事業所となっています。
これをもとに計算すると、令和2年度において有料職業紹介事業所のうち約53%は、就職実績がゼロだったということになります。

多くの人が転職を考えた際に思い浮かべるのは、ほとんどの場合、大手の転職エージェントばかりです。
市場規模が大きくなってきても売上を出せないところがあることを考えると、大手のエージェントに依頼が集中している様子がうかがえます。

募集企業や求職者側にとっては、名前も聞いたことがないようなエージェントに頼ることにはメリットを感じにくいものです。
そうなると、どうしても安心感のある大手に流れこんでしまい、中小の事業者は太刀打ちすることが難しくなってしまいます。

だからこそ規模の小さい事業者は、大手にはない何らかの強みを持つことが必要になってきます。

独自性を出すのに必要なUSPとは

独自性を出すうえで意識しておきたいのが、USP(Unique Selling Proposition)です。
USPとは、自社だけが持つ強みを指します。
単に他とは違ったものであればいいというわけではなく、自社だけが提供できるもので、顧客が価値を感じるものであることが重要です。

数多くのエージェントから選んでもらうためには、「このエージェントでないとダメだ!」と思ってもらえるようなものが必要です。
そのためには、ここだけのサービスという独自性が重要になってきます。

USPを持つことの最大のメリットは、たとえ事業所の規模が小さかったとしても選んでもらいやすくなることです。
他に選択肢がないという状態になれば、選ばれるのは確実です。

募集企業や求職者にとって、多くのエージェントの中からどれか一つを選び出すというのは、負担の大きいものになります。

一般的に人は、選択肢が増えすぎてしまうと急いで決定しなければならない場合を除いて、無意識のうちにどれも選ばないという選択をしやすくなります。
こうした心理的傾向は「決定回避」と呼ばれ、選択肢の数が多くなるほど起きやすくなるとされています。*2

その一方で、USPが明確で、それが募集企業や求職者のニーズを満たすものである場合、迷う必要というのが無くなります。
そうなると、選んでもらえる確率が高くなります。

USPを考えるうえで大事なのが、ターゲットとなる相手を絞り込んで明確化することと、その相手が満足するような価値を提供できるようにすることです。

ターゲットがはっきりすることで、そのターゲットを一番満足させるサービスをどのようなものにすればいいのかということが見えてきます。

独自の強みを持つことで成功した事例

具体的に、USPをどのように打ち出していけばいいのでしょうか。
ここでは独自性を出して成功した事例を二つご紹介します。

個性的な車で顧客の心をつかむ光岡自動車

光岡自動車は富山県に本社のある自動車メーカーであり、中古車・輸入車ディーラーでもあります。日産のディーラーであった光岡進氏が1968年に創業しました。従業員数はグループ全体で480人ほどの小さな会社です。中古車販売事業からスタートし、1987年には日系メーカーの市販車をベースとした「ファッションカー」事業に進出しました。*3

大手メーカーから完成済みのベース車を仕入れて分解し、改造することで生産を行っています。

近年では、アメ車のような外観の「Buddy(バディ)」が人気を博し、当初は4年かけて達成するはずだった目標販売台数をわずか1年で超えるほどでした。

今までありそうで無かったものを形にすることで、希少性や個性を大切にするユーザーのニーズにうまく対応できたのがヒットの要因と考えられます。

自動車と言えば、多くの人はトヨタや日産、スズキなどの大手メーカーを思い浮かべる人が多いはずです。
そのような中で光岡自動車は、みんなと同じ車に乗るのではなく個性を大切にしたいという人に焦点を当て、そのような人のニーズを叶える唯一の存在として成功した事例と言えます。

ローコスト理髪店のQBハウス

QBハウスは、1,000円カットで広く知られています。最近では1,200円に値上げしたものの、客足が遠のくことはなく、絶好調を維持し続けています。

単なる安売りでは、すぐに同業他社にマネされてしまい、競争に巻き込まれてしまいます。

しかし、QBハウスでは店舗の多くは駅中や駅の周辺、ショッピングセンターの中にあり、9割の店舗では競合が不在の状態です。
そのような状態を維持できるのは、QBハウスが鉄道会社やショッピングセンターのオペレーターと良好な関係を築けているからです。*4
このことが圧倒的な強みにつながっています。

競合がいないだけでなく集客にも有利な立地であり、そのため広告費も削減できます。

特徴的なのが、独自の「ヘアカットの学校」の運営です。
ライセンスを持ちながら理美容業界から離れてしまった人を再教育することで雇用につなげ、教育コストの削減や従業員のスキル確保につなげています。

このようにQBハウスは、競合他社が簡単にマネできないような独自の仕組みを作り上げることで、ローコスト理髪店としての圧倒的な地位を確立しました。

カット時間が10分と短いため、電車の待ち時間や、買い物ついでに立ち寄ることができ、忙しくてカットする時間がなかなか取れない人の問題解決につながっています。
また、髪型を維持したままちょっとだけ短くカットしたいという顧客のニーズにも応えています。
これらのことが独自の価値提供につながり、成功した事例と言えるでしょう。

アイデアに迷った時は同じような状況の異業種を参考に

いきなりUSPを考えるといっても、難しく感じる方も多いのではないでしょうか。
自社だけが提供できる価値といっても、すぐに見つからないことも多いものです。

USPを考えるには、異業種で同じような状況に置かれているところがヒントになります。
どのように独自性を出して乗り切っているのかを見れば、何かアイデアが得られるかもしれません。

参考になりそうなのが、美容業界です。
厚生労働省の統計では、令和元年末の時点において、理容所の数が117,266施設なのに対し、美容所は254,422施設と、およそ2倍です。*5

引用)「令和元年度 衛生行政報告例の概況」厚生労働省、P6

統計データを見ると、理容所は少しずつ減ってきているのに対し、美容所は逆に増えてきています。
これだけ多いと過当競争になってしまい、生き残るためにユニークなサービスを提供するところも出てきています。

先ほどのQBハウスは理容所におけるUSPの事例ですが、身近で人気のある美容院を探してみれば、何かヒントになりそうなことが見つかるかもしれません。

美容業界以外にも、コンビニよりも多いと言われている歯科医院や、司法制度改革の影響で増え過ぎてしまった弁護士など、過当競争になってしまっているとされる業界というのは他にもあります。

そんな競争の激しい業界で、規模が小さいながらも継続して事業をやっていけているところを探してみて、一度参考にされてみてはいかかでしょうか。


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【エビデンス】
*1 「令和2年度 職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」厚生労働省、P2
*2 「知識ゼロからの行動経済学入門」川西諭著、P38,39

*3 「Buddyが大ヒット「光岡自動車」はどんな企業か」東洋経済ONLINE
*4 「QBハウス”1000円やめても絶好調”のワケ」PRESIDENT Online
*5 「令和元年度 衛生行政報告例の概況」厚生労働省、P5


【著者】黒田 貴晴
キャリア系マーケター、心理カウンセラー脳科学や心理学に強いマーケターとして、主にキャリアに関する分野で活動しているほか、心理カウンセラーとしても、コミュニケーションに問題を抱えた方へのサポートも行っています。就職・転職系のメディアやビジネス心理学のメディアでの執筆実績多数。