人材紹介事業のビジネスモデル|基礎知識から近年の動向まで解説

人材紹介業界への新規参入を検討している方々の中には、「人材紹介事業のビジネスモデルを知りたい」「近年のトレンドを把握したい」と思っている方も多いでしょう。

本記事では、人材紹介事業のビジネスモデルについて詳しく解説しています。メリット・デメリットや近年の動向にも触れているので、人材紹介事業の立ち上げを検討されている方はぜひ参考にしてください。

人材紹介事業のビジネスモデルとは

人材紹介事業(職業紹介事業)のビジネスモデルは、事業者が求人者(企業)と求職者の間に入り雇用関係の成立を斡旋し、紹介手数料などによって利益を得る仕組みです。

例えば求職者に職を斡旋する「エージェント」やインターネット上で仕事を発注・受注できる「クラウドソーシング」なども、人材紹介事業のビジネスモデルの一種に位置付けられます。

ただし人材紹介事業で収益化できる手数料にはいくつかの条件や規定があり、収益が発生する事業を立ち上げる際には、厚生労働省への届出が必要です(*1)。

*1(参考)厚生労働省「職業紹介事業制度の概要

人材紹介事業のビジネスモデルにおける収益構造

人材紹介事業で得られる主な収益は、仲介した求人者と求職者との間に雇用関係が成立した際に受け取る紹介手数料です。

受け取れる手数料の種類や金額の上限は職業安定法によって定められていますが、芸能家やモデルなど一部の職種を除き、求職者からは手数料を徴収してはならないことが大原則です(*1)。

つまり人材紹介事業における収益は、原則として求職者ではなく求人者から得なければなりません。言い換えれば、求職者が無料で利用できるシステムを提供することになります。このようなビジネスモデルで収益を上げるには、適切な手数料設定で求人数を確保しつつ、求人内容にマッチする求職者をいかに集めるかがポイントです。

なお、手数料設定も含め、人材紹介事業を立ち上げる際には厚生労働省からの許認可を受ける必要があります。許認可の仕組みや禁止事項については、以下の記事を参考にしてください。

*1(参考)厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」p.82

人材紹介事業の運営に関わる経費

人材紹介事業の運営に関わる固定費と変動費について解説します。

固定費

固定費とは、事業を運営するうえで継続的にかかる費用です。人材紹介事業を運営する際には、少なくとも以下のような固定費が発生します。

・オフィスの賃料
・従業員を雇う場合の人件費

これらの固定費は会社の規模や従業員数、拠点を置く地域によって増減します。

固定費を抑えたい場合、例えば比較的賃料の安い地方にオフィスを構えながら、オンラインで全国向けに事業展開する方策などが考えられるでしょう。近年ではICT環境が整備されつつあるため、出社人数を最低限に抑えオフィスをコンパクト化する方策なども現実的です。

とくに起業初期など収益が不安定な時期は、固定費を最小限に抑える財務施策を検討することで、無理のない資金繰りを行いましょう。

変動費

変動費とは事業運営にかかる諸経費のうち、販売量や売上によって変動しうる費用です。人材紹介事業では、以下のような変動費を想定する必要があります。

・Webサイトの保守・運用費
・求職者を集めるための広告費
・求人者を集めるための営業費

変動費を最適化する方策はいくつか考えられます。

例えば、変動費が関係する業務を外注化することで、事業が安定しやすくなります。変動費を外注にしておくことで、売上が低迷した場合にコスト削減がしやすくなるためです。

事業規模を考慮しながら変動費にかけるリソースを定期的に見直すことで、スムーズで無駄のない資金繰りにつなげましょう。

人材紹介事業におけるサービス提供モデル3例

人材紹介事業のサービス提供モデルは大きく分けて3つあります。

・マッチング型
・ヘッドハンティング型
・アウトプレースメント型

ここでは人材紹介事業における代表的なサービス提供モデルをご紹介します。

マッチング型

マッチング型とは、事業者が求人条件と求職条件を照合し、求人者と求職者をマッチングするサービス形態です。「一般紹介・登録型」とも呼ばれます。

例えば、インターネット上で仕事の受注・発注ができるクラウドソーシングサービスなどはマッチング型のサービス提供モデルです。

マッチング型のサービス形態では、次のような業務が発生します。

・マッチングサイトの保守・運用
・紹介案件の量と質の管理
・利用者間のトラブル仲裁業務

など

マッチング型のメリットは、比較的少人数で運営しやすい点です。事業形態にもよりますが、インターネット上で使えるマッチングアプリやマッチングプラットフォームを整備することで、業務の一部または大半を自動化できます。

そのため、起業メンバーにWebエンジニアなどテック系の人材が多い場合にはマッチング型からスタートするのもおすすめです。

ヘッドハンティング型

ヘッドハンティング型とは、求人データベースやSNS等を駆使し、求人条件に合う人材を探し出すサービス形態です。

例えば、就職や転職のサポートを行うエージェントサービスなどはヘッドハンティング型のサービス提供モデルです。

ヘッドハンティング型のサービス形態では、次のような業務が発生します。

・人材の発掘調査
・求職者への職の斡旋
・待遇交渉の代行
・採用率を上げるためのサポート

など

ヘッドハンティング型のメリットは、マッチング1件あたりの報酬額(手数料)が比較的高額である点です。例えば転職エージェントの紹介手数料は、斡旋した人材の想定年収の30~35%程度が相場となっています。

採用率を上げるためのサポート業務など、1件あたりにかかるリソースはかさみますが、その分マッチングが成功した場合のリターンが大きいのが特徴です。

ヘッドハンティング型は、優良な求人と優秀な人材を見つけ出す嗅覚や業界経験値が売り上げを大きく左右しうるサービス形態といえます。そのため人材紹介業界や人事部門で働いた経験がある方や、対人交渉が得意な方におすすめです。

アウトプレースメント型

アウトプレースメント型とは、企業からの依頼を受け、退職予定者の再就職先を斡旋するサービス形態です。

例えば、法人契約の再就職支援サービスなどはアウトプレースメント型のサービス提供モデルです。

アウトプレースメント型のサービス形態では、次のような業務が発生します。

・求人開拓
・退職予定者への職の斡旋
・選考から再就職に至るまでのフォローアップ

など

なお、アウトプレースメント型では求職者(=退職予定者)と求人者(=再就職先となりうる企業)に加えて、依頼主(=退職者を募る企業)を含む、3者の利益を最大化するための仲介が必要です。この点において、アウトプレースメント型は前述のマッチング型やヘッドハンティング型と比較して複雑なサービス形態といえます。

人材紹介事業のビジネスモデルのメリット

人材紹介事業のビジネスモデルのメリットは大きく分けて3点あります。

・原価率が良い
・少額の投資で参入できる
・事業規模に関わらず参入できる

それぞれ詳しく解説していきます。

原価率が良い

第1のメリットは、原価率が良い(低い)点です。原価率とは、売上高を100%としたときに原価が占める割合を指します。

人材ビジネスの中でも人材派遣事業の場合、職業訓練などを求職者に提供する必要があるため、その分の原価がかかる点がデメリットです。一方、人材紹介事業では求人者と求職者のマッチングが成立しさえすれば報酬が発生します。そのため原価がほとんどかかることなく、利益を出しやすい側面があります。

ただし後述するように、人材紹介事業は成功報酬であるため、マッチングを成立させ続ける企業努力が問われる点にも留意しましょう。

少額の投資で参入できる

第2のメリットは、少額の投資で参入できる点です。

人材紹介事業(有料職業紹介所)を立ち上げるための厚生労働省の資産要件は、500万円以上です(*1)。

人材派遣会社(労働派遣事業)の資産要件が2,000万円以上(*2)であることを考慮すると、人材紹介事業は比較的少額の初期投資から始められます。

*1(参考)厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」p.21
*2(参考)厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領]p.82

事業規模にかかわらず参入できる

第3のメリットは、事業所の規模にかかわらず参入できる点です。

厚生労働省が定める「有料職業紹介事業の許可基準」によれば、以下の条件を満たす事業所であれば人材紹介事業に参入することが可能です(*1)。

・職業紹介事業に使用し得る面積が、おおむね20平米以上
・インターネットにより対面を伴わない職業紹介を行う場合については、面積の大小を要件としない

つまり、インターネット上で展開する非対面ビジネスであれば、事業所の大きさにかかわらず参入できるのです。

また対面ビジネスであったとしても、ワンルームほどの広さの事業所があれば事業をスタートすることが可能です。

*1(参考)厚生労働省「有料職業紹介事業の許可基準」p.4

人材紹介事業のビジネスモデルのデメリット

人材紹介事業のビジネスモデルのデメリットは大きく分けて3点あります。

・収益安定までに時間がかかる可能性がある
・クライアントの確保が難しい
・継続的な取引が難しい

それぞれ詳しく解説していきます。

収益安定までに時間がかかる可能性がある

第1のデメリットは、収益安定までに時間がかかる可能性がある点です。人材紹介事業の利益は成功報酬であり、マッチングが成功しない限りは利益が上がりません。

そのため、事業を立ち上げてから収益が安定するまでにはある程度の時間を見ておく必要があります。収益が安定するまでの資金繰りも検討しておく必要があるでしょう。

収益を早期に安定させるためには、事業認可が降り次第「求人開拓」と「求職者の集客」の2軸を急ピッチで進めることが重要です。

それと同時に、収益安定までに時間がかかることを想定のうえ、起業当初はコンパクトな事業形態でスタートするのがおすすめです。例えば、起業当初は必要最低限の人数でワンルームほどの小さなオフィスからスタートし、収益の拡大に合わせて事業所を徐々に拡大していくビジネスプランは選択肢の一つです。

前述の通り、人材紹介事業は事業所の規模が小さくとも参入できる点が特徴です。そのメリットを前向きに活かしましょう。

クライアントの確保が難しい

第2のデメリットは、新規参入時にクライアントの確保が難しい点です。

人材紹介事業は信頼関係がとくに重視される業種であり、求人者や求職者は実績が豊富な既存サービスを利用したいと考える傾向にあります。

起業初期はとくに、サービスの認知度を上げるための広報・マーケティング面に力を入れることで、集客に繋げることが大切です。

継続的な取引が難しい

第3のデメリットは、クライアントとの継続的な取引が難しい点です。

人材紹介事業の場合、マッチングが成立した時点で取引が完了します。サービスの性質上、同じクライアントから継続して依頼があるとは限らないため、安定的な収益化が難しい側面があります。

そのため、新規顧客を獲得し続けるためのマーケティング施策が重要です。例えばSNS広告を活用するなど、不特定多数の潜在顧客に広く浅くリーチできるような施策を検討しましょう。

人材紹介業界の動向

人材紹介業界を取り巻く近年の動向について、2つの切り口から解説します。

・市場規模は拡大している
・人材紹介サービスの利用者は増加傾向にある

市場規模は拡大している

人材紹介業界に参入する事業者は増加しており、市場規模は拡大しています。

例えば矢野経済研究所の調査によると、人材紹介事業の市場規模は2021年度に2,960億円(前年度比17.5%増)に達しています(*1)。市場規模が拡大する背景には、前述のように、人材紹介業界に参入する際のハードルの低さが関係していると推測されます。

誰でも参入しやすいが故に新規参入者が多く、競争率が激しい業界であるという点は参入前に考慮するべきです。

*1(参考)矢野経済研究所プレスリリース「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2022年)

人材紹介サービスの利用者は増加傾向にある

厚生労働省の統計資料によると、令和3年度に人材紹介サービスを利用した方の求職件数(新規求職申込件数)および求人件数(常用求人数)は、いずれも増加傾向にあります(*1)。

(*1)

(*1)

参入者が多く競争率が激しい業界である一方で、サービスを利用する人も増加傾向にある点を考慮すると、人材紹介業界の市場としての将来性は十分にあると考えられます。

*1(参考)厚生労働省「令和3年度職業紹介事業報告書の集計結果」p6. p.9

人材紹介事業を立ち上げるならビジネスモデルを押さえておこう

本記事では人材紹介事業のビジネスモデルの基礎知識を紹介しました。

人材紹介は「求人開拓」と「求職者集客」の両輪を進めるバランス感覚が問われるビジネスですが、比較的参入のハードルが低く、原価率が良いというメリットがあります。

利益を上げるためのビジネスモデルは業界によって多種多様です。人材紹介業界への新規参入を検討している方は、この記事で紹介したビジネスモデルを押さえながら、ぜひ有意義な事業計画を立ててください。


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