人材紹介業で失敗しやすいパターンとは?独立準備・集客・営業に分けて解説

人材紹介業は新規参入時の要件が比較的少ないことから、独立・開業しやすい点が魅力です。その一方で、全ての事業が成功するとは限らず、失敗する事業もあります。

「具体的に、どんなことをすると失敗するのか知っておきたい」と思う方は多いでしょう。

本記事では、以下の内容をまとめています。

・人材紹介業で失敗しやすいパターン
・人材紹介業を軌道に乗せるコツ

人材紹介業での独立を検討している方の開業準備や、現在開業中の方のリスクマネジメントの一環として、本記事をお役立ていただければ幸いです。

人材紹介業界の最新動向

平成9(1997)年の「職業安定法施行規則改正」による規制緩和以降、人材紹介業界への新規参入数は右肩上がりに増加しています。

厚生労働省が発表した最新の統計資料によると、全国にある人材紹介事業所(有料職業紹介事業所)数は、令和4(2022)年度時点で28,740所(対前年度比3%増)です。(*1)

手数料収入額で算出した場合の市場規模は、コロナ禍が始まった令和2(2020)年には約5,240億円(対前年度比10%減)に落ち込みましたが(*2)、令和3(2021)年時点で約6,315億円(対前年度比 20.5%増)まで持ち直し、過去最高水準の手数料収入額を記録しています。(*3)

今後、人材紹介業界の更なる発展が期待されます。

*1(参考)厚生労働省「民営職業紹介事業所数の推移
*2(参考)厚生労働省「有料職業紹介事業に関する手数料収入の推移
*3(参考)厚生労働省「令和3年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)

人材紹介業での失敗は情報不足が主な原因

前述の通り、人材紹介業界は右肩上がりの業界ですが、すべての事業が成功するとは限りません。

例えば東京商工リサーチの統計調査によると、2023年1月〜7月の「職業紹介・労働者派遣業」の倒産数は、過去10年間で2番目に高い水準(48件)であったと報告されています。(*1)

人材紹介業に限った話ではありませんが、ビジネスで失敗する原因のひとつは、情報不足です。業界内で共有されている情報やノウハウを知らない状態で手当たり次第に事業を進めていくのは、一般的にリスクの高い行為と言えるでしょう。

とくに人材業界は競合が多いため、業界情報の収集が重要な意味を持ちます。競合が多い分、先人の失敗経験や失敗しないためのノウハウがすでに蓄積しているためです。

もちろん「こうすれば必ず成功する」という方法は存在しませんが、事前に情報収集をすることで、失敗のリスクを軽減することは可能です。

そこで次章では、人材紹介業で失敗につながりやすいパターンを具体的に解説します。

*1(参考)東京商工リサーチ
人材関連業(紹介・派遣)の倒産 9年ぶり高水準 強まる売り手市場、小・零細企業は人材不足で逆風

【独立準備編】人材紹介業で失敗につながりやすいパターン

人材紹介業の開業準備段階で失敗につながりやすいパターンは、以下の3点です。

①余剰資金が少ない状態で開業する
②サービス領域が絞り込まれていない
③短期間で収益化しようとしている

ひとつずつ解説します。

①余剰資金が少ない状態で開業する

資金に余裕がない状態で人材紹介業を開始するのは危険です。その理由として、人材紹介業は基本的に成果報酬型のビジネスモデルである点が挙げられます。

顧客企業との間で締結される「人材紹介基本契約書」の手数料規定にもよりますが、基本的にマッチング(内定)が成立するまでは報酬(手数料)を受け取れません。一般的に、職の斡旋から報酬確定までに1件あたり最低2〜3ヶ月はかかります。最悪の場合、売り上げがまったくない期間が数ヶ月続くリスクがあるのです。

対策として、売り上げがゼロでも数ヶ月は事業を継続できる程度の資金を貯めたうえで開業しましょう。

余剰資金を貯めると同時に、経費を抑える工夫も大切です。例えば通信費やオフィスの賃借料などは毎月固定費として発生します。複数の業者に相見積もりを取るなどして固定費の削減に努め、余剰資金だけで数ヶ月間やりくりできるような予算計画を立てるのが理想的です。

場合によっては、銀行からの融資や助成金制度を活用することも検討しましょう。人材紹介業の起業準備の流れについては、以下の記事でより詳しく解説しています。

②サービス領域が絞り込まれていない

2つめは、サービス領域が絞り込まれていないまま開業するパターンです。

人材紹介業界では、他業界以上にポジショニング戦略が重要な意味を持ちます。競合数が多いレッドオーシャン市場であるため、サービス領域が明確化されていない状態で広く浅く集客を始めてしまうと、求職者が集まらない恐れがあります。

対策として、事業立ち上げ段階で「何を売りに展開するか」「誰をターゲットにサービスを展開するか」をある程度絞り込み、それに合わせたマーケティング戦略を策定することをおすすめします。

例えば、以下のような差別化戦略が考えられます。

  • 「職種」による絞り込み(IT人材、介護人材、グローバル人材など)
  • 「属性」による絞り込み(子育て世代、団塊世代、留学生など)
  • 「働き方」による絞り込み(派遣、副業、リモートワークなど)

上記の要素を掛け算することにより、サービスの独自性をさらに打ち出していくことも可能でしょう。人材紹介業における差別化戦略や集客方法については、以下の記事にてより詳しく解説しています。

③短期間で収益化しようとしている

前述のように、人材紹介のビジネスモデルでは、求職者と求人先企業の間のマッチングが成立するまで売り上げが確定しません。そのため、短期間で収益を得る見通しで開業すると、失敗につながりやすいです。

とくに転職エージェントの場合、すぐにマッチングが成立に結びつくわけではなく、求人先での書面審査や面接などに最低でも数週間〜数ヶ月の期間を要します。数ヶ月経ってから不採用が決まり、まったく報酬が得られない場合もあります。

対策として、独立準備中〜開業直後は売り上げを出すことよりも、収益を安定するための「土台作り」に力を入れるとよいでしょう。より具体的には、求人サイトやSNS、スカウトメールなどの広報チャネルの整備、求人案件および求職者の母数獲得などが挙げられます。

人材紹介の収益構造については、下記の記事にてより詳しく解説しています。

【集客編】人材紹介業で失敗につながりやすいパターン

求職者を確保(集客)する段階で失敗しやすいパターンとして、以下の3点が挙げられます。

①定型文のスカウトメールを複数人に送信している
②集客方法が固定化されている
③効果測定をしていない

ひとつずつ解説します。

①定型文のスカウトメールを複数人に送信している

集客で失敗しやすいパターンの1つめは、スカウトメールを送信する際に定型文を使用するパターンです。

スカウトメールとは、求人サービスに登録している求職者に求人情報をメールすることで、マッチングにつなげる集客方法です。

少子化による労働人口の減少を背景に、優良人材の確保が一段と難しくなっており、何十通ものスカウトメールを受け取っている求職者も増えています。そのため、定型文を複数人に送信しても、求職者の目に止まりにくいのが実情です。

対策として、定型文を一斉送信するのは避け、アプローチする求職者の属性に合わせてスカウトメールの文面を変えることをおすすめします。優秀な人材をスカウトメール経由で採用するには、求職者にまずはメールを開いてもらうための工夫が必須です。

スカウトメールの書き方については、以下の記事にてより詳しく解説しています。

②集客手法が固定化されている

2つめは、集客手法が固定化されているパターンです。

人材紹介業に限った話ではありませんが、集客の分野は変遷のスピードが速く、新しい手法やサービス、トレンドが日々生まれています。例えば、集客チャネルを特定のSNSに一本化している場合、プラットフォームの仕様変更によって、突然うまくいかなくなる可能性もあります。

対策としては、一つの集客手法や集客チャネルに依存しすぎず、さまざまな集客チャネルをバランスよく利用することが大切です。

例えば、スカウトメールや求人広告の掲載、SNS、オウンドメディア運営など、複数の集客チャネルを持っておくことで、リスクの分散につながります。

人材紹介業における集客方法については、以下の記事にてより網羅的に解説しています。

③効果測定をしていない

集客施策を実施したものの、適切な効果測定をしていないために、得られるはずの集客効果が十分に得られていないケースがあります。偶然うまくいくケースもありますが、その勝因を正しく分析できていないと、せっかく得られた集客効果を維持できない可能性があります。

対策として、集客チャネルごとに集客数を記録し、改善の余地がないかを定量的に検討することをおすすめします。集客効果に関するデータは、より長期の戦略を考える際の資料としても有用です。仮説検証やPDCAを回しながら、勝率の高い集客を見極めます。

勝率の高い集客チャネルに予算を集中的に投下することで、費用対効果の高い集客につなげましょう。

【営業編】人材紹介業で失敗につながりやすいパターン

顧客(求人先企業)開拓のための営業を実施する段階で失敗しやすいパターンとして、以下の3点が挙げられます。

①営業先に偏りがある
②採用ニーズの分析が足りていない
③マッチングを待っている企業に求職者を紹介しない

ひとつずつ解説します。

①営業先に偏りがある

営業で失敗しやすいパターンの1つめは、営業先企業のジャンルに偏りがあるパターンです。

自社のサービス領域を絞り込むことは差別化戦略として必要ですが、特定領域の企業だけに集中して営業すると、取り扱う案件に偏りができてしまいます。結果として、マッチングできる案件数が少なくなる恐れがあるのです。

対策として、サービス領域は絞りつつ、求人案件は幅広く確保することが重要です。多様な求職者のニーズに合う求人情報を提供できるように、営業先を絞り込み過ぎないようにしましょう。

②採用ニーズの分析が足りていない

2つめは、営業先の「採用ニーズ」を十分に把握していないパターンです。

例えば営業先の予算状況・事業規模・ブランドの方向性などのニーズを分析できていないと、的外れな営業となる可能性があります。

対策として、営業先企業のホームページやプレスリリース、有価証券報告書などにあらかじめ目を通し、採用ニーズを分析することが大切です。

「能力・スキルが高い」「人柄が良い」「意欲がある」などの一般的なニーズに留まらず、その企業・業界ならではの事情や言語化されていないニーズを汲み取りながら、営業を進めることが成功の秘訣といえます。

採用担当者や管理職の目線で採用ニーズを推測してみるのもおすすめです。

人材紹介業における営業のコツについては、以下の記事にてより具体的に解説しています。

③マッチングを待っている企業に求職者を紹介しない

3つめは、マッチングを待っている顧客に対し、なかなか求職者を紹介しないパターンです。

人材紹介業では、求人案件を確保しただけでは収益が得られません。営業が成功し人材紹介契約を無事締結した後に、実際にマッチングが成立することで、初めて収益を得られるのです。

顧客(取引先企業)のニーズは自社で優良人材を採用することであるため、人材を紹介してもらえない状態が長引くと、良好な関係が長続きしません。

対策として、求職者の応募が集まりやすい(=マッチング確率が高い)求人を持つ企業を見極めながら、営業を進めることが重要です。そのうえで、マッチングが成立しやすい(=求職者のニーズが高い)求人案件を持つ企業に対し、優先的にアプローチするとよいでしょう。

求人企業側のニーズと求職者側のニーズの両方を汲み取りながら、適任者同士をつなぐ力量が人材紹介業の難しさであると同時に、やりがいであるともいえます。マッチング成否の見極めに関してはある程度の経験値が必要ですが、事業を進める過程で試行錯誤しながら得る経験が活かされるはずです。

求人案件の確保が難しいときは、マイナビが運営する求人データベース「マイナビJOBシェアリング」を活用するのも選択肢のひとつです。

人材紹介業での独立・開業は長期目線での戦略が重要

人材紹介業界での独立・開業時に知っておくべきポイントを解説しました。人材紹介業は競争率の激しい業界ですが、右肩上がりで成長し続けている業界でもあります。

本記事でお伝えしたようなポイントに留意しつつ事業を軌道に乗せていけば、大きなリターンを得られる可能性は十分にあるでしょう。

マイナビでは人材紹介事業の立ち上げに役立つさまざまなノウハウやツールを提供しています。集客・営業にぜひご活用ください。


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