リスキリングはなぜ重要?取り組み会社の事例を確認し導入を検討しよう

新しい職業に就くため、または今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得する「リスキリング」。*1

政府が強く推進する方針を打ち出したこともあり、非常に注目されています。

しかし、「なぜ今、リスキリングや学び直しが必要なのだろう」と疑問に思っている方もいるでしょう。

そこで今回は、リスキリングの重要性や政府や企業の取り組みについて紹介します。

リスキリングはなぜ重要なの?

リスキリングが注目されている背景には、下記のような理由があります。

・DX人材が慢性的に不足しているため
・成長産業への労働移動を実現するため
・従業員の雇用を守るため

DX人材が慢性的に不足しているため

あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使って、これまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場しています。

各企業は競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められています。*2

しかし日本では、DXの推進を実現できる人材が根本的に足りていません。

そのため、社内で再教育を行い、新しいスキルの習得を目指すリスキリングに注目が集まっているのです。

実際に旭化成は、2023年にデータ分析を業務に使うなど専門性の高い人材を育てるカリキュラムを開始すると発表しました。*3

最大数か月かけ、製品開発や生産技術などに活用するデジタル知識のノウハウを学びます。
2024年度には、デジタル技術を使える専門人材を約2500人(2021年度の10倍)にする計画を立てています。

成長産業への労働移動を実現するため

三菱総合研究所は、2030年に事務職や生産現場の人材が210万人過剰となる一方、専門技術職は170万人不足すると予想しています。
リスキリングによって必要な知識・スキルを身につけさせることができれば、不足している専門技術職への労働移動を促すことが可能となるでしょう。

岸田首相も「第12回新しい資本主義実現会議」において以下のように述べ、この分野への重点的な取り組みを強く打ち出しています。
「労働者に成長性のある産業への転職の機会を与える労働移動の円滑化、そのための学び直しであるリスキリング、これらを背景とした構造的賃金引き上げの3つの課題に同時に取り組む」*4

今後、このような価値観で人材教育に取り組む企業の強みはますます加速していくことでしょう。

従業員の雇用を守るため

デジタル化の加速と共に、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと考えられています。*5

そして、その時に起きてしまうのが技術的失業です。
技術的失業を防ぐためには、将来的にニーズの減る業務に就いている従業員を、社内でニーズの高い成長部門へ労働移動させることが必要です。

全日本空輸(ANA)の井上慎一社長は、2023年度末までに国内線の自動チェックイン機をなくす方針を明らかにしました。*6

空港の人員については「適正な配置を考えていく」と述べ、一部の業務をデジタルに置き換え、対面のサービスはより質を高めていくとしています。

つまり、現在対面型でチェックイン業務のサポートを行っていたスタッフの方に対しては、メタバース分野等におけるリスキリングを実施し、デジタル分野への労働移動を行っていくと考えられます。*7

リスキリングと部署異動をセットで行うことで、成長事業でも戦力となり、技術的失業を防ぎ、従業員の雇用を守ることができるのです。

岸田政権のリスキリングへの取り組み

政府はこれまで「リスキリング」など「人への投資」に3年間で4000億円を投じるとしてきましたが、総合経済対策ではこれを5年間で1兆円に拡充すると発表しました。

総合経済対策に盛り込まれた具体的な内容は以下の様なものです。*8

  • より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業への支援の拡充
  • 民間専門家に相談して、リスキリング・転職までを一気通貫で支援する制度を新設
  • 副業を受け入れる企業への支援を新設
  • リスキリングに取り組み、キャリアを形成していくことを支援する企業への助成率引き上げ

このほか、リスキリングへの支援策の整備など、企業間・産業間での労働移動円滑化に向けた指針を2023年6月までに取りまとめるとしています。

企業のリスキリング支援の取り組み

リスキリング支援は、社内で研修の場を設けるという方法だけではありません。

企業のリスキリング支援の実例として、「オムロン」と「ベネッセホールディングス」の取り組みを紹介します。

オムロン

オムロンは、1日の就業時間を15分単位で最大2時間短縮できる「短時間勤務」、週3日か4日勤務が選べる「短日勤務」、「休職」の3つの選択肢から選べる制度を2023年3月から導入します。*9

勤務時間外にビジネススクールや専門学校に通い専門性を高めるなど、リスキリング(学び直し)の機会を設けることが目的です。

この制度は、オムロン本体に勤務する国内の約4600人の社員が対象で、中長期的にキャリア形成に役立つ内容であれば、現在所属している部署とは異なる分野のリスキリングも認められます。
制度利用の期間は最大2年間で、働いていない時間や期間の給与は支給されません。

社員は会社に所属しながらリスキリングの時間を確保することができ、会社も社内で専門性の高い人材を育成することができるメリットがあります。

ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスは、DX人材の育成を積極的に行っています。

2021年から自分にDXの知識がどれだけあるかを知るための「ベネッセDXリテラシーチェック」を導入し、その人の結果に合わせて適切な研修講座を選択できるようにしました。*10

また、DXに関わる仕事を経験してもらうための仕組み作りとして、公募でDX職種に就いてもらう制度や、一時的なインターン制度などを設けています。

さらに学び直しそのものを支援する新たな人事制度として、2022年4月に「リスキル休暇」を導入しました。

リスキル休暇は、学習を目的とした休暇を年間3日取得できる制度で、平日に開催される資格試験などに活用してもらう狙いがあります。

学習にかかる費用は、会社が10万円まで負担し、学び直しの後押しもするようです。

同社の担当者は「若手を中心にリスキル休暇を使う社員が増えている。利用状況を見て拡充を検討したい」としています。*11

まとめ

今回は、リスキリングの重要性や政府や企業の取り組みについて紹介してきました。

DX人材の育成、衰退産業から成長産業への労働移動、技術的失業の防止を実現するためにも、リスキリングは社内だけで行うものではなく、社会全体で進めていくべきものとなってきています。

リスキリングへの注目は、ますます高まっていくことでしょう。


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<エビデンス>
*1 マイナビ健康経営「リスキリング
*2 経済産業省「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進
*3 日本経済新聞「旭化成、デジタル人材10倍にどう増やす?
*4 日本商工会議所「来年6月までに労働移動円滑化のための指針策定へ(新しい資本主義実現会議)
*5 厚生労働省「技術革新が労働に与える影響について (先行研究)」P1
*6 日本経済新聞「ANA、国内線チェックイン機ゼロに スマホで代替
*7 日経COMENO「官民動き出したリスキリング〜失業なき成長産業への「労働移動」〜
*8 内閣府「「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」について」P23
*9 日本経済新聞「オムロン、週3日勤務も可能に 学び直し支援に新制度
*10 Yahoo!Japanニュース「ベネッセのDX人材育成 リスキリングも「赤ペン先生」」P2、P3
*11 産経新聞「〈独自〉オムロン、リスキリング支援 週3日勤務など導入



【著者】髙橋めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供するプライム市場上場企業(元東証1部)に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。