リスキリングでは何を学ぶべき?語学留学し中国で転職に成功した筆者はこう考える

人が学ぶことに、理由など要らない……
と言いたいところだが、人間の時間は有限であり、目標のない努力は動機が弱くなりがちで、挫折することもまた多い。

新たな職業に就くため、はたまた現在の仕事で起きている変化に対応するためのスキル習得、すなわちリスキリングが今、ホットワードとなっている。
だが、それはただ新たな技能を身につければいいというものではない。

ざっくりと言ってしまえば、社会人の学び直しにおいては、「たぶん必要だから」というモチベーションだけではうまくいかないこともある。
ましてや、新たな業種に移るためのリスキリングの場合、「好きだから」「興味があるから」といった意識のみでは、痛い目を見ることは必定。

重要なのは、しっかりとした計画性を持ち、ゴールを見極めること。
そして、学んだことを生かしてどれだけのリターンが見込めるかを客観的に判断することである。

移ろいゆく時代に適応するために、常に学ぼうとする意欲は、言うまでもなく素晴らしい。
だが、そのエネルギーを無駄にしないためには、効率良くしっかりと的を捉えたスキル学習が求められるのだ。

ここでは筆者自身が30代から学び直しを始め、現在仕事に活かしている語学学習の経験等をベースとして、リスキリングを有用なものとするコツについて考えてみたい。

学ぶスキルと本業との相乗効果はあるか

自分は出版業界という、いわゆる斜陽産業とされる業界で長く働き、ひょんなことから語学方面のリスキリングの機会を得て、他業種に移ることができた。

はっきり言って筆者が学び直しからの転職に成功したのは偶然以外の何物でもなく、スキル取得のタイミングや選んだ分野がたまたま理にかなっていたというだけのこと。
それゆえに胸を張って語れる話ではないのだが、結果オーライで成功体験となったので、皆さまとシェアさせていただく次第である。

30代半ばで編集業をなりわいとしていた自分が選んだのは、中国語。
キッカケは華僑の方が経営している会社と取引があり、文書でやりとりをする上で相手の日本語があまりにも無茶苦茶だったことから、だったら自分が学ぶしかあるまいと一念発起したことだ。

そもそも中国語というのは一見有用なスキルに思えて、実はそれ単体では収入をドカンと上げてくれるようなシロモノではない。
日中バイリンガルなんて、それこそ街の中華料理屋にだってゴロゴロいるし、日中ハーフや在日二世、三世の人々、はたまた中国人留学生など教養を持ちつつの二カ国語話者も珍しくない。

中国に留学し、現地で政治学の博士号を取った知人がある時、日本に帰国して試しに転職エージェントに相談したところ、

「あなたの年齢と経歴ですと、ご紹介できるのは特に技能を必要としない売り場スタッフとかになってしまいます」

と言われてショックを受けたという話を聞いたことがある。
中国語を大きな収入につなげるには、物流業界やIT、生産管理など「もう一役」が必要で、むしろその専門性の方が語学レベルよりも重要だったりする。

そういう意味では編集業+中国語というのは、何の化学反応も起きなさそうな取り合わせに思えたし、実際自分も華僑の方とのコミュニケーション以上の役立て方を考えていなかった。

ところがたまたま仕事を辞め、せっかくここまで勉強をしたのだからもう一段上のレベルにまで高めようと中国留学をしたところ、縁あって中国語を生かす編集の仕事を見つけることができたのだった。

主な業務内容は中国発の外信を日本語にすることで、出版社勤務に比べるとクリエイティブな要素はないが、その分プレッシャーが小さい。
収入も落とさずに転職できたので、自分としては成功の部類に入れていいと思っている。

技能を得た時、自分はいくつになっているか

だが、繰り返しになるがこれはあくまで結果オーライ。
本来は新たなスキル獲得に挑戦する前に、それを身につけることで自分にどのような新しい選択肢が生まれるか、そしてその収入や労働環境は望むものであるかどうかを検討すべきだ。

ここでもう一点重要なのは、自分の人生の残された時間から逆算して、業務で生かせるレベルに到達できるかどうかを考えること。
何のスキルにしても、一朝一夕で得られるものではない。

自分の印象だと、語学であれば働きながら学ぶのであれば最低5年。
ただし語学は才能やセンスがかなり物を言う部分があり、どの程度の熱量を持って学習するかでも必要な時間は変わってくる。

もちろん、何かを学ぶ上で年齢なんて関係ない。
筆者は留学先で元一部上場企業勤務という50代の「駐妻」さんと同じクラスになったのだが、そのお方はクラスメートが20代ばかりという環境で、全く浮くことなく周囲に溶け込み、本気で語学に向き合っていた。

自分は小賢しい人間なので、教師の授業での様子をつぶさに観察し、ここはテストに絶対出してくるという読みを基に効率プレイで学んでいたが、その奥様は猪突猛進に全テキストを暗記する勢いで猛勉強。
そうして自分が試験でトップを取ると、親の金で留学している20代のクラスメートたちが「すごーい」といった感じで薄い反応を見せる中、彼女は負けた悔しさのあまり本気で泣いていたのだった。

そのような人を他にも多々見てきた身としては、年齢を理由にスキルアップを諦める人には、もったいないという思いしかない。
だからといって自分の歳を忘れてやたらめったらとリスキリングを進めるのもまた誤りだ。

転職においては、どうしても年齢による制限を受けやすい。
技能を習得し、実用レベルにまで高めた時に、己が何歳になっているか。
その時、自分を使ってくれる企業はあるかということは、学び直しを始める前に当然考えてしかるべきことなのである。

どうせ学ぶなら長く使えるスキルがいい

さて、それと同じく、習得するスキルがどのくらいの速さで陳腐化するかということも、頭に入れておく必要がある。

筆者がかつて大変お世話になった出版業界の先輩は、ある時編集者として生きていくことに限界を感じ、動画編集をコツコツと勉強し始めた。
紙媒体とムービーコンテンツはむろん同じ畑とは言えないが、見せ方や構成を考えるという点では共通項もあり、自分もその時点では割といい判断なのではと思ったものである。

その頃はまだ今のように動画メディアが発達しておらず、ムービー編集はかなり高価な機材やアプリケーションを使う必要があった。
初期投資はそれなりにかかったが、やがて独立して食えるようになり、良かったですねと言っていた。

すると、いつしか安価な編集ソフトが出回るようになり、さらにはムービーなんてスマホでちゃちゃっと作ればいい時代を迎え、先輩が苦労して身につけた技能は意味をなさなくなった。
そうなる前により高度なスキルを身につけて、単価の高い仕事を受けられるようにすればよかったのにと、後から言うことは簡単だ。
しかし、独立して日々の納品に追われる中、そういう余裕がなかったこともあるだろうし、先輩がリスキリングに一度成功して油断してしまったのも痛かった。

このことから分かるのは、世の中の流れが早く、必要とされるスキルも次々と変わっていく以上、リスキリングを不断に行う意識を持つべきということだ。
まとめると、社会人の学び直しにおいては労力や習得するまでの時間に見合うリターンがあるかどうか、その技能が自分の価値をどれほど高めてくれるかを考える必要がある。
そのような観点を持ちつつ果敢にリスキリングに挑み、ひとたび成功したとしても気を抜かずに生涯スキル向上を志すことが重要だ。

クレバーでありながらも、たゆまぬ学習意欲を持つこと。
それこそがこれからの時代、われわれ社会人が生き抜くカギの一つであると筆者は信じる。


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【著者】御堂筋 あかり
スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。