リスキリングで転職は有利になる? 経済産業省の定義を元に進め方を考えてみよう

企業が従業員に新しいスキルを身につけてもらうというイメージが強かったリスキリングですが、個人の学び直しとしてもリスキリングが注目を集めています。

岸田文雄首相は2022年10月18日、
「キャリアアップを目指す人に専門家の意見も聞きながら、学び直し(リスキリング)から転職まで一気通貫で応援する制度を創設したい」
と衆院予算委員会で答弁しました。*1

また経済産業省によると、令和4年度第2次補正予算案にリスキリング(学び直し)を支援するための予算として753億円が計上されています。*2

今後は、企業に頼らずに個人でリスキリングを行うことが、転職を有利に進めていくうえで大切になっていくことでしょう。

そこで今回は、リスキリングが転職で有利になる理由やリスキリングの始め方についてお伝えします。

リスキリングとは

2022年のユーキャン新語・流行語大賞の候補30語にノミネートされた「リスキリング」ですが、「そもそもリスキリングって何?」という人もいるかもしれません。*3

まずは、リスキリングについて確認しておきましょう。

リスキリングの意味

リスキリングとは、「新しい職業に就くため、または今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること(させること)」です。*4

つまり、リスキリングは単なる「学び直し」ではなく、「変化していく社会の中で、今後も価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」という点が大きな特徴となっています。

また、リスキリングは本来、基本的に個人ではなく企業が進めるものです。*5
すでに、新しいスキルを学ぶプログラムを導入し、従業員の職業能力の再開発を行う企業が増えてきています。

しかし全ての企業に、従業員のリスキリングを行う余裕があるとはいえません。
企業にリスキリングの環境がない場合には、個人が主体的・自主的に新しいスキルを体得していくことが必要になります。

リスキリングに注力する理由

リスキリングは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の人材育成において多く用いられています。

あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使って新しいビジネスモデルを展開しようとしていますが、DXの推進を実現できるIT人材が根本的に不足しています。

そのため、社内で再教育を行い、新しいスキルの習得を目指すリスキリングに注目が集まっているのです。

経済産業省も、
「デジタル社会においては、全ての国民が、役割に応じた相応のデジタル知識・能力を習得する必要があり、現役のビジネスパーソンの学び直し(=リスキリング)が重要」
としています。*6

また政府がリスキリングを支援する理由は、「働き手にデジタルなど新たなスキルを習得してもらい、自社の仕事に役立てるだけでなく、給与の高い成長産業への転職も促すことで、中期的な賃上げにつなげたいから」だと考えられています。*7

リスキリングが転職で有利になる理由

リスキリングで新しいスキルを獲得すれば、自分の強みが増え、労働市場における市場価値が高まります。

多くの企業ではIT人材が不足しており、経済産業省が行った「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足すると試算されています。*8

一部の企業では、社内でIT人材の育成を目指してリスキリングを行っていますが、全ての企業がIT人材の育成を行えるわけではありません。

そのような中で、多くの企業が欲しいと思うスキルを身につけていれば、あなたを採用したいという企業が増え、転職活動を有利に進めることができるでしょう。

ただし、リスキリングによって身につけたスキルで「何ができるのか」「どのような実績があるか」を伝えられるようになることが大切です。

スキルに経験・実績が伴うことで、年収アップやキャリアアップをすることが可能となります。

リスキリング(学び直し)の始め方

勤める企業にリスキリングの環境がない場合は、自分でリスキリングを行う必要があります。
リスキリングを行うことで、転職を有利にしたり、転職せずとも年収をアップさせることができたりと、自分の可能性を広げることが可能となります。

2022年度の経済財政白書では、リスキリング(学び直し)の効果を検証しており、大学など職場外での訓練(OFF-JT)や自己啓発を行うことによって、年収が約7%増えるとの分析を示しました。*9

それでは、実際に個人でリスキリングを進めるための方法をお伝えします。

  1. キャリアプランを明確にする
  2. 今後必要になってくるスキルを見極める
  3. 自分に合う学び方を考える
  4. スキルの習得をする

1.キャリアプランを明確にする

最初に、キャリアプランを明確にしましょう。

リスキリングによって、新しいスキルを獲得することだけを目標にするのではなく、それをどう活かすのかまで考えてキャリアプランを明確にすることが大切です。

「どのようなキャリアを築きたいか?」「なぜ新しいスキルが必要なのか?」という目的を先に考え、「そのために必要な学びは何か」を考えるという順番を間違えないようにしてください。

2.今後必要になってくるスキルを見極める

今後必要になってくるスキルの種類は豊富にあるので、自身が獲得すべきスキルを見極める必要もあります。

「何を学べばいいのか分からない」という人は、「向こう何十年、どんな世界でならば飯を食っていけるのか」ということを、自分の頭で考えてみましょう。*10

具体的な手順
  1. ニュースなどから「食っていけそうな業界」の仮説を立てる
    例:紙媒体は部数が減少しているが、ネットメディアはまだ成長しそうだ
  2. 比較的興味を持てそうな業界、力を発揮できそうな業界を選ぶ
  3. その業界の有名企業はどんな人材を募集しているのかをチェックする
  4. 求人の中から自分の経験からできそうなもの、少し学べばできそうなものを選び、そこで活躍するための能力やスキルを強化する学びは何かを考える

3.自分に合う学び方を考える

社会人が学び直す際には、社会人大学院や通信制大学、民間のスキルアップスクールやセミナー、通信講座、書籍やネットを使った独学など、様々な方法があります。*10

時間やお金、距離などを考慮しながら、続けられる方法を選びましょう。

近年では、大学の授業やセミナーなどはオンラインで参加できるようになりました。
オンライン完結のスクールも増えています。

オンラインを上手く活用すれば、忙しいビジネスパーソンでも効率的に学び直しができるでしょう。

4.スキルの習得

学ぶ内容と方法が決まったら、スキル習得を目指して学ぶのみです。

ただしリスキリングは、スキルを習得することがゴールではありません。
リスキリングによって習得した新しいスキルを、仕事に活かすことが大切です。

また転職活動では、リスキリングで身につけたスキルを活かして「何ができるか」を伝えられるようになりましょう。

まとめ

リスキリングと転職についてお伝えしてきました。

自分で考えて行動し、学び直しを繰り返すことで、人生100年時代の中でも長く活躍し続ける人材になれるはずです。

自分の市場価値をさらに高めるためにも、リスキリングに挑戦してみてはいかがでしょうか。


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<エビデンス>
*1 日本経済新聞「リスキリングから転職「一気通貫で応援」 岸田文雄首相
*2 経済産業省「経済産業省関係令和4年度補正予算案のポイント」P9
*3 日刊スポーツ「【流行語大賞】ノミネート30語の選出理由/一覧
*4 マイナビ健康運営「リスキリング
*5 DIAMONDonline「岸田首相が1兆円支援の「リスキリング」とは?30代以上が実践する5つの方法
*6 経済産業省「経済産業省の取組」P4
*7 朝日新聞「「構造的な賃上げ」へ本格議論 政府、リスキリングと労働移動促す
*8 経済産業省「IT人材需給に関する調査」P1
*9 日本経済新聞「経財白書で読む「人への投資」(2)学び直しで年収7%増
*10 NIKKEI STYLE「市場価値を高める「学び直し」 何から始めるべきか?」P2-3



【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供するプライム市場上場企業(元東証1部)に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。