契約社員は、雇用契約に期間が設けられているため、正社員よりも不安定な立場です。
契約社員との契約を打ち切る「雇い止め」も、正社員の解雇よりはハードルが低くなっています。
しかし、契約社員の雇い止めも、無制限に認められているわけではありません。
長く勤めていた契約社員を突然雇い止めすることは、違法・無効となる可能性があります。
今回は、契約社員の「雇い止め」に関する法律上のルールや、突然雇い止めを受けた際の対処法などを弁護士が解説します。
目次
「雇い止め」とは?
「雇い止め」とは、契約期間の満了に伴い、主に使用者側の意向により、雇用契約を更新せずに打ち切ることを意味します。
雇用契約には、期間の定めがない「無期雇用契約」と、期間の定めがある「有期雇用契約」の2種類があります。
一般に、会社と無期雇用契約を締結している従業員を「正社員」、有期雇用契約を締結している従業員を「契約社員」と呼びます。
このうち雇い止めの対象となるのは、契約社員です。
これに対して正社員は、契約期間の定めがないため、期間満了に伴う雇い止めの対象にはなりません。
その代わり正社員については、会社が一方的に雇用契約を打ち切る「解雇」が行われることがあります。
なお、契約社員との雇用契約を、会社が一方的に期間の途中で終了させる場合、雇い止めではなく解雇という扱いになります。
上記をまとめると、以下のようになります。
①契約社員の場合
期間満了に伴う雇用契約の打ち切り→雇い止め
期間途中での雇用契約の打ち切り→解雇
②正社員の場合
解雇のみ
会社都合で唐突に雇用契約を打ち切る解雇に対して、雇い止めは期間満了のタイミングで行われるため、従業員の側としてもある程度予期することが可能です。
そのため雇い止めは、解雇に比べると、緩やかな基準で認められることになっています。
会社が契約社員の「雇い止め」をする際に必要な手続き
労働基準法14条2項に基づき、厚生労働大臣は、有期雇用契約に関する労使間の紛争を防止するための基準(雇い止め基準)を定めています。
参考:
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準|厚生労働省
雇い止め基準によれば、会社が契約社員を雇い止めする場合、以下の手続きを踏まなければなりません。
雇い止めの予告
以下の①および②の要件を満たす契約社員を雇い止めする場合、会社は契約社員に対して、契約期間満了の30日前までに、雇い止めの旨を予告しなければなりません(雇い止め基準2条)。
①以下のいずれかの要件を満たすこと
・契約を3回以上更新していること
・雇入れの日から起算して、1年を超えて継続勤務していること
②あらかじめ契約更新がない旨が明示されていないこと
雇い止めの予告期間が設けられているのは、長く勤続している契約社員に対して、不意打ち的に雇い止めが行われることを防止するためです。
雇い止め理由に関する証明書の交付
契約社員が会社に対して、雇い止めの理由に関する証明書を請求した場合には、会社は遅滞なく交付しなければなりません(雇い止め基準3条2項)。
なお、雇い止めの予告が義務付けられている契約社員は、予告を受けた後であれば、実際に雇い止めが行われる前であっても証明書を請求できます(同条1項)。
唐突な雇い止めは違法の可能性あり|「雇い止め法理」について
期間満了のタイミングで行われる契約社員の雇い止めも、「雇い止め法理」によって無効となる場合があります。
「雇い止め法理」とは、契約社員側の契約更新に対する合理的な期待を保護し、会社側の意向にかかわらず、有期雇用契約のみなし更新を認める制度です(労働契約法18条)。
具体的には、以下の①および②の要件をいずれも満たす場合には、契約社員側の申込みがあれば、有期雇用契約は更新されたものとみなされます。
①以下のいずれかに該当すること
・有期雇用契約が過去に反復して更新されたことがあり、かつ雇い止めが解雇と社会通念上同視できること
・有期雇用契約に対する契約社員の合理的期待が認められること
②雇い止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないこと
雇用期間の年数や契約更新の回数については、ケースバイケースなので一概には言えません。
むしろ、
・会社側に契約更新を期待させる言動があったかどうか
・同条件で雇用されている従業員についての雇い止めの実績(割合)
などが考慮されて、契約更新に向けた合理的な期待の有無が判断されるケースが多いようです。
契約期間が5年を超えると正社員に?|「無期転換ルール」について
さらに、有期雇用契約の期間が5年を超えた場合には、期間満了時に契約社員が申し込むことによって、新たに無期労働契約が締結されたものとみなされます(労働契約法18条)。
これを「無期転換ルール」と言います。
無期転換ルールにより、継続勤務期間が5年を超えた契約社員については、実質的に雇い止めが不可能となっています。
もし5年を超えて勤め続けた会社から雇い止めを通告された場合には、無期転換ルールに基づいて、雇い止めの無効を主張しましょう。
違法な雇い止めに遭った場合の対処法
もし会社から違法な雇い止めを受けた場合には、弁護士に相談して会社に反論しつつ、場合によっては、転職も視野に入れて行動を開始しましょう。
弁護士に相談して会社に反論する
会社による唐突な雇い止めに対しては、雇い止め法理や無期転換ルールに照らして、無効・復職を主張することができます。
また、仮に退職を受け入れるとしても、「上乗せ退職金」や「解決金」などの名目で、金銭の支払いを受けられるケースも多くなっています。
弁護士に会社との協議を依頼すれば、復職・退職のいずれを選択する場合でも、従業員側にとって有利な解決を期待できるでしょう。
並行して転職活動を行うのも有力
違法な雇い止めを行うような会社とは縁を切って、新天地を求めて転職活動を行うのも有力な選択肢です。
会社に対しては、ひとまず復職や解決金の支払い等を求めつつ、並行して転職エージェントなどに相談するとよいでしょう。
これまでの経験を活かした業界・業種への転職を目指すのか、それとも新しい業界・業種にチャレンジするのか、ご本人の意向を踏まえて、幅広にアドバイスを受けることができます。
まとめ
契約社員の雇い止めには、「雇い止め法理」や「無期転換ルール」による一定の制限が設けられており、唐突な雇い止めは無効となる可能性があります。
もし違法な雇い止めを受けた場合には、法的な観点から会社に対して反論をしつつ、適宜並行して転職活動を進めるのが盤石な対応と言えるでしょう。
弁護士や転職エージェントが良きアドバイザーとなりますので、雇い止めに遭ってしまった方はお早めにご相談ください。
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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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