コンサルティング会社の面接で、面接官は何を見ていたか。

コンサルティング会社でマネジャーをやっていた時、何度も面接官として、採用に携わったことがあります。

年上の方や、結構な経験を持つ人、後に支社長を勤めるような優秀な方の採用にも関われたのは、非常に貴重な経験でした。

ただ、正直なところ、私が面接官として優れていたかといえば、全くそんなことはなかったという自覚があります。

面接のときに受けた印象と、入社してからの実際の働きぶりに、かなりの差があることも多かったですし、「盛っていた話」を見抜けないこともしばしば。

「これは」と思った方が、会社に合わずにすぐに辞めてしまう、という失敗もありました。

とはいえ、何度も面接をやって、その後の活躍を見ていれば、「考慮しなくてよいこと」も、「見るべきポイント」も、徐々にわかってきます。

経験・知識・論理的思考能力、いずれも実務能力とはあまり関係ない。

まず、長期的に見れば、「経験・知識・センス」の不足は、現場での実務能力とあまり関係がなかったです。

というのも、私が在籍していたコンサルティング会社では、過去の知見が大量に蓄積されており、ツールの標準化も進んでいました。

だから、「普通の人」であっても、それを勉強し、踏襲することで、十分に成果を出すことが可能だったのです。

前にも書きましたが、「センス」や「知識」は、正直、教育訓練によって後から何とでもなります。

また、仕事の知識はすぐに陳腐化する。

だから、そういったことで足切りをするのは、愚の骨頂といえます。

逆に、新しいものを次々と生み出す「天才」がやるような仕事は、そもそもコンサルティング会社の領分ではありません。

そもそも、特殊な才能が必要な仕事であったら、コンサルティング会社はせいぜい10名程度が限界でしょう。

100名、1000名もいるようなコンサルティング会社は、「普通の人」を雇い、教育訓練でそれを補っているのです。

また、コンサルティング会社は論理的思考能力が重要だ、推論能力が重要だ、など言われますが、ペーパーテストで十分わかるので、面接ではそこまで詳しく見ません。

「結論から言っているか」

「筋が通っているか」

くらいは見ますが、パズルのような問題を与えることはしませんでした。

これは、Googleが「フェルミ推定」のような採用試験を中止したことからも分かるように、あの手の採用手法は、どちらかというと、採用側の自己満足のためにやっていることが多いのです。

言葉を選ばずに言えば、「俺たちは頭がいいんだぞ」と応募者を威圧するためにやっているようなものです。

実際、パズルを解くことにそれほど優れていなくても、成果を上げているコンサルタントはいくらでもいました。

「採用してはいけない人たち」の特性

では逆に、「採用してはいけない人たち」の特性とは、どのようなものなのでしょうか。

結論から言うと「学習能力が低い人」、もう一つは「評論家」の2つの特性が、致命的でした。

コンサルティング会社は仕事をとにかく前に進める能力が問われます。

口より手を動かし、人に会い、評価を受け、理想とギャップがあれば、顧客の協力を仰ぎながら、理想の姿に少しずつ近づけるのです。

したがって、最も組織が重視するのは、新しいことに取り組む「学習能力」と、それを支える「実務家」のマインドセットでした。

「学習能力」を面接でどのように確かめるか

とはいえ、短時間で、目の前の人の学習能力を測るにはどうしたら良いのでしょう。

様々な方法があると思いますが、私が実践していたのは、「面接の場で、疑似的に教える立場になってもらう」ことでした。

例えば、その場で候補者が持つ専門知識について語ってもらい、それを私たち面接官に「よく理解させる」ように、促したのです。

つまり「人に教えるのがウマい人は、学習能力も高い」という仮説を採用しました。

学習能力が高ければ「理解」のステップを人に巧く伝えられるだろう、と考えたのです。

なお、誤解の無いように申し上げると、「学習能力の高い人」であっても、人に教えるのがヘタなケースもあります。

残念ながら、こうした人は、このスタイルの面接では拾い上げられません。

ただ、面接は「フィルター」ですから、「ダメな人を通さない」ほうが優先されました。

そのため、私は面接官をやっている間、「ずぶの素人」に徹し、相手の説明をひたすら聞きました。

転職者からは前職の話、学生からは、卒業研究の話などを聞きました。

そして、すぐにこれはかなり効果的だと分かったのです。

教えるのがウマい人は、「何を知るべきか」「この知識の何が面白いのか」「学習をどのように進めるか」「どのように自分の知識を振り返るか」を丁寧に教えてくれます。

まさにこれは、学習に必要な能力に他なりません。

「教えるときに最も学ぶ」といいますが、「未経験分野の学習能力」と、「人にうまく教える能力」とは、非常に強い相関があると、私は確信しています。

「評論家」を面接でどのように確かめるか

常々、わが社の社長が強調していたのは「評論家」のマインドセットを持つ人は絶対に入社させない、ということ。

あるいは、仲間の一所懸命な仕事に対して「ムキになっちゃって」などと皮肉を言う「冷笑家」も同様の扱いでした。

評論家は、他者の批評には優れますが、自らは動かない人々です。

例えば、世の中には起業をしたこともないのに、起業について語ったり、副業をやったこともないのに、副業について語ったりする人が多いですが、彼らはまさに「評論家」です。

それゆえ「評論家」は、「できない理由」を挙げることに長けており、「それをどうやって実現するか」にリソースを使いません。

例えば、

  • 権限がないので
  • リスクが高いので
  • 人が足りないので
  • 上が首を縦に振らないので
  • やったことがないので
  • 顧客が無理を言うので

と、いった具合です。

もちろん「できない理由」をいくら並べても、仕事は進みません。

役に立たない評論家たちを、我々は社員として雇いたくありませんでした。

では「評論家」を面接でどのように検出すれば良いのでしょう。

これは、簡単でした。

「苦労した仕事の話」を聞けば良かったのです。

例えば、

  • どんな仕事で苦労したか
  • 具体的に何が難しかったのか
  • どのような解決方法をとったのか

などです。

ここでのポイントは、「架空の話」をしない事です。

例えばケーススタディなど、架空のケースであれば、「こうすればよい」は

理想的な解決策を何とでも言えます。

ところが「実際どうした」について答えをごまかすのは難しい。

いくつかの事例を聴けば、必ず「評論家」はありきたりの答えばかりを並べだします。

そうして「ありきたりのこと」ばかりを話す人物は、建前の世界、つまり評論家の世界で仕事をしてきたことがすぐにわかります。

半面、手を動かして問題解決にあたった人は、実に様々な試行錯誤をするため、話を聞けば

「評論家」なのか「実務家」なのかは、私のような未熟な面接官でも、はっきりと認識できたのです。

結局「何を検証したいのか」をはっきりさせないと面接は無意味

もちろん、上で紹介した話は、コンサルティング会社が欲しい人材についての個別の事例です。

私は一緒に働きたいとは思えないですが、もしかしたら、「評論家」が輝ける会社もどこかにあるのかもしれません。

ただ、誰を採用するかにかかわらず、面接は「何を検証したいのか」をはっきりさせることが最も重要です。

何を見るかがはっきりしなければ、採用した後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチは減らないのです。

企業が「面接」という方法を採用の主たる手法として採用するのならば、

成果の測定も含め、もう少しきちんと、「面接」について、深く考えたほうが良いのは間違いないでしょう。


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【著者】安達 裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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