メタバースとは何か　VRとの違いや新しい働き方を確認しよう

最近耳にすることが増えた「メタバース」。

2021年10月にFacebook社が「Meta」に社名変更したことで、多くの人々がメタバースに興味を持つきっかけとなりました。*1

日本企業もメタバースへの参入を表明し、メタバース界隈の開発や投資が盛んになってきています。*2

しかし「メタバース」と言われても、まだ想像ができないという人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、メタバースとはどんなものなのか、ビジネスでどんな活用がされているのかなどを紹介していきます。

メタバースとは

メタバースは「メタ（超越）」と「ユニバース（宇宙）」を合わせた造語で、アメリカのSF作家ニール・スティーブンソンが1992年に発表した小説『スノウ・クラッシュ』の中で、仮想空間の名称として使われました。*3

現在のメタバースは、インターネット上の仮想空間で、自分のアバターを作成して行動できる仕組みを持ったもののことです。

仮想空間に自分がいるかのような感覚で、コミュニケーションやコンテンツを楽しむことができます。

VR（仮想現実）との違い

「仮想」に関する技術として、VR（仮想現実）があります。

VRの本来の意味は、仮想現実を体験できる「デバイスやツール、道具」です。*4

1人の人間が仮想の映像や空間などを体験するためのものであり、他者との関わりなどは考慮されていません。

一方メタバースは、インターネット上で他のユーザーとアバターを用いて交流される「仮想空間」のことであり、「コミュニティ形成」という観点に主眼が置かれています。

つまり、VRはあくまでも仮想の映像や空間を体験する道具であるのに対して、メタバースは様々な人とコミュニケーションを取ることができる仮想空間そのものということになります。

既存の仮想現実空間の具体例

身近なメタバースとしては、人気ゲームソフト「あつまれどうぶつの森」があります。*5

あつまれどうぶつの森は、ゲームの中で自分の分身となるアバターを作り、無人島で動物たちとのんびり暮らすゲームです。

ユーザー同士でお互いの島を訪問したり、アイテムを交換したりするなどの交流を行いながら、まるでどうぶつの森に住んでいるかのように自由に空間を楽しめます。

その他には、米エピック・ゲームズの人気ゲーム「フォートナイト」もメタバースとして有名です。

フォートナイトは、最大100人ほどのプレーヤーが一度に戦う無料のバトルロイヤルゲームですが、フォートナイトの世界でライブが開催されたり、集まってコミュニケーションを取ったりと、ユーザー同士が集う場にもなっています。

あるイベントでは、同時接続ユーザー数が1,300万人という驚異の集客力を示しました。*6

これは現在の東京都の人口に等しく、言い換えれば小さな仮想空間上に、東京都の人口に相当するユーザーが一度に集結したことになります。

日本企業のメタバース参入事例

日本企業もメタバース市場への参入が本格化してきました。

ここでは、日本企業3社の参入事例をご紹介します。

・パナソニック「軽量VRグラス」
・三越伊勢丹の「REV WORLDS」
・KDDIの「バーチャル渋谷」

パナソニック「軽量VRグラス」

パナソニック子会社シフトールは、1月上旬に開催された世界最大のテクノロジー見本市CESで、メタバース向けのデジタル機器を今夏までに3製品発売すると発表しました。*7

今春中には眼鏡型のVRヘッドセット「メガーヌエックス」を一般販売することが決まっています。

メガーヌエックスは、5K相当の高精細な映像を映し出すことが可能で、スピーカーやレンズ部分には、パナソニックの音響機器やカメラの技術を活用しているようです。

その他にも、仮想空間でたき火に近づくと熱く感じるなどの演出が可能になる専用シャツや、公共空間でテレビ会議をする際などに自分の声が外に響くことを防げるマイクも販売予定となっています。

三越伊勢丹の「REV WORLDS」

三越伊勢丹ホールディングスは、仮想空間で買い物ができるスマートフォン向けアプリ「REV WORLDS（レヴワールズ）」をオープンしました。*8

REV WORLDSは、新宿一部エリアと伊勢丹新宿店が再現された仮想空間です。

アバターを操作し、実際に店内を見て回っている気分を味わいながら、ショッピングが楽しめます。

チャット機能を使って、友達と会話を楽しみながらショッピングすることも可能です。

KDDIの「バーチャル渋谷」

KDDIは、東京・渋谷の街をメタバース上で再現した渋谷区公認の「バーチャル渋谷」を公開しています。

バーチャル渋谷は、渋谷を象徴するスクランブル交差点などのスポットを中心に、様々なイベントが開催され、多くの人がアバターとして参加できます。*9

2020年10月に初めて行われたハロウィーンイベントでは、謎解きゲームや、人気キャラクターとの記念撮影、バーチャル仮装コンテストなど多様なイベントが実施され、世界中から40万人が参加しました。

その他にも、サッカー日本代表戦のパブリックビューイングなどのイベントを行っています。

メタバースの転職市場への影響

メタバースはあらゆることができる可能性を秘めています。

ここからは、近い将来メタバースが転職市場に及ぼすと考えられる影響について紹介します。

・メタバース人材の採用激化
・新しい働き方の誕生（メタバースで働く）

メタバース人材の採用激化

ビジネスの観点からも、経済発展の側面からも、メタバースに対する期待感はとても高くなっています。

カナダの調査会社の予測では、2020年時点でメタバース関連の市場はすでに5.5兆円だったものが、2028年には100兆円規模の市場に成長すると試算しています。*10

今後もメタバース事業に参入する企業は増加すると考えられています。

同時にメタバース人材の採用も激化していくでしょう。

他国では、「ナイキ」がメタバース人材の求人を掲載し始めたり、「メタ」が欧州で1万人を雇用する計画を発表したりするなど、すでに活況の様相を呈しています。*11

しかし人材不足のリスクも指摘されており、メタバース人材の給与高騰もあると予想されています。

新しい働き方の誕生（メタバースで働く）

メタバースで働くという選択肢も出てきました。

例えば、メタバースに店舗を設置し、実際の店舗と同じように接客するためには「接客スタッフ」が必要です。

実際にREV WORLDSの三越伊勢丹では、接客スタッフの募集が行われています。*12

またバーチャル渋谷で行われたハロウィーンフェスでは、参加者のサポート役として公式スタッフの派遣が行われました。

メタバースが急拡大している中で、メタバースで働くというニーズが高まっています。

まとめ

NFTや仮想通貨などの新しい技術の開発や、新型コロナウイルスによる非対面でのコミュニケーション機会が増加したことで、今後もメタバースは注目されていくでしょう。

まだメタバースを体験したことがない人は、ぜひ利用してみてください。

あらかじめメタバースに触れておくことで、ビジネスシーンで導入されたときにも焦らずにポイントを掴めるはずです。

次の時代を見越したスキルアップを考えるのなら、メタバース関連のスキルを身につけることも検討してみましょう。

【エビデンス】
*1 日本経済新聞「旧Facebookのメタバースの行方、買収企業から読み解く」
*2 朝日新聞「競い合うメタバース　日本企業も続々参入　米技術見本市CES」
*3 マイナビニュース「Meta（旧Facebook）が注目するメタバースって？」
*4 CareerTANQ「最近話題のメタバースとは何か？どんな可能性がある？」
*5 日本経済新聞「仮想空間メタバースの衝撃　テレビ・ネット超えの予感」
*6 日経XTREND「メタバース時代の覇権を握る「本命」とは　強さを3つのCで解明」
*7 日本経済新聞「パナソニック系、軽量VRグラス発売　メタバース開拓」
*8 日本経済新聞「バーチャル空間の伊勢丹新宿店で買い物　アプリ提供」
*9 日経XTREND「KDDI、JR東が挑む“街づくり”　日本勢がメタバースで勝つ方法」
*10 日本経済新聞「メタバースとは　仮想空間、28年に100兆円市場迫る」
*11 Yahoo!JAPANニュース「ナイキがメタバース求人を掲載、高需要のメタバース人材に求められるスキル」
*12 Yahoo!JAPANニュース「現実世界よりも自由に働ける？ 『メタバース』上で生まれる雇用と“案内役”の需要」

【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。