仕事ができない人への指導はパワハラ?事例と法律を再確認しよう

職場でのパワハラは、近年増加傾向にあります。

2019年度の都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、過去最高の87,570件となりました。*1

もし自分がパワハラを受けたら、どのように対応すれば良いのでしょうか。
今回はパワハラとは何か、そして自分がパワハラを受けたときにはどうすべきかと言った対処法などを紹介します。
自分の現状と照らし合わせて、パワハラについて考えてみましょう。

パワハラの定義

パワハラとは、パワーハラスメントの略語です。
職場におけるパワハラは、権力や立場を利用した、部下や同僚、上司などへの嫌がらせのことを指します。

具体的には、下記の3つの要素をいずれも満たすものがパワーハラスメントとして定義されています。*2

1.優越的な関係を背景とした言動
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3.労働者の就業環境が害されるもの

しかし、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しません。

パワハラの種類

パワーハラスメントの状況は多様ですが、代表的な言動の類型としては下記の6つに分けられます。

(引用)あかるい職場応援団「「ハラスメント基本情報」ハラスメントの類型と種類

このような内容が繰り返し行われている場合は、パワハラを受けている可能性が高いといえるでしょう。
詳しくみていきましょう。

身体的な攻撃

一番わかり易いのが身体的な攻撃のパワハラです。
叩く、殴る、蹴る、胸ぐらを掴む、タバコの火を近づけるなどが該当します。

また、物にあたり威嚇するなども暴力・傷害となります。

<例>
・「出来が悪い」と書類で胸を叩かれた
・机を手で叩きながら怒鳴られた
・上司に頭を小突かれた

精神的な攻撃

脅迫するような言動や人格を否定するような侮辱、名誉棄損にあたる言葉、ひどい暴言は、「精神的な攻撃」型のパワハラに該当します。

<例>
・同僚の⽬の前で叱責された
・他の社員を宛先に含めたメールで罵倒された
・長時間、執拗に叱られた

人間関係からの切り離し

特定の人を仕事から外したり、別室への隔離・無視や仲間外しなどの行為は、「人間関係からの切り離し」型のパワハラです。

<例>
・同僚に話しかけても集団で無視された
・一人だけ別室に席を移された
・打ち上げや送別会に参加させてもらえなかった

過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害があった場合、「過大な要求」型のパワハラに該当します。

<例>
・新⼈で仕事のやり⽅もわからないのに、他の⼈の仕事まで押しつけられた
・必要な教育がないまま、高すぎる業績目標を課され、それを達成できなかったことに対して厳しく叱責された

過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことは、「過小な要求」型のパワハラです。

<例>
・専門職なのに、軽度な整理作業のみを命じられた
・管理職なのに、誰にでも遂行可能な業務を命じられた

個の侵害

職場の外でも継続的に監視したり、個人の私物を写真で撮影したりすることなどは、「個の侵害」型のパワハラに該当します。

また上司との面談等で話した性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の個人情報について、本人の了解を得ずに、他の人に暴露することも「個の侵害」型のパワハラです。

<例>
・勝手にスマホをのぞかれた
・上司との面談で不妊治療をしていることを話したら同僚に暴露された

パワハラを受けたときの対処法

厚生労働省が行ったパワハラに関する調査で「パワハラを受けた後で自分自身はどのような行動をしたか」の質問に対し、「何もしなかった」が35.9%と最も多くなっています。*3

パワハラを受けて困っている人は、解決へ向けた行動を起こしましょう。

・具体的な態様を記録する
・周囲に相談する
・会社の窓口や人事担当者に相談する
・外部の相談窓口に相談する

具体的な態様を記録する

パワハラを受けた場合、被害者がパワハラの事実を立証できるかが極めて重要となります。

そこで、具体的な態様を記録するようにしましょう。
下記のものを活用するのがおすすめです。

  • 録音
  • 写真、動画
  • 診療録
  • メール
  • 手帳、業務日誌、日記

録音は、言葉によるパワハラの証拠になります。
内緒で録音しても証拠として問題はありませんので、スマホの録音機能やボイスレコーダーを活用しましょう。*4

また医療機関で受診した場合の診療録は、暴力・傷害や疾患の証拠、さらにはパワハラがあったかどうかの立証の根拠にもなります。

業務に関連するメールで人格を否定する言葉が使われた場合は、そのメールをプリントアウトするか、私用のアドレスに転送して保存しておきましょう。

手帳や日記などで記録を残す場合は、主観的な事柄を記載するだけでなく、パワハラを受けた日時、場所、態様等をできるだけ具体的に記載してください。

周囲に相談する

パワハラは我慢していても何も解決しません。
それどころか、我慢することでパワハラがエスカレートする可能性があります。

一人で悩まずに、同僚や上司などの周囲の人に相談しましょう。

周りの協力を得ることで、パワハラを行う本人が自らの行為に気がつく可能性があります。

会社の窓口や人事担当者に相談する

上司にパワハラされていて周囲の人に相談できない場合は、社内の相談窓口や人事担当者に相談することがおすすめです。

ただし、パワハラを行う本人が窓口担当になっている場合や、社内で相談したくないといった場合は、外部の相談窓口に相談するのが良いでしょう。

外部の相談窓口に相談する

社内に相談窓口がない場合などは、外部の相談窓口に連絡しましょう。

各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」は、無料で相談を受け付けており、電話でも相談できます。*5

その他にも、厚生労働省が委託事業として行っている「労働条件相談ほっとライン」や、法務省が設置する「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」などもあります。67

パワハラについて悩んでいる人は、第三者のアドバイスを受けて、今後の方針や対策を考えましょう。

パワハラ防止法で働きやすくなる?

2020年6月1日に「パワハラ防止法」が施行され、2022年4月からは中小企業にも防止措置が義務付けられました。

その内容と、パワハラ防止法による影響を確認していきましょう。

パワハラ防止法の内容

パワハラ防止法では、下記の対応が求められます。

(引用)ツギノジダイ「パワハラ防止法への具体的対応とは 中小企業は2022年4月から義務化

この法律に罰則規定はありませんが、対策を怠ったり、改善がみられなかったりする場合は、損害賠償責任を問われる可能性があります。*8

パワハラとして社名公表されれば、企業ブランドが失墜するだけでなく、優秀な人材の獲得にも支障が生じるため、パワハラ対策への取り組みは、企業にとって看過できないものになるでしょう。

パワハラ防止法の影響

パワハラに対する企業の対応状況や意識についての調査では、法施行済み企業のうち約7割が計画的に実施できており、うち2割以上が「十分」と回答していました。*9

しかし2022年4月から施行の企業は、計画を立てて実施している企業の割合は4割に留まりました。

またパワハラ防止法による影響については、法施行済み企業は半数以上が「良い影響があった」と回答したものの、2022年4月から施行の企業は「どちらともいえない」が約7割となり、課題が残っています。

(引用)PRTIMES「パワハラ防止法施行は意識変化のきっかけとなる「良い影響」一方で「パワハラ行為者の自覚欠如」は課題

パワハラ対応の整備には時間がかかり、すぐに完了するものではありません。

しかし多くの企業で相談窓口を設置したり、就業規則などへの懲戒規定を明文化したり、研修や講習を行ったりと、パワハラ防止策を実施しています。

ゆくゆくは、誰もが安心して働くことができる環境になると期待できるでしょう。

まとめ

パワハラについて説明してきました。

もしあなたが「パワハラを受けてるかも」と思ったら、記録を残しつつ、周囲の人や会社の相談窓口などに相談をしましょう。

それでも解決が見込めない場合は、転職も検討してみてください。
我慢を続けると、体調を崩す原因にもなりかねません。

自分の健康を第一に考えて、行動をしてみてくださいね。
応援しています。


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【エビデンス】
*1あかるい職場応援団「データで見るハラスメント
*2あかるい職場応援団「ハラスメントの定義
*3厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査 報告書(概要版)」P19

*4マイナビニュース「知らないとまずい「パワハラ防止法」、定義や罰則をチェック
*5厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内
*6厚生労働省「労働条件相談ほっとライン
*7法務省「常設相談所(法務局・地方法務局・支局内)
*8ツギノジダイ「パワハラ防止法への具体的対応とは 中小企業は2022年4月から義務化
*9PRTIMES「パワハラ防止法施行は意識変化のきっかけとなる「良い影響」一方で「パワハラ行為者の自覚欠如」は課題


【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。