研究結果でも明らかに 本当に仕事ができる人の特徴は「緩急をつける」こと

長時間労働を続けて、思考力が低下した経験をお持ちの方はいないでしょうか。朝7時ごろから夜中まで毎日「ずっと頑張って」働いても、大した成果が残せなくなるどころか、ミスが増えたり、しまいには体を壊してしまうことがあります。

学校の授業を思い出してみてください。授業で集中できる時間にも限界があります。あまりにも長い時間講演を聞いていると、先生が何を言っているのか頭に入らなくなったり、集中できずに他のことを考えてしまったりするものです。

私がみてきたいくつかの職場でも、いつも会社にいて、何晩も徹夜しているのに、締め切りに常に遅れてしまうスタッフがいました。
私自身も、徹夜で仕事するとミスが増えます。そのミスの始末でさらに仕事が増える悪循環に陥ったことも一度や二度ではありません。

そして仕事ができると言われている人をよく観察すると、ずっと会社に詰めているわけではないことが、わかるでしょう。
むしろ、朝早めにきて、夕方には仕事を終わらせて早々に帰っていく人が多かったのです。緩急をつけているのです。

人間の集中力には限界がある

では、どうしたら緩急をつけることができるでしょうか。

まずは、人の集中力には限界があることを知っておく必要があります。個人差もありそうですが、人間の集中力が何分続くかについては、諸説あります。

大学の講義は90分が限界と言われているそうです。
「45分と15分の休憩をセットに考えよ」というのは、順天堂大学医学部教授で医師の小林弘幸さんです。

ではどうしたら、上手に休息をとることができるのでしょうか。それは「こまめにとる」のが労働効率を上げるためにもベターな方策です。

具体的に私は1時間を「45分間の集中+15分間の休憩」というワンセットで働くことをお勧めしています。

医学的にも、生理学的にも、人間の集中力の持続時間は90分間が限界だと言われています。大学の講義が90分間で区切られているのは、そうした合理的な理由からです。

にもかかわらず、休憩もとらずに仕事を続けていれば、当然、時間の経過とともにパフォーマンスはダダ下がりです。*1

実際に、学習の場での集中力に差があるのか。これを試した方がいます。
2017年に東京大学薬学部の池谷裕二教授が、中学1年生を対象に行った「勉強時間による学習の定着・集中力に関する実証実験」では、長時間の学習より、短期間の集中の方が学習効果があるとわかっています。

今回の実験結果から、“長時間学習”よりも短時間で集中して行う“積み上げ型学習”の方が、学習の定着・集中力に対して効果があるということが判明しました。*2

このように、仕事にしても、学習にしても、適度に緩急をつけることが、パフォーマンスを向上させるのです。
つまり、社員を監督する側のマネジャー側も「なるはやで頑張ってくれ」などと言わずに、締切をきちんと提示することが重要になってきます。

継続的なストレスが大きな問題を起こす

そして継続的に「頑張り続ける」ことは、後になって大きな問題を引き起こします。

精神科の樺沢紫苑さんは、ビジネスパーソンのうつ病の原因が「長時間頑張り続けること」にあると指摘します。
彼は「うつ病と自殺予防」を専門とし、現在では、非常勤の立場で精神科医の診療をしている方です。

今、ビジネスパーソンのうつ病が急増していますが、その原因の多くは、過度に「がんばろう」と自分にプレッシャーをかけ続けることで、自分でストレスを生み出していることがあります。日々の生活にストレスはつきものですが、それが何週間も「持続」することで、「うつ病」などの大きな問題に発展していきます。一回、二回のストレスではなく、日々のムリにムリを重ねていく継続的なストレスが、心と脳に悪影響を及ぼします。*3

そして、緩急をつけるのに有効なのは、「意識的にサボる」ことであると言っています。

猛暑でなくても、誰にだって、なんとなく気がのらない日があります。
そんな時は、ムリをせずに休んでしまえばいいのです。*4

そしてそのためには、「自分の状態を自分で把握しておくこと」も重要でしょう。1日のうち、いつが一番パフォーマンスが上がるのか。朝なのか夜なのか。自分はどんなときにパフォーマンスが下がるのか。
「今はちょっとパフォーマンスが下がっているな」と自分で判断し、無理しないようにする癖をつけるためには、自分の状態を把握することが大事です。

それから思い切ってサボるのは勇気がいるかもしれません。職場の雰囲気的に「サボるなんてとてもとても」という人もいるかもしれませんが、自分のパフォーマンスを上げるためには、ある程度は「頑張っているフリをやめる」ことも必要です。

疲れたら思い切って「昼寝する」ことも有効

私がよくやっているのは、「疲れたな」と思ったら、短時間、寝てしまうことです。

東京都渋谷区にあるGMOインターネットには、昼寝をするための部屋「GMOシエスタ」があるそうです。

「スタッフが頭をクリアにし、クリエーティブな発想を生み出す助けをする」(広報)ことを目的に、5年前に開設した。*5

最近私が取材したマレーシアのコワーキングスペースにも、やはり「仕事効率が上がる」ということで、仮眠するためのベッドが置いてありました。
日本でも、昔いた編集部には仮眠室があり、昼間でも数十分の睡眠をとることができました。
昼寝をすると、頭がスッキリし、集中できることがあります。リモートワークで自宅で仕事しているのなら、昼寝を取り入れるのはおすすめです。

もちろん、仕事の内容や状態によって、緩急の付け方には個人差もあるでしょう。「ずっと頑張り続ける」状態に陥っていることに気づいたら、一歩立ち止まってみることも重要です。


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【エビデンス】
*1 サライ
自律神経を整えるのはどっち?|仕事が長時間続く時の休息は、勤務中こまめに、帰宅後ゆっくり?【不摂生でも病気にならない人の習慣】

*2 ベネッセホールディングス(プレスリリース)
学習時間を細かく分けた「45分」で「60分」と同等以上の学習効果を発揮 “長時間学習”よりも短時間集中の“積み上げ型学習”が有効であった
<勉強時間と学習の定着・集中力に関する実証実験>

*3 *4 樺沢紫苑.「精神科医が教える!潜在能力を引き出す25の心得」

*5 日経スタイルキャリア「昼寝20分」働き方改革 午後の仕事、効率アップ


【著者】のもときょうこ
文筆家・編集者。早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者、「マレーシアマガジン」編集長などを歴任。著書に「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)「マレーシア小・中・高校生留学の基礎知識: 進学方法と知っておきたいこと 」(キンドル版)。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。