転職活動を進めていく中で、「業務の引継ぎが不安」「後任がいないから辞められないかもしれない」と不安に感じている方もいるかもしれません。
今回は円満退職するための引継ぎの手順や、引継ぎするときに考えられる悩みとその対処法を説明していきます。
もし「引継ぎが終わらなければ退職は認めない」「後任が決まるまでは延長」と言われても、きちんと手順を踏めば退職することは可能です。
円満退職するためにも、早いうちから引継ぎの準備を進めておきましょう。
円満退職するための引継ぎ手順
転職成功は、自分の希望通りの企業に入社することだけではありません。
前の会社を円満に退職することも、成功する転職の条件の1つです。
ここでは、会社を円満に退職するための引継ぎの手順についてご紹介します。
- 業務を洗い出して可視化する
- 引継ぎについて上司と相談する
- 引継ぎのスケジュールを決める
- 引継ぎ資料を作成する
- 引継ぎ後にフォローできる期間を設ける
1.業務を洗い出して可視化する
転職することを決めたら、業務の洗い出しを行いましょう。
自分が担当している業務をすべて書き出し、種類ごとに分類し、その業務にかかる時間を把握します。
実際に引継ぎが始まるのは、退職希望を会社に伝えてからですが、業務を洗い出す作業は、転職しようと決意したときから少しずつ開始しておくことがおすすめです。
2.引継ぎについて上司と相談する
具体的に退職日が決まったら、引継ぎについて上司と相談することが大切です。
業務の引継ぎ方法は、新たに人材を採用する、社内からアサインする、業務を分類して別の部署に引き渡すなど様々です。自分一人で決められるものではありません。
「どの業務」を「誰に」「いつまでに」引き継ぐのか、上司と相談しましょう。
また退職前に有給休暇を取りたい場合は、最終出社日の希望や目安を伝えておきます。
3.引継ぎのスケジュールを決める
上司との相談を終えたら、後任への引継ぎと残務処理にかかる時間を計算し、優先順位をつけながら、退職日から逆算してスケジュールを組みます。
引継ぎのゴールを退職の3日前に設定すると、不測の事態にも対応することが可能です。
決められたサイクルで発生する業務や定型化されている業務を引き継ぐ場合は、その業務の実施タイミングに合わせてスケジュールを調整します。
それ以外の業務や、タイミングが合わない場合は、資料や説明のみでの引継ぎになります。
スケジュールに余裕を持って、後任が戸惑わないように丁寧に引継ぎましょう。
4.引継ぎ資料を作成する
後任の担当者に業務内容を正確に引き継ぐためにも、引継ぎ資料は必ず作成してください。
業務の流れや実務作業の要点などを、テーマ別や取引先別などに整理し、誰が見ても分かるように工夫すると良いでしょう。*1
記載項目は仕事内容によっても違いますが、次のリストを参照してください
後任のアサインに時間がかかると、短期間での引継ぎを余儀なくされたり、「退職日を延ばしてもらえないか」などの打診をされたりするかもしれません。
迷惑を最小限に抑え、予定通りに退職するためにも、引継ぎの準備を念入りに行いましょう。
5.引継ぎ後にフォローできる期間を設ける
引継ぎ期間に余裕がある場合は、引継ぎをした後にフォローできる期間を設けましょう。
説明を聞いたり、資料を見たりしただけでは、実際に業務をしたときに思わぬミスにつながる可能性もあります。
「困っていることがないか」などと引継ぎ後のフォローをすることで、トラブルや問題を防ぐことが可能です。
引継ぎに関する悩みと対処法
転職することを決めて退職を決意しても、「後任がいなくて引き止められた」「引継ぎを行う時間がない」などの悩みが出てくると思います。
ここでは引継ぎするときに考えられる悩みについてお答えします。
- 後任がいなくて退職を認めてもらえない場合は?
- 引継ぎを適当に済ませても大丈夫?
- 「引継ぎ優先、有給休暇は認めない」と言われたら?
ぜひ、参考にしてください。
後任がいなくて退職を認めてもらえない場合は?
退職したいと伝えても「引継ぎが終わらなければ退職は認めない」「後任が決まるまでは延長」などと言われてしまうと、「退職できない」と悩んでしまうかもしれません。
しかし民法上では、退職届を出して2週間経過すれば退職は認められますので、周りが強制的に引き止めることはできません。*2
ただし引継ぎなどを放棄して会社に損害を与えた場合は、損害賠償請求される可能性がありますので注意が必要です。*3
そのため、引継ぎ期間を考慮したうえで、退職を申し出るようにしましょう。
もし退職を希望しても退職届を受け取ってもらえない場合は、退職について相談した日、退職届を提出した日(受け取らなかった日)と当日の状況等を、メモに取っておいてください。*2
引継ぎを適当に済ませても大丈夫?
退職日が近づき引継ぎの時間がなくなると「引継ぎは適当に済ませてしまおうかな」と考えることがあるかもしれません。
しかし、引継ぎを適当に済ませるのは絶対にやめましょう。
引継ぎを適当に行うと、お世話になった取引先、上司や後任の担当者に迷惑をかけることになり、クレームや売り上げの損失につながる可能性があります。
さらには、引継ぎで社内の評判を落としてしまうと、採用企業が以前の職場に応募者の経歴や人柄を確認する「リファレンスチェック」に影響することも考えられます。
リファレンスチェックは最終面接の後に行われることが多いため、「最終面接で手応えがあったし、今の仕事は適当で良いや」と考えていると、痛い目に合う可能性があるのです。*4
転職活動を成功させるためにも、最後まで自分の仕事は手を抜かずに行いましょう。
「引継ぎ優先だから有給休暇は認めない」と言われたら?
年次有給休暇は法律で与えられた権利ですので、原則として会社側は労働者が請求する時季に有給休暇を与えなければいけません。*5
例外として、事業の正常な運営を妨げる場合には、ほかの時季に変更できるようになっています。
しかし退職後に時季を変更することはできませんので、結果的に退職前の有給休暇申請を認めるしかありません。
上司が認めてくれない場合には、労務など社内の別の人に問い合わせてみましょう。
しかし従業員に対しても「権利を行使するときには会社の信頼や期待を裏切らないよう誠実に行わなければならない」という義務があります。*5
一方的に有給休暇の権利だけを主張するのは、望ましくありません。
また引継ぎをまったく行わずに退職した場合には、損害賠償請求をされる可能性もあります。
円満退職するためにも引継ぎに必要な日は出勤し、最後まで誠実な態度を心掛けましょう。
まとめ
今回は、引継ぎするときの手順や、転職時の引継ぎに関して想定される悩みについて説明してきました。
転職活動を始めると、予定よりも早く内定が出る場合があります。
引継ぎの時間が十分取れるように、早めに準備を進めておきましょう。
あなたの転職活動が上手くいくことを願っています。
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【エビデンス】
*1マイナビ転職「3.スムーズな引継ぎに必要なものは?」
*2マイナビ転職「退職を認められない場合、会社を去る方法は?」
*3マイナビバイト「法律では2週間前!バイトを辞めたい時はいつ言えばいいか、弁護士が解説」
*4マイナビニュース「中途採用における「リファレンスチェック」とは?–グローバル企業41%が実施」
*5マイナビ転職「退職直前の有給休暇は法的に問題アリ?」
【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。