DEAR KISS(ディアキス)プレイングマネジャー
四島早紀/SHISHIMA SAKI
福岡県久留米市出身、自称9頭身
Twitter:@saki_shishima
Instagram:saki_shishima
裏方の方々のご苦労やサポートがあるから、アイドルは華やかな表舞台でキラキラ輝いていられるんです。身をもってその有難みを知っている―それが私の強みだと思います。
そう語るのはアイドルグループ“DEAR KISS”のメンバー兼プレーイングマネジャー・四島早紀さん。
大人のアイドルグループならではの息の長い活動を目指して日々努力を重ね、数々のライブでクールなパフォーマンスを披露するかたわら、裏方の仕事もきっちりこなす。現在注目されつつある新しい働き方、デュアルワークの実践者だ。
そんな四島さんに、セカンドキャリアに一歩踏み出すためのヒントをいただいた。
―“DEAR KISS”オフィシャルサイトのプロフィールには、栄養士免許と医療実務の免許をお持ちとあります。そのような資格が生かせるお仕事も考えていらっしゃったのでしょうか。
ーでは、アイドルになろうと思われたきっかけはなんでしょうか。
短大に行く前は全然興味がなかったんですが、福岡で短大生になった時に各大学のミスキャンNo1を決める「キャンパスクィーンコレクション」があったんですね。そこで最終選考に残ったメンバー9人で結成されたガールズユニットに参加することになりました。
その時はアイドルとかじゃなくて、雑誌やCMの撮影がメインだったんですが、ある日突然その中の1人が「歌をやってみたい! みんなでやっちゃおうよ!」って言い出したんです。
ただ、その時は歌にもダンスにも興味がなかったので少し迷ったのですが、「みんなで一緒にやれるんだったら、楽しいかも」と思って、そこから本格的に歌やダンスの勉強を始めて・・・というのが、アイドルになったきっかけです。
そのうち、当時所属していた事務所から「これからはアイドル路線でいこう」と言われました。
そんなふうに、自然の流れでアイドルになったんです。
ープロフィールにはさまざまなアイドルグループを経て今に至ったとありますが、“DEAR KISS”のメンバーになられるまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか。
最初は、先ほどお話ししたように、福岡のミスキャンパスのアイドルグループでやっていたのですが、短大を卒業するときにそのグループも卒業しなければならないような雰囲気があって、結局そのグループ自体が解散しました。
それで、しばらくはOLをやっていたのですが、北九州の商業施設から、商業施設のイメージガールをやってみないかとオファーをいただきました。そのオファーをお受けしてイメージガールをやっていたら、そのままアイドルグループを作ってこの商業施設を盛り上げたいというお話が持ち上がり、アイドルグループが結成されて、その初期メンバーになりました。
そのグループでしばらく活動していたのですが、そのうち方向性の違いというのでしょうか、今やってることは自分が本当にやりたいことではないんじゃないかと思うようになりました。
それで、そのグループを脱退して、東京を拠点にしている“DEAR KISS”に入れていただくことになったんです。おかげさまで、それから“DEAR KISS”の活動が軌道に乗り、メジャーデビューも果たせました。
振り返ってみると、“DEAR KISS”に入るために上京したときが、私にとって大きな節目でしたね。そのとき意識が大きく変わって、本物のプロになるのだと覚悟が決まりました。
ーキャリアを築いてこられる中で「壁」や「挫折」を感じられたことはありますか。
「挫折」とまではいきませんが、一番大変だったのは、“DEAR KISS”を今のメンバーで再結成したときのチームビルディングです。当時は個々のメンバーのパフォーマンスにもばらつきがあったので、そこを調整しつつ、盤石なグループを作り上げていくのが、結構大変でした。
でも、おかげさまで、今は私も含めて5人のメンバーそれぞれが個性的でありながらも、目指す方向性は同じで、一体感のあるいいグループになったと思っています。
それ以外の「壁」はやはりコロナ禍ですね。
ライブができなくなって、ファンの方の声が直に聞けなくなったのは本当に辛かったです。でも、すぐにオンライン上でお客様と交流ができるようになったので、ほっとしています。
とはいえ、しばらくツアーに行けていないので、そろそろ全国ツアーを再開したいですね。
他には特に「壁」や「挫折」を自覚したことはありません。なにかあったかもしれませんが、もともとポジティブなタイプで、大抵のことは一晩寝たら忘れてしまうんですよ(笑)
ー今までのご経験で「もっとこうしておけばよかった」ということはありますか。
英語の勉強ですね。
コロナ禍の前はシンガポールや香港など、月に1回は海外でライブをやっていました。そういうときにはMCは英語で、少しずつ分担していたんですが、あちらのファンの方々って、結構英語でフランクに話しかけてきてくださるんですよ。
そういうときにスムーズにお話しすることができないので、とても残念です。でも、また海外でのお仕事も再開すると思いますので、これから頑張ります。
ーでは、逆に、「こうしておいたのでよかった」ということはいかがでしょうか。
プレーイングマネジャーとして、SNSでグループの動画やさまざまな情報を、以前からマメに発信してきたのはよかったと思っています。
SNSでつながっているファンの方たちも大勢いらっしゃって、その方たちと交流できますし、ライブにも来ていただけますので。
ー今おっしゃったように、現在所属なさっている“DEAR KISS”ではマネジャーを兼務なさっています。そういう方はおそらく他にいないのではないかと伺いましたが、どうしてアイドルとマネジャーを兼務なさっているのでしょうか。
“DEAR KISS”に入った時点で私は25歳だったんですね。年齢を考えると、アイドル1本でこれから先もずっとやって行くのは厳しいのではないかという気持ちが、そのときはありました。
それで、アイドルの他にもできることがあったら、それも同時にやっていきたいと思って、マネジャーを兼務させていただくことになったんです。
ーマネジャー業務とは具体的にはどのようなものですか。
主な業務はSNSの更新と企画への参画、そしてスケジュール管理ですね。
SNSは、ツイッターやインスタグラムなどに頻繁に投稿しています。その他、メーカーさんと一緒に打ち合わせに入ったり、その内容をスタッフやメンバーと共有したり、グループだけでなく個々のメンバーのスケジュールを管理したりしています。
ーマネジャーとプレイヤーの両立から得られた視点や考えはどのようなものでしょうか。
アイドルは表舞台に立つ仕事なのですが、マネジャー業をすることで、裏方の方々の有難みが肌で分かっていることですね。
明るい華やかな世界だけしか知らないと、どうしても自分たちを支えてくださっている方々の存在やそういう方々への感謝の気持ちを忘れがちになってしまうかもしれません。
そういう意味では、アイドルだけでは得られなかった視点が持てているのではないかと思います。
ファンの方々にも、「私たちファンを大切にしてくれてありがとう」とよく言っていただくのですが、そう言っていただけるのは、どなたに対しても感謝の気持ちを忘れないという姿勢が自然に伝わっているからかもしれません。
もし、私がプレーイングマネジャーをさせていただいていることで、そんなふうにグループに貢献できているとしたら、とても嬉しいです。
ーアイドルとマネジャーのバランスを変えていくお考えはあるでしょうか。
それが、私はこれまでアイドルとマネジャーの仕事を分けて考えたことがないんですよ。境界がないというのでしょうか、“DEAR KISS”に加入したときから、どちらもがむしゃらにやってきて、どちらも大好きなので、線引きが難しいんですよね。
ですから、このままどちらも 頑張れるところまで頑張りたいというのが本音です。
ー今後のキャリアについて何か構想はお持ちですか。
まず、アイドルグループとしては、グループとしての活動も大切にしつつ、個々のメンバーがもっとソロ活動もできるようにしていきたいですね。
私個人としては、単独で雑誌のモデルやCMのお仕事をさせていただけたらと思っています。
それから、プロとして円熟したパフォーマンスを見ていただけるような、息の長い大人のアイドルグループを目指しています。
若いアイドルの皆さんは若さでキラキラ輝いていますが、大人のアイドルには大人のアイドルならではの魅力があるのではないでしょうか。例えば、歌詞の解釈でも、ちょっとした動きでも、若いときとは違う捉え方や見せ方ができると思うんです。
今のメンバーは皆大人なので、精神的にも落ち着いていて、他の人の話に耳を傾けることができますし、他の人に意見を言うときには優しい表現で伝えるなど、お互いに尊重し合うことができています。
このメンバーで、これからも末長く活動していけたら幸せです。
それから、プレーイングマネジャーとしては、これからもっと若い人たちを育てていきたいですね。
事務所には男の子のグループも女の子のグループもありますが、もっとグループを増やしていきたいと考えていますので、今までのアイドル人生から私が学んできたことを、若い人たちに伝えていけたらいいなと思っています。
ー四島さんのように、ご自分が望む生き方をしたいけれど、迷いや不安があって最初の一歩がなかなか踏み出せない方もいらっしゃるのではないかと思います。そんな方々に向けて、ご自分のご経験から何かお伝えいただけることがありましたら、ぜひお願いします。
私自身、大した生き方をしてきたわけではありませんので、アドバイスなどおこがましいのですが、私に言えることがあるとすれば、気軽な気持ちで、できることをちょっとやってみる、というスタンスも必要かもしれないということでしょうか。
ガチガチに身構えてあまり深刻に考えてしまうと、最初の一歩を踏み出すのが難しいですよね。
私は「若いうちはチャレンジあるのみだ」と思って、目の前にやりたいことがあったら、とりあえず挑戦してきました。
チャレンジとまでいかなくても、今なにかやりたいことがあったら、ちょっと試してみるくらいの気持ちでトライしてみるのも悪くないかもしれません。
ただ、私の場合、そうした挑戦をしてこられたのは、デュアルワーカーだからかもしれません。最初にお話ししたように、いくつか免許ももっていますし、現在はアイドルとプレーイングマネジャーの仕事を兼務しています。この2つはどちらもやりがいがあり、私にとって大切な仕事です。
でも、だからこそ、もしなんらかの理由でどちらか1つという状態になっても、残った1つだけでもやっていけるんじゃないかと思うんです。
そういう状況なので、挑戦へのハードルが低いということはいえるかもしれません。
仕事でも資格でも、「もう1つ持つ」ことで不安が消えて、一歩踏み出す勇気が湧いてくるのであれば、それも1つの方法ではないでしょうか。
そんなふうにして、少しでもハッピーだと思える方向を目指すことができたらいいですね。
ーもし転職エージェントにご自分のキャリアについてご相談なさるとしたら、どのようなサポートを望まれますか。それはなぜでしょうか。
私は今まで主にアイドル人生を歩んできましたが、他に私に向いているお仕事はなにかアドバイスをいただけたら嬉しいです。
もしかしたら、自分が思ってもいない仕事に向いているかもしれませんので、プロの方の視点から是非アドバイスをいただきたいですね。
ー最後に転職エージェントの方々に向けてのメッセージをお願いいたします。
そうですね、参考にしていただけるかどうかわかりませんが、私がこれからプレーイングマネジャーとして人を育てる仕事をしていきたいと思っているのは、目標に向かって若い人たちと一緒になって取り組んでいくところに、とてもやりがいを感じるからなんです。
もしかしたら、転職エージェントのお仕事にも同じような側面があるのではないでしょうか。
転職を考えていらっしゃる方と一緒になって目標に向かっていく中で、相手に寄り添ってサポートする―それはマネジャーの仕事でも同じです。
私は、「この人ちょっと追い詰められてるな」と思った時には、アドバイスより先に、まずは「どうしたの?」から聞くようにしています。
ケースバイケースなので難しいのですが、「頑張れ」と言っちゃうとその人の負担になってしまうこともありますから、とりあえず話を聞いてあげることが大切なのかもしれないと思うんです。
タッグを組んだ相手に心を沿わせながら、相手がハッピーだと思えるところを一緒に目指していく―そんなやさしい関係が築けたらいいですね。
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【インタビュアー】横内 美保子
博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。
パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。
はい。もともとアイドルになるつもりは全くなかったので、資格を生かして末長く働ける、専門性を備えた仕事をするつもりでした。それで、短大在学中にがんばって資格を取りました。