人材紹介会社の禁止事項とは?職業安定法のルール・罰則を解説


人材紹介ビジネスは、「職業安定法」という法律で規制されています。

したがって人材紹介会社は、職業安定法の規定を遵守して業務を運営しなければなりません。

もし職業安定法に違反すると、最悪の場合刑事罰の対象となってしまうので、十分に注意して業務運営に当たりましょう。

この記事では、人材紹介会社が遵守すべき職業安定法のルールや、違反時のペナルティなどを詳しく解説します。

職業安定法上の人材紹介会社に対する行為規制の内容

人材紹介会社は、職業安定法に基づき、「有料職業紹介事業」の許可を受けて業務を行っています。

有料職業紹介事業を営む事業者には、以下の各行為規制が課されており、厚生労働大臣の監督下でこれらを遵守することが必要です。

手数料に関する規制

人材紹介会社の主な収入源は、クライアント企業から受け取る手数料です。

そのため、できるだけ多くの手数料を受け取りたいと考えがちですが、実は人材紹介の手数料には厳しい規制が設けられています(職業安定法32条の3)。

①手数料は原則として事前届出制
職業安定法上、人材紹介会社が届け出なく収受できる手数料の上限は、6か月間の賃金総額の11%(税込)です(同条1項1号、同法施行規則20条1項、同別表。免税事業者の場合は10.3%)。
なお、受付手数料として、1件当たり710円(免税事業者は660円)を収受できます。
これを上回る手数料を収受する場合には、手数料表をあらかじめ厚生労働大臣に届け出なければなりません。

②求職者から手数料を徴収することは原則禁止
人材紹介会社は、企業ではなく求職者の側から手数料を徴収することを、原則として禁止されています(同条2項)。
これは、経済的に困難な状況にある可能性が高い求職者に対して、過大な負担を強いることがないようにするためです。

芸能家・モデル・科学技術者・経営管理者・熟練技能者については一部例外が定められていますが、基本的には求職者からの手数料徴収は不可であると理解しておきましょう。

名義貸しの禁止

人材紹介会社は、自己の名義をもって、他人に有料の職業紹介事業を行わせてはならないとされています(職業安定法32条の10)。

有料職業紹介事業が許可制である以上、名義貸しは無許可営業に加担する行為ですので、違法とされているのは当然でしょう。

紹介が禁止されている職業がある

人材紹介会社は、すべての職種について人材紹介業務を行えるわけではなく、紹介可能な職種に以下の制限が加えられています。
実際の業務では、自社が紹介可能な職種の範囲内でのみ人材紹介を行うように留意しなければなりません。

①港湾運送業務・建設業務は一律紹介禁止
まず、港湾において物流に携わる「港湾運送業務」と、建設現場の作業員などの「建設業務」については、有料職業紹介事業の許可に基づく紹介が一律で禁止されています(職業安定法32条の11第1項)。

②それ以外の業務は届出の範囲でのみ紹介可
上記の一律紹介禁止に該当しない業務であっても、人材紹介会社は、厚生労働大臣に対してあらかじめ届け出た職種に限り、人材紹介を行うことができます(同法第32条の12第1項)。

求人者・求職者に対して明示しなければならない事項がある

人材紹介会社は、以下の事項につき、求人者(企業)および求職者に対して、原則として書面であらかじめ明示しなければなりません(職業安定法32条の13、同法施行規則24条の5第1項)。

業務運営の透明性を確保するためにも、確実に明示義務を果たすようにしましょう。

・取扱職種の範囲等
・手数料に関する事項
・苦情の処理に関する事項
・求人者の情報および求職者の個人情報の取り扱いに関する事項
・返戻金制度に関する事項

責任者不在での人材紹介は禁止

人材紹介会社が有料職業紹介事業を営む場合、事業の管理を適正に行う能力がある責任者を選任することが必須とされています(職業安定法32条の14)。

責任者として認められるためには、5年ごとに厚生労働大臣が定める講習を受講する必要があります(同法施行規則24条の6第2項第1号)。

そのため、責任者は定期的に講習を受けるとともに、万が一責任者が退任してしまう場合には、迅速に後任を選定したうえで講習を受けさせてください。

帳簿の備付け・事業報告等の義務がある

その他、有料職業紹介事業を営む人材紹介会社には、以下の義務が課されています。

いずれも税務署や監督官庁への対応との関係で重要ですので、確実に義務を履行しましょう。

・帳簿書類の作成、事業所への備付け(職業安定法32条の15)
・事業報告書の作成、提出(事業所ごと。同法32条の16第1項)
・就職者数、離職者数、手数料などに関する情報提供(同条2項)

人材紹介会社が職業安定法に違反した場合のペナルティ

人材紹介会社が職業安定法に違反した場合、業務停止命令・許可の取消し・刑事罰といった重いペナルティが科されてしまいます。

人材紹介会社は、業務を安定的に運営するためにも、各種の行為規制をきちんと遵守することが大切です。

業務停止命令

職業安定法の各種規制に違反した場合や、労働者派遣事業を無許可で行った場合などには、期間を定めて有料職業紹介事業の全部または一部の停止が命ぜられる可能性があります(職業安定法32条の9第2項)。

業務停止命令を受けると、クライアント企業の大半を失ってしまうことになりかねないので、十分に注意が必要です。

許可の取消し

法令違反の程度が悪質な場合には、さらに重い処分である許可の取消しが行われるおそれがあります(同条第1項)。

また、業務停止命令後の改善指導にもかかわらず、改善の兆しが見られない場合にも、許可の取消しの対象となる可能性があります。

有料職業紹介事業の許可が取り消された場合、今後一切、人材紹介ビジネスを行うことができなくなってしまうので要注意です。

刑事罰

さらに、職業安定法違反の各行為には、以下の刑事罰が科されます。

さらに、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯した場合には、行為者に加えて、法人にも同様の刑事罰が科されます(同法67条)。

代表者などが刑事罰を受けた場合、刑事罰そのものによるダメージに加えて、世間的な評判が失墜してしまう点が致命的です。

人材紹介会社は、万が一にも刑事罰などのペナルティを受けることがないように、コンプライアンスを徹底して健全な業務運営を行いましょう。

まとめ

人材紹介ビジネスを営む場合、その業務が厚生労働大臣の監督下にあることを十分理解したうえで、職業安定法などの法令を遵守した公明正大な業務運営を行うことが大切です。

これから人材紹介ビジネスを始めようとする事業者の方は、法令のルールをきちんとインプットし、業務の中で実践してください。


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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
HP:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw