争奪戦続く「IT人材」「AI人材」、具体的にはどのような人物が求められているのか?

日本では「IT人材」「AI人材」が不足している——

よく耳にすることかと思います。

DXの必要性が強調される一方で導入が進まないのは人材不足が原因である、というのは事実です。しかし一方で、ここでいう「人材」として求められているのはどんな人たちかというのは漠然としている部分もあります。

そこで今回は、「IT人材」「AI人材」の具体像についてご紹介したいと思います。

広がる「IT人材」「AI人材」の不足感

経済産業省によると、AIなどを使いこなすIT人材の不足は、2030年には78.9万人に拡大すると予測されています(図1)。

図1:2030年のIT人材の需給(出所:「AI人材育成の取組」経済産業省) p1
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinzai_ikusei/pdf/001_03_00.pdf

ITやAI人材とは、大きく2種類に分かれます。

実際にシステム開発に携わるベンダー企業(エンジニア)と、提供されるIT・AI技術を使いこなし、新しいビジネスモデルを作り上げる人です。

システム開発を手がけるIT企業での人手不足は深刻です。しかしそれ以上に重要な問題があります。

情報処理推進機構の調査によると、ITやAIの「システムの使い手」であるユーザー企業でこのような人材不足が発生しているのです(図2)。

図2 ユーザー企業におけるAI人材の不足等
(出所:「人工知能(AI)の導入や活用に必要なAI人材(コラム)」情報処理推進機構)
https://www.ipa.go.jp/ikc/mailmag/vol23_column.html

アルゴリズム開発やソフトウェア、システムの開発者は、ユーザー企業であればそう多くは必要ないとしても、問題は

「理解がある」

「製品・サービスを企画できる」

「データ分析を行い事業に活かせる」

「自社へのAI導入を推進できる」

人が足りないという状況です。

IT・AI人材の不足というのはソフト面での不足と言えるでしょう。

つまり「アイデアマン・アイデアウーマン」の不足のほうが問題なのです。

よって、「IT人材」「AI人材」は理系のエンジニアだけを指すという考え方はもはや通用しません。

では、エンジニアかそうでないかで、必要とされるスキルについて見ていきましょう。

求められるエンジニア像

これからのエンジニアに求められるスキルとはどのようなものか、分野と人物像についてご紹介します。

「エンジニア」と一括りにしてはいけない

経済産業省の調査によると、AIを含む先端IT人材の中でも、今後不足する分野は以下のとおりです(図3)。

図3 今後不足する先端IT人材の分野
(出所:「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf  p10

質・量共に重要であることもわかります。

そして、質として具体的に求められているのは以下のような要素です(図4)。

図4 先端IT人材に求める「質」(出典:「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf  p10

注目したいのは上から2つめ、3つめの項目です。

エンジニアとしての知識や技術があったとしても、それらを用いてどのような製品やサービスが生み出せるか具体化できない、販売を拡大できないことが課題になっているのです。

エンジニアに求められる「ハードスキル」と「ソフトスキル」

エンジニアには大きく分けて、2つのスキルがあります。

  • ハードスキル=AI、ビッグデータ、クラウドと言った技術的スキル
  • ソフトスキル=関係部門や社外とのコミュニケーション力、業務変革や新ビジネスを企画する能力

IT専門調査会社であるIDCジャパンが、企業のDX推進度合いとエンジニアに求める資質の関係を調査したところ、このような結果が出ています(図5)。

図5 デジタル人材における「ハードスキル」と「ソフトスキル」の重要性比較
(出所:「国内企業のデジタル人材に関する調査結果を発表」IDC Japan)
https://www.idc.com/getdoc.jsp

経営と一体化したロードマップを策定している企業、つまりDXの推進度合いが高い企業ほど、ハードスキルとソフトスキルのバランスを求めるようになっています。

よって、エンジニアの紹介にあたっては、求職者のハードスキルだけでなくソフトスキルについても十分なヒアリングをする必要があります。

自分の持っているスキルでどのような製品やサービスを生み出せるかという具体案を持っているエンジニアこそ、今後求められる人材とも言えます。

エンジニアでなくても求められる「IT・AI人材」像

先にも述べましたが、「IT・AI人材」=理系、ではありません。

具体的なプログラミングまでできなくとも、基礎的なITリテラシーがあり、それを事業に活かせる人の存在が必要とされます(図6)。

図6:第四次産業革命の下で求められる人材(出所:「AI人材育成について」経済産業省)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/dai5/siryou4.pdf p3

図6でいうところの「ビジネスプロデューサー」が求められるのです。これはエンジニアであってもそうでない人であっても構わないのです。

よって、ここでも、ITやAIの詳細な技術的知識はさておき、先端技術でどんなことができると思うか、したいのか、という部分をはっきり持っている人材には需要があることでしょう。

そして、将来のリーダーになれる素養があることも大切です。

求人企業からもヒアリングを

日経BP総合研究所総合イノベーションICTラボが上場企業など約900社から回答を得た調査によると、IT・AI人材の採用にはこのような悩みがあるようです*1。

  • 外部登用したデータサイエンティストが事業そのものに関心がなく、期待していたデジタル変革が進まない
  • 自社のビジネスを理解しながらDXを推進できるリーダーが足りない
  • ITを活用して課題を解決しようと考える担当者が不足している
  • 新しい業務やビジネスのあり方などグランドデザインを描ける人材を増やしたい

求人企業側がそもそも「DX」について明確な目的や認識を持っていないというケースもあるでしょう。

具体的に何をしたいかが明確でなかった求人企業から後出しで「期待していた人材と違った」と言われてしまっては困ります。

そこで企業側からもあらかじめ要望をしっかり聞くことでミスマッチを防げますし、人材紹介会社への信頼にも繋がります。

「技術がある」というだけでなく、「特定の業界の経験がある」というだけでもない、まさにハードスキルとソフトスキルのバランスを持った人材を送り込めるように備えておきましょう。


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【エビデンス】
*1「『AI人材増やせばデジタル変革は進む』という誤解—900社DX実態調査(3)」日本経済新聞電子版 2020年2月10日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54886440X20C20A1000000/


【著者】清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka