キャリアコンサルタントになるには 難易度や試験内容、合格後の活かし方を詳しく解説

人材紹介会社で役に立つのが、キャリアコンサルタントの国家資格です。

キャリアコンサルタントの資格を得るには、国家試験に合格しなければなりません。

試験にあたってはキャリアコンサルティングを行うために必要な知識のほか、キャリアコンサルティングの社会的意義などについても学習が必要です。

そこで今回は、キャリアコンサルティング試験とはどのようなものか、詳しく見ていきましょう。

キャリアコンサルタントの国家試験とは

キャリアコンサルタントの受験条件はこのようになっています(図1)。

図1 キャリアコンサルタント資格の構造
(出所:「平成27年度「キャリア・コンサルティング研究会」報告書の概要 ②」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11805001-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Carrierkeiseishienshitsu/0000118711.pdf p2

試験を受けるには、まず、厚生労働大臣認定の養成機関で140時間の講習を受ける、あるいは実務経験3年以上の経験が必要です。

実務経験を受験資格として試験を受ける場合には、実務経験証明書が必要です。

試験に合格したら国が指定する機関へ登録し、資格保持者としてのキャリアコンサルタントを名乗ることができるようになります。

2019年5月現在では、全国で4万4000人を超えるキャリアコンサルタントが登録しています*1。

そして資格は、その後5年ごとの更新が必要です。

そこからさらに実務経験を積み、技能検定キャリアコンサルティング職種2級、1級とより高いレベルの試験に臨むことができます。

キャリアコンサルト講習・試験の概要

では、キャリアコンサルタントになるための講習や試験はどのような内容でしょうか。

キャリアコンサルタント講習の内容

講習では、このようなカリキュラムが組まれています(図2)。

科目範囲
キャリアコンサルティングの社会的意義1)社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解
2)キャリアコンサルティングの役割の理解
キャリアコンサルティングを行うために必要な知識1)キャリアに関する理論
2)カウンセリングに関する理論
3)職業能力の開発(リカレント教育を含む。)の知識
4)企業におけるキャリア形成支援の知識
5)労働市場の知識
6)労働政策及び労働関係法令並びに社会保障制度の知識
7)学校教育制度及びキャリア教育の知識
8)メンタルヘルスの知識
9)中高年齢期を展望するライフステージ及び発達課題の知識
10)人生の転機の知識
11)個人の多様な特性の知識
キャリアコンサルティングを行うために必要な技能1)基本的な技能
 ・カウンセリングの技能
 ・グループアプローチの技能
 ・キャリアシート(法第 15 条の4第1項に規定する職務経歴等記  録書を含む。)の作成指導及び活用の技能
 ・相談過程全体の進行の管理に関する技能
2)相談過程において必要な技能
 ・相談場面の設定
 ・自己理解の支援
 ・仕事の理解の支援
 ・自己啓発の支援
 ・意思決定の支援
 ・方策の実行の支援
 ・新たな仕事への適応の支援
 ・相談過程の総括
キャリアコンサルタントの倫理と行動1)キャリア形成及びキャリアコンサルティングに関する教育並びに普及活動
2)環境への働きかけの認識及び実践
3)ネットワークの認識及び実践
 ・ネットワークの重要性の認識及び形成
 ・専門機関への紹介及び専門家への照会
4)自己研鑽及びキャリアコンサルティングに関する指導を受ける必要性の認識
5)キャリアコンサルタントとしての倫理と姿勢
その他1)キャリアコンサルティングに関する科目
<引用:「キャリアコンサルタント試験について(カリキュラム)」厚生労働省>
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000637890.pdf p1

このように見ると、実に幅広い知識が必要であることがわかります。

社会・経済の動向や労働市場は常に移り変わりますので、最新の知識や過去との比較を把握する必要があります。

実務経験をもとに試験に挑戦するという人も、苦手な科目がある場合には何らかの準備をして臨む必要がありそうです。最新の法改正についてもチェックが必要です。

試験内容と合格率

試験は、厚生労働大臣が登録した以下の2登録試験機関で実施されています。

  • 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会
  • 特定非営利法人日本キャリア開発協会

具体的には、マークシート方式による学科試験、そして実技試験として論述試験と面接試験があります。受験者がキャリアコンサルタント役となり、15分間のロールプレイなどがあります*2。

合格率を見てみましょう。

第16回試験(2020年実施)でのキャリアコンサルティング協議会の合格者数は以下のようになっています(図3)。

図3 キャリアコンサルティング協議会での合格率
(出所:「第16回 キャリアコンサルタント試験 試験結果」キャリアコンサルティング協議会)
https://www.career-shiken.org/wordpress/wp-content/uploads/40_2020_CC_16_Results.pdf p1

同じく第16回試験の、日本キャリア開発協会での合格率はこのようになっています(図4)。

図4 日本キャリア開発協会での合格率
(出所:「第16回キャリアコンサルタント試験 試験結果」日本キャリア開発協会)
https://www.jcda-careerex.org/files/result/362summary.pdf p1

学科、実技を同時に受験した人の合格率は半分程度といったところでしょうか。

なお、学科試験または実技試験どちらかに合格している場合は、合格している試験の免除を受けることができます。

試験合格後に必要なこと〜キャリアコンサルタントの行動原則

厚生労働省は「キャリアコンサルタントの行動原則」を定めています。

キャリアコンサルタントの社会的意義は大きなものになっています。労働市場に影響を与える存在であり、また、障がいのある人や就職氷河期世代の支援、高齢者の就職を促進するという社会問題を解決する存在として期待されているのです。

国家試験が構造化されたのは、社会で重要性を増すキャリアコンサルタントの質を担保するため、という国の方針もあります。

職業紹介、というところにとどまらず、多様性を持つ依頼者の人生を支援する存在だということを忘れてはなりません。

厚生労働省が示している「キャリアコンサルタントの行動原則」とはこのようなものです。

<引用:「平成29年度 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業、各属性に共通する倫理的な留意点 」厚生労働省>
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000199626.pdf

そのためのキャリアコンサルティング技法について、厚生労働省は必要な各種ツールを公開しています*3。

これら5つは重要な姿勢です。

なるべく短期間にひとりでも多くの求職者に就職してもらおう、と考えることが良いとは限らないという目線です。

もちろん求職者・求人企業ともに少しでも速く紹介したい、と考えてしまいますし、事業としても回転率を考えてしまう部分もあるでしょう。しかしすぐに離職してしまう、あるいは合わない職場を紹介され健康に支障を来すことがあってはなりません。

そのように離職してしまった求職者は二度と依頼したくないと考える人がいるばかりではなく、現代は悪評がインターネットで即拡散されてしまう時代でもあります。

それだけでなく、早期離職者が続くと、求人企業からの信頼関係を壊してしまう要因にもなります。

自身が常に最新の傾向を知り、それを求職者・求人企業に伝えながら、長いビジョンで求職者のキャリア形成を考えてこそ信頼できるキャリアコンサルタントになり得ます。

人生を扱うということ

キャリアコンサルタントが扱うのは「求職者の人生」です。

資格はそのための第一歩でしかありません。

資格の更新が定期的に求められるのもそのためです。

求職者にとっても求人企業にとっても、長いパートナーでありアドバイザーであるために、資格保持者は強い自覚の元に、長期の伴走者として社会貢献するという意識が必要です。

余談ですが、覚醒剤使用で過去に逮捕された清原和博氏が、自分を逮捕した刑事に度々連絡を取って、話を聞いてもらっていたということを自身のTwitterで明かしています*4。

そのような姿勢こそ必要でしょう。


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【エビデンス】

*1、2「『国家資格キャリアコンサルタント』になって会社を元気にしてみませんか?」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000522295.pdf p1

*3「平成29年度 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consulting_gihou.html

*4清原和博 Twitter
https://twitter.com/kiyohara3_5_114/status/1394509433938477058


【著者】清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka