新型コロナウイルスの影響で、地方移住に関心を持つ人が増えています。
一方で地域によっては求人数が少ない場所もあり、そのマッチングは今後も課題になり続けるでしょう。
転職エージェントとしては、「地方移住」「地方の雇用創出」の機運をビジネスチャンスに変えることも可能な世相と言えそうです。
そこで今回は、地方をテーマにした新しい形の転職、再就職の斡旋について考察してみます。
ぜひ、今後のビジネスの展開にお役立て下さい。
コロナの影響で高まる地方への関心
新型コロナウイルスのパンデミックによって、多くの人が新しい生活のあり方を模索しています。
そのような中で、総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都からの転出超過が続いています(図1)。
入学や入社を控えた3月には東京都への転入者は多くなっていますが、それ以降は減少し、2020年7月以降はマイナスに転じている、つまり東京都から転出する人の数のほうが多くなっているという状況が続いています。
そして、地方では移住者が大幅に増えているところがあります。
その一例が宮崎県で、2020年の宮崎県内への移住者は755世帯1362人と、19年度の実績を3割も上回っているということです。
これは転勤や進学で一時的に住所を移した人ではなく定住目的で移住した人の数で、県としても新型コロナウイルスの影響の可能性があると考えています。
また、世帯代表者の年齢では、全体の8割超を40代以下が占めています*1。
地方暮らしへの関心はコロナ前から
下の図2は、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2020年1月に、20代から50代の人を対象に実施された調査の結果です。
2020年1月という段階でも全体の半数近く、49.8%の人が地方暮らしに関心を持っています。東京圏出身者でも45.9%の人が関心を寄せているという結果です。
また、これから「Z世代」が社会人となってくる時代です。Z世代の若者は社会問題や環境問題、SDGsに高い関心を持っており、かつ自分のペースや生活を大事にする側面があります。早期転職で地方移住を考える会社員が増えていく可能性もあるでしょう。
地方での雇用創出を支援する「地域雇用開発助成金」
さて、新型コロナウイルスの影響でテレワークの導入も増えました。結果、ワーク(Work)とバケーション(Vacation)をかけた「ワーケーション」といった言葉も流行するようになっています。
働く場所に制約がない場合、自然の多い地方に身を置いて、自分のペースで仕事をするということですが、こうした形は新型コロナウイルスによって始まったわけでもありません。
サテライトオフィス設置の動向
2000年前半からIT企業を中心にサテライトオフィスの誘致に成功していたのが徳島県神山町です(図3)。
過疎地域にあって若年層の関係人口を増やし、空き家問題を解消することにも役立っています。自治体としての問題解消と、新しい働き方を模索する人の需要がマッチした形です。
そして、地方へのサテライトオフィス開設数は増加傾向にあります(図4)。
なお、設置先として多いのは以下の地域です(図5)。
首都圏ではなく、北海道、徳島、沖縄、長野など地方への設置が多いことがわかります。
エージェントとしては、この流れを逃さず、新しいターゲットとして捉えたいものです。
都市圏が地方で現地採用の人材を求める、求人の少ない地域の人が都市圏に本社を置く企業への転入を求める、という新たな需給が生まれることが考えられます。
地域雇用開発助成金とは
その中で利用できそうなのが、地域雇用開発助成金(地方雇用開発コース)です。求人の少ない地域や過疎地域で雇用保険適用事業所となる施設を設置、整備し、それに伴って労働者を雇い入れた場合に支給されるものです。
主な要件は以下です(図6)。
相談窓口は最寄りのハローワークです。支給申請の手引きを厚生労働省が公表しています*2。
地方の現状をエージェント自ら確認して場合によっては拠点を作ることも可能ですし、求人企業に制度をお勧めすることもできます。
筆者の知人であるIT企業の経営者も、ある地方都市で営業拠点を作らないかと打診を受けたことがあるそうです。大企業でなくとも、地方の安い家賃や人件費を魅力と感じる経営者は少なくありません。
また、新しい雇用のあり方として、人材不足に悩む求人企業に提案をするきっかけにもなり、地方移住を考える転職者とのマッチングにも役立つでしょう。
「新しい時代」の働き方を意識して
この制度は、条件を満たせばエージェント自身が利用することも可能です。
地方にもネットワークを持つのは場所によっては悪いことではなく、特にオフィス誘致に積極的な自治体との関係を持つことはひとつの材料になるでしょう。
地方への移住が転職の新たな選択肢となりつつある現代において、様々な新しい働き方を提案できるエージェントは頼りになることでしょうし、社会問題解消の一助にもなります。
時代にマッチした強みを身につけるために、地方に目を向けてみるのはいかがでしょうか。
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【エビデンス】
*1 「昨年度の移住者が飛躍的に増加 新型コロナ影響で年の密避ける?」朝日新聞デジタル 2021年9月3日
*2 「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)支給申請の手引き」
【著者】清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka