転職失敗の原因かも?自分を過大評価する「ダニング=クルーガー効果」とは

転職の相談をしてくる人の中に、「根拠なき自信」を抱いている人が一定数存在します。

そんな人は、自分の能力を実際よりも過大評価してしまう心理現象の「ダニング=クルーガー効果」に陥っているかもしれません。

しかし転職活動を成功させるためには、自分の力量や特質を正しく把握することが大切です。

そこで今回は、ダニング=クルーガー効果とは何か、ダニング=クルーガー効果に陥ってしまう原因や転職成功に導くためのコツについて説明します。

ダニング=クルーガー効果とは?

ダニング=クルーガー効果とは、「能力の低い人ほど自らを過大評価する心理現象」のことです。*1

ダニングとジャスティン・クルーガーは、1999年に「能力の低い人は、自分の無能さを認識できず、自己を実際よりも高く評価する(ひいては自信に満ちて見える)」という認知バイアスに関する論文を機関誌『Journal of Personality and Social Psychology』に発表しました。*2

この論文では、ある特定のスキルに関して、能力のない人は「自らのスキルの欠如」「他者の本物のスキル」「自らのスキル不足の程度」が認識できないと主張しています。

さらにこの現象で興味深いことは、能力がないことによって、人はうろたえたり困惑したりするのではなく、むしろ不相応なほどの自信に満ちあふれているということです。

研究の結果、テストでDやFの成績を取る大学生は、自分の答案はもっと高い点数に値すると考える傾向があることや、運転免許証の更新に臨む高齢者は、自分の力を過大評価することが明らかになっています。

ダニング=クルーガー効果に陥ってしまう原因

ダニング=クルーガー効果に陥ってしまう原因は、自分自身を俯瞰して客観的に観察する力である「メタ認知」ができないことにあると考えられています。

ダニングとクルーガーが2012年に行なった「なぜ能力の低い人間は自身を素晴らしいと思い込むのか」という調査では、能力の低い人間は以下のような特徴があることが分かりました。*3

・自身の能力が不足していることを認識できない
・自身の能力の不十分さの程度を認識できない
・他者の能力を正確に推定できない

つまり能力が低い人は、自分を客観的に見るメタ認知ができないため、自身の能力が不足していることなどに気がつけないのです。

逆に能力が高い人は、メタ認知ができるので「自分ができたことは、他人もできるだろう」と客観的に自分を評価し推測します。

自己と他者を正しく比較し位置付けできるので、自分を過大評価してしまうことがありません。

転職成功に導くためのコツ

ダニング=クルーガー効果に陥っている人は、自分のことを客観的に評価できません。

しかし転職を成功に導くためには、求職者が自分の市場価値を正しく評価できるようになる必要があります。

ここでは「転職を成功に導くためのコツ」を5つ紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。

・自分の経験やスキルを整理してもらう
・客観的な評価に触れる機会を増やす
・失敗したらフィードバックする
・小さな成功体験を用意する
・否定する言葉は使わない

自分の経験やスキルを整理してもらう

まず、自分のことを過大評価している求職者には、「何ができるのか」「どの程度の経験があるのか」を、より具体的に整理してもらいましょう。

そして求職者の経験と希望する企業の条件を比較して、「自分は受かりそうか」「企業の求める条件を満たしているか」を客観的に判断してもらいます。

そこで「自分は高望みをしていた」と気がつけば、自分の身の丈に合った条件に変更することができるでしょう。

客観的な評価に触れる機会を増やす

いつまでも過剰評価を続ける場合は、客観的な評価に触れる機会を増やし、認知のゆがみを正しましょう。*4

複数のキャリアアドバイザーと面談を行ったり、いくつかの企業に応募したり、客観的な評価に触れる場を多く設けてみてください。

より多くの人からの意見を聞き、不採用なども経験することで、求職者自身も客観的な見方ができるようになるでしょう。

事実を明確化することで、認識と現実とのズレを改善できます。

失敗したらフィードバックする

根拠のない自信にあふれているのは、経験不足の可能性があります。

「会社で正しい評価やフィードバックを受けてこなかった」「転職が初めてで他の会社のことをまったく知らない」などの理由で、自分を客観的に評価できなくなっているのです。

失敗の経験をすることによって、自身の実力不足を認識できるようになるでしょう。

しかし失敗を経験しただけでは、なぜ失敗したのかが分かりません。

「運が悪かった」「採用しない企業が悪い」と考えてしまう可能性があります。

不採用になった場合には、「良かったところ」と「ダメだったところ」をフィードバックして、無知であった自分に気づかせてあげましょう。

「なぜ失敗した」といった原因を特定し振り返ることで、自分を客観的に評価できるようになります。

小さな成功体験を用意する

何度も失敗を経験すると、自信を失い落ち込んでしまう可能性があります。

立ち直らせるためには「成功体験」が必要です。

その人の実力に合ったチャレンジを用意してあげましょう。

成功を経験すれば自己評価と実力が一致して、少しずつ自信を取り戻すはずです。

その結果、自分に足りないものも深く理解できるようになります。

否定する言葉は使わない

自分のことを過大評価している求職者に対して、「あなたは自分のことを過大評価しすぎです」「その企業は無理です」などと、否定する言葉を使うことはやめましょう。

相手の反感を買うだけで、良い方向には転びません。

求職者の良いところを見つけて「このスキルは素晴らしいですね」「語学がお得意なんですね」などと、褒めることも忘れないようにしてください。

転職には「根拠なき自信」も大切

ダニング=クルーガー効果は、悪い面ばかりではありません。

自己評価が高いと自尊心も高められ、自信を持って行動できるようになります。

そのおかげで良い結果が出れば、さらに自信が高まり、自分の実力と認識のズレがなくなる可能性もあります。*4

また、転職には勇気と自信が必要です。

根拠なき自信があるからこそ、転職にもチャレンジできるのかもしれません。

「もっと経験を積んでから」「私にはもったいない」と言っていると、千載一遇のチャンスを逃してしまいます。

キャリアアドバイザーは、求職者のその自信と勇気を認めて導くことも必要です。

まとめ

自分の能力やスキルを客観的に把握する力が低いと、実際よりも過剰に高く評価してしまうことがあります。

ダニング=クルーガー効果に陥っている人を、客観的に評価できるように導くことは簡単ではありません。

しかし転職活動を続けていく中で、求職者も変わっていくはずです。

キャリアアドバイザーとして求職者に寄り添い、背中を押してあげましょう。


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【エビデンス】

*1マイナビウーマン「ダニング=クルーガー効果の意味は? 特徴や対策方法」
*2マイナビニュース「能力の低い人ほど自信満々? 「ダニング=クルーガー効果」に要注意!」
*3SankeiBiz「上司を悩ます「できる・できない部下」の扱い方 誰に期待し何を任せるか」P2
*4NIKKEI STYLE「根拠なき自信を語る部下 使い方次第では宝にも」P2-3


【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。