人材紹介業の免許を取得する方法は?費用・要件・必要書類などを紹介

人材紹介業の免許取得について疑問を持つ、男女のビジネスパーソン


人材紹介事業を行う場合、免許の取得が必須です。人材紹介事業の立ち上げを検討しているものの、「免許はどうやって取得するの?」「費用はどれくらいかかるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、以下の内容をまとめています。

  • 人材紹介業に免許が必要である理由
  • 人材紹介業の免許を取得する要件
  • 人材紹介業の免許取得にかかる費用や期間
  • 人材紹介業の免許取得の流れや必要書類


人材紹介に参入される方はぜひ参考にしてください。

※本記事における「人材紹介業」は、「有料職業紹介」のことを指します。

人材紹介業に免許が必要である理由

人材紹介業に免許が必要である理由は、国の許認可事業であるからです。免許(国からの認可)が必要であり、免許なしでの営業は職業安定法で禁止されています。これは、求職者の権利を保護するためです。

免許なしで誰でも人材紹介ができてしまうと、サービスの質が担保されず、求職者に以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 企業に関する不確かな情報が提供される
  • 不当な中間搾取が行われる
  • 個人情報がきちんと管理されない など

なお、免許なしで人材紹介業を営業した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が課されます(*1)。

*1(参考)厚生労働省「職業安定法 第14違法行為による罰則、行政処分 法第64条

人材紹介業の免許を取得するために必要な要件

人材紹介業の免許を取得するためには、大きく分けて4つの要件を満たす必要があります。

  • 責任者に関する要件
  • 財産に関する要件
  • 個人情報保護に関する要件
  • 事業所に関する要件

以上の要件をクリアしてから申請するようにしましょう。

責任者に関する要件

人材紹介業を始めるには、1つの事業所に1名、人材紹介事業者50名あたり1名以上の責任者を選任する必要があります(*1)。責任者の条件もいくつか定められているため、確認しておきましょう。

  • 欠格事由に該当しないこと
  • 職業紹介責任者講習会を受講していること
  • 3年以上の職業経験を有すること(*1)

責任者には、求人者や求職者からの苦情の処理、職業安定機関との連絡調整といった職責が発生します。常駐常勤が原則のため、兼業で責任者となるのは難しいでしょう。兼業で人材紹介業の開業を検討している場合は、別の担当者に職業紹介責任者講習会を受講してもらい、責任者に任命する必要があります。

*1(参考)厚生労働省「職業紹介事業 現行の制度・運用

財産に関する要件

会社を立ち上げる際の財政状況は、以下を満たしている必要があります。

① 資産(繰延資産及び営業権を除く)-負債≧500万円×事業所数
② 自己名義の現金・預金の額≧150万円 +(60万円×(事業所数-1))(*1)

資産から負債を引いたものを基準資産額と呼びます。この基準資産額が500万円以上である必要があるため、現金が500万円あればよいわけではない点に注意しましょう。例えば500万円の借入をして現金を準備したとしても、負債が増えているだけであり、基準資産額は増えません。

なお、個人事業主として開業する場合は、資産の切り分けができません。例えば住宅ローンや自動車ローンなどがある場合は負債として扱われます。住宅ローンや自動車ローンなどの負債が大きく、500万円以上の基準資産を準備するのが難しい場合は、法人化して資産や負債を切り分けることでハードルが下がります。

*1(引用)厚生労働省「有料職業紹介事業 許可要件(概要)

個人情報保護に関する要件

令和4年10月に職業安定法が改正され、個人情報の取り扱いに関する規定が変更されました。個人情報保護に関する要件は、以下のように定められています。

職業紹介事業者等は、求職者等の個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより目的を明らかにして収集・保管・使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。(*1)

人材紹介業では求人情報の他、求職者の履歴書や職務経歴書といった個人情報を扱うため、適切な管理が必要です。個人情報は本人の同意の下で収集し、使用する目的を明確にしましょう。

例えば、個人情報を扱う従業員を明確にして情報共有に線引きをする、業務と関係のない個人情報は廃棄するなどの方法が有効です。適切な方法に基づいて個人情報を管理する必要があります。

*1(引用)厚生労働省「令和4年職業安定法の改正の概要について

事業所に関する要件

事業所に関する要件は、以下のように定められています。

1. プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能であること。具体的には、個室の設置、パーティション等での区分により、プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能である構造を有すること。

2. 事業所名(愛称等も含む。)は、利用者にとって、職業安定機関その他公的機関であるとの誤認を生ずるものでないこと。

ただし、上記の構造を有することに代えて、以下のA又はBのいずれかによっても、1の要件を満たしているものと認めること。また、当分の間、以下のCによることも認めること。

A. 予約制、近隣の貸部屋の確保等により、他の求人者又は求職者等と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるような措置を講じること。この場合において、当該措置を講じない運営がなされた場合には、許可の取消し対象となる旨の許可条件を付するものとすること。

B. 専らインターネットを利用すること等により、対面を伴わない職業紹介を行うこと。この場合において、対面を伴う職業紹介事業の運営がなされたときは、許可の取消し対象となる旨の許可条件を付するものとすること。

C. 事業所の面積がおおむね 20 ㎡以上であること。(*1)

「1」の「個室の設置」が物件探しのハードルを上げているようにも思えますが、「A」もしくは「B」の要件に代えることでハードルはだいぶ下がります。

近年増えているオンライン専門の人材紹介会社は、「B」の要件を満たすことで開業しています。ただし、「B」はあくまで対面を伴わない人材紹介の要件であるため、対面とオンラインの両方の事業を展開したい場合は「1」と「2」の要件が適用されます。

なお、バーチャルオフィスによる人材紹介業の開業は認められません。バーチャルオフィスの扱いについては、こちらの記事を参考にしてください。

*1(引用)厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業パンフレット-許可・更新等マニュアル-

人材紹介業の免許取得にかかる費用

人材紹介業の免許取得には以下の費用がかかります。

  • 職業紹介責任者講習にかかる費用(8,800〜12,500円)
  • 許可の申請時にかかる費用(140,000円〜)

職業紹介責任者講習は、主に公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会や一般社団法人 日本人材紹介事業協会が実施しているものを受講することとなります。受講にかかる費用は、非会員の場合は12,500円(税込)、会員の場合は8,800円です(税込)(*1)。

許可の申請にかかる費用は以下の2つです。

登録免許税90,000円
収入印紙50,000円
(*2)

複数の事業所を申請する場合は、収入印紙による手数料が1事業所につき追加で18,000円がかかります。

なお、上記はあくまで免許の取得に直接かかる費用です。免許の取得要件を満たすためには法人の設立費やオフィスの契約費用などもかかるため、あらかじめ確認しておきましょう。

*1(参考)公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会「受講料」、一般社団法人 日本人材紹介事業協会「職業紹介責任者講習日程・申込
*2(参考)厚生労働省「職業紹介事業の許可申請の手続きについて(法人用)

人材紹介業の免許取得に必要な書類一覧

許可申請に必要な書類は、許可予定日の3カ月前までに提出する必要があります。法人が免許を取得する場合に必要な申請書類と添付書類は、以下の通りです。

申請書類[正本1部、写し2部(*4)

  • 職業紹介事業許可申請書
  • 職業紹介事業計画書
  • 職業紹介事業取扱職種範囲等届出書
  • 届出制手数料届出書(上限制手数料による場合は不要)


添付書類[正本1部、写し2部(*4)

  • 定款又は寄附行為
  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 代表者、役員の住民票
  • 代表者、役員の履歴書
  • 職業紹介責任者の住民票
  • 職業紹介責任者の履歴書(成年に達した後3年以上の職業経験がある者で、本人の署名又は押印が必要)
  • 職業紹介責任者講習受講証の写し(5年以内の受講日であるもの)
  • 最近の事業年度における貸借対照表・損益計算書及び株主資本等変動計算書
  • 最近の事業年度における法人税の納税(確定)申告書の写し
  • 法人税の納税証明書
  • 職業紹介事業を行う事業所ごとの事業所の使用権を証明する書類(不動産賃貸契約書の写しや不動産登記事項証明書)
  • 業務運営に関する規定
  • 個人情報適正管理規程
  • 手数料に関する書類(上限制手数料表もしくは届出制手数料にかかる手数料表)

履歴書には本人の署名または押印が必要です。ただし、写真は必要ありません。提出する書類が多いため、一つひとつ丁寧に作成・確認しましょう。

*4(参考)厚生労働省「職業紹介事業の許可申請の手続きについて(法人用)

人材紹介業の免許を取得するまでの流れ

人材紹介業の免許は、以下のような流れで取得します。

(参考)厚生労働省「事業許可までのプロセス」を参考に筆者作成

要件を満たした状態で事務所の所在地となっている都道府県の労働局に申請し、許可証を受け取ることで事業を開始できます。

最終判断を行っているのは厚生労働省です。許可が下りなかった場合は不許可通知書が交付されるため、事業計画の再考が必要となります。

免許取得までの大まかなプロセスをまとめると、以下の通りです。

  1. 事業所等の準備
  2. 職業紹介事業者講習の受講
  3. 申請書類の提出

それぞれ詳しく解説していきます。

①事業所等の準備

まずは事業計画を立案し、要件を満たす事業所等を準備する必要があります。都道府県の労働局が要件の説明や助言を行っているため、必要に応じて相談するとよいでしょう。

人材紹介業は右肩上がりで規模が拡大している市場であり、免許の取得ハードルも高くないため、異業種からの参入も増えています。免許を取得して事業を成功させるためにも、この段階で競合他社と差別化を図る施策を練っておきましょう。

②職業紹介事業者講習の受講

申請書類を作成する前に、職業紹介事業者講習の受講が必要です。公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会や一般社団法人 日本人材紹介事業協会などが講習を実施しています。オンライン講習も行われているため、自宅での受講も可能です。

講習は、基本的に座学形式で行われています。朝から夕方まで続くため、休日に受けるようにしましょう。講義の最後に理解度を確認する試験が行われ、合格すれば受講証明書が発行されます。

③申請書類の提出

申請に必要な書類は、各都道府県の労働局HPからダウンロードが可能です。申請書類は都道府県労働局に提出します。労働局は申請の相談も受け付けているため、必要に応じて要件の説明や助言を受けるとよいでしょう。受理された申請書類は審査後に厚生労働省に送られ、許可の判断がされます。

人材紹介業の免許を取得するまでにかかる期間

厚生労働省は、事業開始予定時期のおおむね2〜3カ月前までに書類を提出することを求めています(*1)。そのため、2〜3カ月かかると見積もって申請しましょう。

なお、免許の有効期限は3年と決められています。さらに最初の更新後は、5年ごとに更新手続きが必要です(*1)。免許の有効期間が満了する日の3カ月前までに「職業紹介事業許可有効期間更新申請書」を提出する必要があるため、忘れないように注意しましょう。

*1(参照)厚生労働省「事業許可までのプロセス

人材紹介業の免許取得のための要件や準備事項を確認しておこう!

人材紹介の免許を取得するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

  • 責任者に関する要件
  • 財産に関する要件
  • 個人情報保護に関する要件
  • 事業所に関する要件

準備や書類の作成に不備が起こらないよう、都道府県労働局に相談しながら進めるとよいでしょう。許可が下りなかった場合は、改めて要件を細かくチェックしてください。


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