
コロナ禍を経て、転職市場は変化しつつあります。
新規採用を控える企業も出ている中、それでも転職者を受け入れる企業の狙いは、まさに「即戦力」であるといえるでしょう。
そしてそのような転職者に求められるのは、「実績と経験」に他なりません。
しかし優れた実績や経験があっても、アピールの方法を間違えると悪印象を与えてしまうことにもなりかねないのが難しいところです。
また、どのような質問にでも答えられるためには、多くの想定問答を覚えておかなければならないと考える人もいるかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。
ここで一度、「面接とは何か」の基本に立ち返り、転職活動を見つめ直してみましょう。
まず相手を知る〜転職者を採用する企業側の実情
まず前提知識として押さえておきたいのは、企業にとって中途採用、つまり転職者の受け入れはどのような位置づけにあるかです。
マイナビが実施した中途採用実態調査では、2020年1~7月の間に中途採用を実施した理由として上位に挙がっているのは以下のようなものです(図1)。
即戦力の補充 | 60.8% |
自己都合による退職者の増加 | 24.7% |
年代別人員構成の適正化 | 24.6% |
既存事業の拡大 | 24.0% |
将来の幹部候補・コア人材の確保 | 19.9% |
(出所「中途採用実態調査(2020年)」株式会社マイナビ より筆者作成)
https://bit.ly/3d01JlS p14
転職者を受け入れる理由は、圧倒的に「即戦力の補充」です。
「将来の幹部候補・コア人材の確保」というのは以前から中小企業をメインに人材確保の課題ではありましたが、当然このような人材が即戦力でないはずがありません。
よってここでいう「即戦力」とは、よりシビアな意味合いで使われている言葉と考えた方が良いでしょう。
一方で、中途採用を実施した結果に対しての企業の満足度は高いものではありません(図2)。

(出所「中途採用実態調査(2020年)」株式会社マイナビ)
https://bit.ly/3d01JlS p37
中途採用者について、実は半数の企業はその「質」に不満を抱いています。
2020年1〜7月に中途採用を実施した企業の約半数、51.9%が、内定を出した時点でも「質的に不満だが、量的には満足」あるいは「質・量ともに不満足」と答えています。
「質への不満」が拭いきれない実情が浮き彫りになっています。
具体的な内容は以下のようなものです。
企業の採用担当者が、中途採用した求職者の「面接時と入社後のギャップ」について回答しているのが下の図3です。

(出所「中途採用実態調査(2020年)」株式会社マイナビ)
https://bit.ly/3d01JlS p39
採用した社員の質や能力について、企業側が「想定よりも(やや)低かった・悪かった」と感じている項目の上位には、
- ストレス耐性(29.3%)
- 職務スキル(28.1%)
- コミュニケーションスキル(26.0%)
- 専門知識(25.2%)
といったものが挙げられています。
特に、ストレス耐性については「想定よりも(やや)高かった・良かった」としている企業の割合と「想定よりも(やや)低かった・悪かった」としている企業の割合の差が最も大きくなっています。
しっかりと書類選考、面接をしても、思うように上手くいかないというのは転職者だけでなく企業側も同じです。
これらの事実から、転職の面接では、大きく分けて2点をしっかり押さえておきたいところです。
まず、最初のポイントです。
ひとつの企業にとっての「即戦力」とはどのような人材でしょうか?
それはおそらく、
「その企業がその時に力を入れている事業分野で、その企業に足りないポストを埋められる人」
という意味合いです。
かなり具体的でピンポイントなニーズを勝ち取る必要があるのだと考えた方が良いでしょう。
そして二つ目のポイントです。
中途採用を実施してもその結果に満足を得られていない企業が多数あることを考えると、面接にはネガティブチェックの側面も大きくあるということです。
では、どのように面接の準備を進めれば良いのでしょうか。
基本は「面接官も一人の会社員であり、面接官という仕事の一環で求職者と接している」という、相手の立場から考えることに尽きるでしょう。
転職面接のポイント①面接官は何を知りたいのか
転職活動では、世間一般で「スキルが高い」と言えるような求職者であったとしても、その時・その企業に必要な人材でなければ需要はありません。
中途採用については、企業側にも当然課題は存在します。
先ほど紹介したマイナビの調査では、採用担当者として
「中途採用を成功させるために重要だと思うこと」
についても質問していますが、答えは以下のようなものです*1。
- 採用ターゲットの明確化:24.4%
- 中長期的な採用計画の把握・検討:23.6%
- 働き方改革の推進:23.6%
- 人事体制の見直し(待遇、評価制度、雇用形態):21.6%
- 採用目標、目的の明確化:20.6%
いかにピンポイントで欲しい人材を獲得できるかが企業にとっての最大の関心事になっているのです。
その中で、採用現場で近年注目されているのが「STAR」というフレームワークです。
Amazonやフォーチュン500など外資企業でも多く取り入れられている、「行動面接」の中で重要視されているものです*2。
「STAR」とは、下の4つの項目の頭文字です。
Situation:「どのような状況で」
Task:「どのようなタスクを持ち」
Action:「どのような行動をして」
Result:「どのような結果をもたらしたか」
面接においてこの4つを軸にして話を展開することで面接官は評価のばらつきを抑えることができ、かつ、求職者としても効率的に自分のことを伝えられる面接手法です。
例えば、
「前職ではAというプロジェクトに臨み、そこで売上高を前年の120%にすることができました」
というだけのアピールをしても、面接官には何も伝わりません。というのは、
「その会社では売上が伸びたかもしれないが、ルールの違う自社で必ずしも同じ結果を出せるとは限らない」
と面接官は考えるからです。
「120%」という数字は求職者としては、実績のひとつとしてアピールしたいかもしれません。
しかし問題はその中身です。
具体的な「STAR」を語れなければ、その数字は他社の人間である面接官にとっては何の意味も持ちません。その数字がどのくらい難しいことなのかもわからないからです。
前任者は140%にしていたかもしれませんし、後任者が200%にしている可能性もある、とも考えられてしまいます。
よって、「STAR」を知ってはじめて、それが自社でも役に立つ実績なのかどうかが見えてくるのです。
どのような状況で、誰がどのように決めた、自分のどんなタスクを、どういう方法で実行してどのような成果になったのか。
ここまでを流暢に語れて初めて、数字は意味を持ちます。
数字の凄さを説得しようと情熱で押そうとするのはNGです。背景のわからない数字についていくら根性論を語られても、その人についての情報にはならないからです。極端に言えば、勢いで押せば押すほど胡散臭さすら感じさせてしまいます。
応募書類には誰しも、過去の実績について数字のアピールや社内表彰などについて書くことでしょう。書いたことについて、あるいは面接で話題にしたい実績があるのならば、それらすべてについて、「STAR」を思い起こして細部まで語れるようにしましょう。
面接官からすれば、相手の思考・行動パターンが分かった方が、
「あの部署でこんな仕事を任せられそうだ」
と採用後の具体的なイメージが浮かびます。
企業としてもピンポイントで人材を求めていますから、こうした具体性は力を持ちます。
転職面接のポイント②ネガティブ要素は持ち込まない
そして次のポイントは、「ネガティブ要素を持ち込まない」ようにすることです。
マイナビが実施した調査では、2019年に転職した人が転職活動を始めた理由の上位に挙げているのはこのようなものです(図4)。
仕事内容に不満があった | 30.6% |
給与が低かった | 27.8% |
職場の人間関係が悪かった | 26.7% |
会社の将来性、安定性に不安があった | 24.8% |
休日や残業時間などの待遇に不満があった | 23.8% |
成長できる環境が整っていなかった | 16.9% |
(出所「転職動向調査2020年版(2019年)」株式会社マイナビ より抜粋)
https://bit.ly/2OtHT8T p7
前職や勤め先に対する「不満」が先行しています。
確かに転職を考えるきっかけには、ネガティブな要素がつきものかもしれません。
しかし、「転職の動機」を聞かれて、上記のような内容をそのまま答えてしまうと、面接官はどう感じるか想像してみてください。
会社に勤めていれば、誰でも多かれ少なかれ、何かしらの不満を抱いています。面接官も会社員のひとりであり、何の不満もなく働いているわけではありません。
そこで事実はどうあれ、転職動機について、例えば
「人間関係が悪かったので」
と言われてしまうと面接官は
「そんなのはどこにでもあることだし、自社に来ても人間関係がうまくいかなくなると辞めてしまいそう」
と感じてしまいます。
「仕事内容に不満があった」
と言われても、
「仕事を楽しむスキルを持っていないのではないだろうか」
「何をやらせても文句を言うのではないか」
と感じてしまいます。
まさに先ほど紹介した「面接時と入社後のギャップ(図3)」の通りで、ネガティブな理由を面接で語られてしまうと、「ストレス耐性が低い」というイメージが植え付けられてしまいます。
単なる現実逃避のために偶然自社を選んだだけで、どのように自社の役に立つかなど考えていないのではないか、と警戒されてしまうのです。
きっかけや内情はともかく、結果として転職を考えて行動している事実をポジティブに捉えていない限り、どこかに綻びが出てしまいます。
「なぜうちの会社を志望するのか」という動機を聞かれても薄っぺらくなってしまう、といった具合です。
気持ちを完全に切り替えて臨まなくてはなりません。
「面接=時間をかけた会話形式の自己紹介」と捉えよう
面接対策、となると、「自己紹介の練習+想定問答のパターン暗記」と考えてしまう人も少なくありません。
しかし、想定問答にはキリがありません。詳細になればなるほど、その企業の個別の事情を反映した質問になることも多いからです。その時の社会情勢によっても質問内容は変化するでしょう。
究極的には、面接とは全体を通じて自分の「STAR」を正しく伝える場所、と考えるほうが良いでしょう。そのために具体的経験談=ファクトを挙げて深掘りしていく、深掘りされていくという感覚です。
企業名の華々しさや数字の大小だけを強調しても「あなた」という人間については何も伝わりません。
また、新卒の就活と違うのは「勢い」に頼ってはいけないということです。面接官が求めている情報は
「どのような実務経験があり、どのような働き方をする人か」
の一点です。
求職者と面接官という立場であっても、学生とは違い、ビジネスパーソン同士の会話でもあることを意識しましょう。
相手が何を知りたいのか考え、要点を押さえてコンパクトに答える。これは社会人であれば、営業やプレゼンテーションの場所で当然のように求められるスキルでもあります。
なお、あくまで参考ですが、中途採用の面接では次の点が重視されているという調査結果もあります(図5)。
対面面接で重要視 | WEB面接で重要視 | |
受け答えの仕方 | 52.8% | 39.4% |
表情 | 42.2% | 32.7% |
身だしなみ(髪型・化粧) | 41.0% | 20.7% |
転職理由 | 39.7% | 30.8% |
入社に対する熱意 | 36.7% | 29.8% |
(出所「中途採用実態調査(2020年)」株式会社マイナビ より筆者作成)
https://bit.ly/3d01JlS p30
新卒とは違い、自社の面接に来るまでの間に何かしらネガティブな経緯がある可能性については、面接官も社会人ですからある程度は承知しています。
その上でいかにこの転職が前向きな行動であるかどうかをしっかり示すことが重要です。
「前職に不満はありましたか」と問われる場合もあります。
その際にも、愚痴ではなく状況を客観的に語り、その中で自分はどう改善をはかったか、という「STAR」について語るのがベストです。
「相手が知りたいことは何なのか」。
こう考えてみると、対策はシンプルになります。
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引用
*1「中途採用実態調査(2020年)」株式会社マイナビ
https://bit.ly/3d01JlS p36
*2「ストーリーで攻略!STAR行動面接テクニック Kindle版」ミーシャ・ユールチェンコ 著、小笠原悠香 訳 2018年章「はじめに-STARとは何なのか」

【著者】清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka