希望退職は拒否できる?応じるメリットは?退職金を含め判断ポイントを詳しく解説

長引く不況や、コロナ禍の影響により希望退職を募る企業が増えてきました。

2021年に上場企業が募った希望退職者数は、6月時点で1万人を超えています。*1

新型コロナウイルスの影響で退職の募集が急増した2020年の同時期と比べても、既に1.7倍です。

あなたが勤めている会社でも、近い将来、希望退職を募る可能性は十分に考えられます。

そこで今回は、希望退職について説明していきます。

希望退職のメリットとデメリットを把握して、後悔のない選択を出来るようになりましょう。

希望退職とは

希望退職制度とは、会社が従業員の主体的な退職を募る仕組みのことです。

人員整理を目的に行なわれることが多く、リストラを行う前の段階とも言えます。

しかし希望退職の場合は、従業員の意思が最も優先されるので、会社側から退職を強制されることはありません。

希望退職の募集に応じて退職する従業員には、「再就職支援」や「退職金の割り増し」などの優遇措置が用意されていることが一般的です。

希望しても引き止められる可能性はある

希望退職は、希望すれば必ず成立するというものではありません。

能力の高い従業員や、重要な役割を担っている従業員は引き止めにあうこともあります。

希望退職の成立には「双方の合意」が必要なのです。

原則として希望退職に伴う退職は、自己都合ではなく「会社都合」での退職が成立します。

しかし、引き止めにあいながらも強引に退職した場合には、会社都合ではなく「自己都合」の退職となってしまう可能性があるため注意が必要です。

「希望退職に応じない」もOK

希望退職の対象になっていると、「退職しなければならないのでは…」と思ってしまうかもしれません。

しかし、希望退職に応じないという選択をしても問題ありません。

応じるも応じないも、自分の意志次第です。

希望退職のメリットとデメリット

希望退職に応募する場合のメリットと、デメリットを確認しておきましょう。

早期退職を考えている人は、以下のメリットとデメリットを判断材料にしてみてください。

希望退職のメリット

希望退職に応じた場合のメリットは主に3つあります。

・退職金の割り増しが受けられる
・失業給付金をすぐに得られる
・転職活動で離職理由を説明しやすい

希望退職の最大のメリットは、退職金が増えることです。

退職金の額は企業によって異なりますが、希望退職ではほとんどの場合で、割り増しの退職金が提示されます。

さらに、希望退職に応じた場合は、失業給付金を利用する時に「会社都合」での退職となるため、「自己都合」の場合に比べると、2ヶ月以上も早く給付金の支給が始まります。

お金に関しては、ただ転職するよりも希望退職を利用した方がメリットが大きいでしょう。

また、転職活動の時に離職理由を説明しやすいのもメリットです。

希望退職の場合は、「自分の意思」で退職していますので、リストラよりもポジティブな印象となり、離職理由も説明しやすくなります。

希望退職のデメリット

希望退職には、次のようなデメリットもあるので注意が必要です。

・安定した収入を失う
・すぐに転職先が決まらないことも
・将来の年金の支給額に影響する

会社を退職すれば、安定した収入がなくなってしまいます。

退職金や失業給付金があったとしても、日々の生活費や税金の支払いなどの出費が少しずつ重荷になることでしょう。

また、すぐに希望の転職先が見つかるとも限りません。

思うように転職活動が進まない可能性もありますので、転職に時間がかかることも想定しておく必要があります。 

年金についても確認しておくことが必要です。

会社員として勤務している期間は「厚生年金」に加入しています。

しかし退職する場合、離職期間は自分で「国民年金」に加入しなければなりません。

厚生年金の期間が短くなると、将来貰える年金の総支給額に影響する可能性があります。*2

希望退職に応募するべきかを見極める方法

ここでは、希望退職に応募するべきかどうかを見極める方法についてお伝えします。

自分は応募すべきなのか、見送るべきなのかを考える時の参考にしてください。

自分の「組織の中の自身の位置づけ」を整理する

自分が希望退職に応募すべきかどうかを判断する時には、

「組織の中の自身の位置づけ」を整理することが必要です。

縦軸を社内評価、横軸を市場評価とすると、人材は4つのパターンに分けることができます。*3

※原文ママ

1.社内評価は高いものの、必ずしも市場評価は高くない終身雇用特化型ビジネスパーソン
2.社内評価も市場評価も高いエリートビジネスパーソン
3.社内評価は消して高いとは言えないが、市場価値の高い流動型パーソン
4.社内評価も市場評価も低い袋小路型ビジネスパーソン

(参考)マイナビ転職エージェントサーチ「会社が早期退職の募集を始めた時に考えておくべきこと」を参考に筆者作成
https://mynavi.agentsearch.jp/useful/jo/vo16

自分はどのパターンに当てはまるのかを考えてみましょう。

自分の位置づけに合わせて選択する

自分が4つのパターンの中で、どこに当てはまりそうか整理したら、そのパターンに合った行動を選択しましょう。

1.終身雇用特化型ビジネスパーソン

1番のパターンに当てはまる人は、自分の市場価値を確認することが必要です。

自分にはどんなスキルがあって、他の会社では通用するのかを見極めましょう。

自分で判断するのが難しい場合は、人材紹介会社に登録して、キャリアコンサルタントにキャリアの棚卸しをしてもらうと良いでしょう。

2.エリートビジネスパーソン

2番のパターンの人は、どこへ行っても通用するスキルを持っています。

このまま会社に残っても、希望退職に応じても良いでしょう。

退職をする場合に貰える退職金の額や、希望退職のメリットとデメリットを考慮するだけではなく、自分の理想のキャリアが描けそうか、自分の勤める会社は今後も成長していきそうかの視点も含めて、希望退職に応じるかどうかを検討してください。

3.流動型パーソン

3番のパターンの人は、希望退職を前向きに検討すると良いでしょう。

労働市場から評価されるスキルを持ちながらも、社内では適正な評価を得られていない人にとって、早期退職はキャリアアップを後押ししてくれる貴重な機会です。

勇気をもって1歩を踏み出してみることをおすすめします。

4.袋小路型ビジネスパーソン

4番のパターンの人は、今回の希望退職は見送ることをおすすめします。

まずは自分の市場評価を上げるための勉強や、資格取得に励むと良いでしょう。

何をすれば良いかわからないという場合には、自分にはどんなスキルがあって、何が足りないのかを棚卸するために、人材紹介会社に相談してみるのもおすすめです。

普段から「社内評価」よりも、「市場価値」に軸足を置いておくことで、いざという時の選択肢を増やすことができます。

まとめ

希望退職に応じると、退職金が増えたり、失業保険の支給が早く始まったりと、多くのメリットがあります。

以前から転職を考えていた人にとっては、希望退職は好条件で転職ができるチャンスです。

しかしそうでない人は、どうするかを慎重に決める必要があります。

もし自分が希望退職者の募集対象になっている場合は、退職金の額や、会社からの再就職支援があるのかどうかなどを確認して、慎重に検討をしてください。

希望退職に応じるも応じないも、自分の意志次第です。

後で後悔のない選択をしましょう。


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【エビデンス】
*1 日本経済新聞「希望退職1万人超え、20年の1.7倍 観光は11年ぶり募集」
*2 厚生労働省「日本の公的年金は「2階建て」」
*3 マイナビ転職エージェントサーチ「会社が早期退職の募集を始めた時に考えておくべきこと」


【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。