新しい働き方を支える「コワーキングスペース」とは 使い方と導入状況をデータをもとに解説

テレワークの普及に伴い、場所に縛られない自由な働き方に注目が集まっています。

こうした働き方ができるのはどのような業種・職種なのでしょうか。

また、こうした働き方を支えるコワーキングスペースとはどのような施設なのでしょうか。

新しい働き方とそれを支えるコワーキングスペースについてわかりやすく解説します。

移動するテレワーカー

図1  テレワークの導入状況
出典:*2 総務省(2021)「令和2年通信利用動向調査」 p.12

類型別にみると、在宅型がほぼ90%と突出して割合が高く、次いでモバイル型になっています。

サテライトオフィス型は約10%で最も割合が低くなっていますが、このタイプは在宅勤務より仕事に集中できる環境で働けるため、利用を希望する社員が多く、コロナ禍で急速に増えつつあります *3:p.4。

また、サテライトオフィス型は自宅以外の場所を仕事場にするため、様々な働き方を可能にします。

つまり、テレワーカーにとって一番、自由度が高い働き方なのです。

そこで、これ以降はこのサテライトオフィス型にフォーカスすることにします。

ワーケーションとブレジャー

自宅を離れ、職場を地方に移す働き方をみていきましょう。

まず、ワーケーションはWorkとVacationを組み合わせた造語で、リゾート地や温泉地、国立公園など普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行う働き方です *3:pp.3-4。

このワーケーションには、有給休暇などを活用してテレワークを行う「休暇型」と、仕事をメインにしてその前後に休暇を楽しむ「事業型」に大別されます。

「事業型」はさらに次の3つに分けられます。

まず、「地域課題解決型」とは地域関係者との交流を通じて地域課題の解決策を共に考えるタイプで、SDGsに取り組む企業が導入しています *2:pp.7-9。

次に、「合宿型」とは、リゾート地などいつもとは違う環境で様々な会議や研修等を行うもので、チームビルディングや新しいアイデアの創出などに活用されています。

3つ目は先ほどみた「サテライトオフィス型」で、会社のサテライトオフィスや会社以外のテレワーカーとも共同で利用するコワーキングスペースで働きます。

図2  ワーケーションとプレジャー
出所:*3 国土交通省 観光局「ワーケーション&ブレジャー」 p.3

ワーケーションに似た働き方にブレジャーと呼ばれるものがあります。

ブレジャーは出張などの業務目的の旅行の前後に余暇目的の旅行を組み合わせるものです。

また、仕事の拠点を2か所もつ「デュアルワーク」という働き方もあります。

デジタルノマド

デジタルノマドとは、働く場所を自由に選びながらインターネットを利用して業務を遂行する働き方です *4。ホテルに滞在してそこで仕事をすることもあれば、コワーキングスペースを利用することもあります。

この働き方なら海外を視野に入れることも可能で、最近はデジタルノマドビザを導入する国々も出てきました。

例えば、エストニアでは、一定の条件を満たせば短期または長期のデジタルノマドビザが発給されます *5。

この他にも、北大西洋のバミューダやカリブ海のバルバドスなどがデジタルノマドを受け入れる制度を整えています *6、*7。

テレワーカーが多い業種と企業規模

場所に縛られない働き方を可能にするテレワークは、どのような企業が導入しているのでしょうか。

その特徴を押さえておきましょう。

図3  資本金規模別テレワークの導入状況
出典:*2 総務省(2021)「令和2年通信利用動向調査」 p.13

まず、2020年の導入率を資本金規模別にみると、10億~50億円未満の企業が導入率が一番高く、前年からの伸びも最も大きくなっています。

50億円以上の企業がそれに続くことから、資本金規模の大きい企業の方が導入割合が高く、一方、資本金規模が小さい企業では導入が進んでいないことがわかります。

次に産業別の導入割合をみてみましょう(図4)。

図4  産業別テレワークの導入状況
出典:*2 総務省(2021)「令和2年通信利用動向調査」 p.13

導入率が突出して高いのは、情報通信業、いわゆるIT業界です。この他、不動産業や金融・保険業で導入が進んでいる一方で、運輸・郵便業やサービス業は導入率が低いことがわかります。

ただし、テレワークを導入している企業でも、従業員全員がテレワークをしているとは限りません。

むしろ、テレワークを利用する従業員は限られているのが実情です。

テレワーカーの全従業員に占める割合をみると、5%未満という企業が37.6%で一番割合が高く、ついで10~30%という企業が24.5%と、一部の従業員しか利用していない企業が多いのです *2:p.14。

そこで、次に職種をみることにします(図5)。

図5 職種別テレワーカーの割合 
出典:*8 国土交通省(2021)「令和2年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-」 p.15

図5はこれまでみてきた調査とは別の調査の結果で、企業で働くテレワーカーの割合を職種別に表しています。

「研究職」、「管理職」、「専門・技術職(技術職)」の割合が高く、一方、低いのは、「販売」、「保安、農林漁業、生産工程・輸送・機械運転・建設・採掘・運搬・清掃・包装等従 事者」、「サービス」で、いずれも6%台です。

場所に縛られない働き方を目指すのであれば、業種だけでなく、職種も重要な要素です。

コワーキングスペースの活用法

場所に縛られない働き方を支えるのが、コワーキングスペースと呼ばれる施設です。

コワーキングスペースとは

ここでコワーキングスペースの定義を改めて押さえておきましょう。

まず、総務省は「サテライトオフィス」を以下のように定義しています *9:p.1。

都市部の企業等が本拠から 離れたところに設置する遠隔勤務のためのオフィスの総称。

その上で、「コワーキングスペース」の定義を以下のように示しています。

サテライトオフィスの一形態。複数の企業がフリーアドレス形式で利用するオフィス。特に利用者間の連携・交流を促す特徴的な機能・空間等を有するオフィスあるいはスペースを「コワーキングスペース」という。

コワーキングスペースとは、単に仕事場を提供する施設ではなく、利用間の連携や交流を促す機能まで備えている施設と捉えられているのです。

少し古いデータですが、2016年に実施した国土交通省の調査によると、 コワーキングスペースは、全国で1904か所あり、そのうち東京都と政令指定都市がおよそ33%ずつを占めていました *1。

コワーキングスペースの利便性

コワーキングスペースに求められる要素はどのようなものでしょうか(図6)。

図6  「ワーケーション」導入の際に受入地域や施設に整備してほしいこと 
出典:*3 国土交通省 観光局「ワーケーション&ブレジャー」 p.6

図6はワーケーションを導入する際に、受け入れ地域の設備に対して企業が要望することですが、そのうち、施設に関する要望を赤枠で囲みました。

赤枠内は、コワーキングスペースに必要な機能だと考えていいでしょう。

大まかに分けると、情報・セキュリティーに関する要望が約90%と最も大きな割合を占め、ついでプライベートな空間、仕事に必要な機器、さらに商談や会議などができるスペースといったハード面の整備も約85%と高い割合を示しています。

では、実際のコワーキング施設はどうなっているのでしょうか。

例として、一般社団法人 日本テレワーク協会が主催する「テレワーク推進賞・奨励賞」を受賞した企業が提供しているコワーキングスペースをみてみましょう。

受賞理由は以下のようなものです *10:p.6。

労働生産性の向上、イノベーションの創出などを目指して、本格的なテレワーク設備を備えたサテライトオフィスを開設。これからのテレワーク活用の一つのモデルケースとなる。

・コンシェルジェによるサポート
・用途により使い分け可能なミーティングスペース
・好みに合わせた個人作業スペース
・さまざまなオープンスペース
・充実したファシリティ

これらの設備・サービスは先ほどみた要望を満たすものです。

図6  「第8回テレワーク推進賞・奨励賞」を受賞した企業が提供するコワーキングスペース
出典:*11 三井不動産(2018)「ニュースリリース:「WORKSTYLINGプロジェクト/多拠点型シェアオフィスによる働き方変革」のテレワーク推進賞「奨励賞」受賞が決定

この施設にかぎらず、最近はドロップインと呼ばれる一時使用のサービスもあり、1時間から数時間単位で比較的安く借りることも可能です *12。

コワーキングスペースの活用法

最後にコワーキングスペースの活用法を考えてみましょう。

まず、優先すべきことは何かを明確にすることです。

もしいくつかのスペースの中から選択できるのであれば、用途に応じて、例えば、施設や環境、広さ、移動方法、料金などを比較して決めます。

いつも同じところを利用するのではなく、例えば商談をするとき、会議をするとき、ひとりで集中して仕事をしたいとき、仲間との雑談を楽しみたいときなど、そのときどきで場所を選び分けられるのもコワーキングスペースのメリットです。

次に、利用頻度や利用時間、住まいやホテルとの使い分けも考える必要があります。

これは、オンとオフのメリハリをつける上でも大切でしょう。

賢い選択をするためには、コワーキングスペースの情報を入手することも重要です。

以下のサイトなどが参考になります。

*12 ワークスペースの紹介|日本テレワーク協会
*13 ワーケーション自治体協議会(Workation Alliance Japan)

コワーキングスペースは場所に縛られない新しい働き方を支えます。

その利便性を把握して適切な選択ができれば、自分らしく自由に働きながら高い満足感が得られるに違いありません。


【無料】人材紹介事業立ち上げ 起業準備セミナーのアーカイブ配信

<内容>
1. 人材紹介会社の設立準備について
2. 開業後に必要な「求職者集客」「求人案件開拓」「実務スキル」について

<登壇者>
1.ライストン税理士事務所 石塚 友紀 氏
2.株式会社マイナビ エージェントサクセス事業部
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
視聴料 :無料
視聴手順:
①下記ボタンをクリック
②リンク先にて、動画視聴お申込みフォームにご登録
③アーカイブ配信視聴用URLをメールにてご送付
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –


【エビデンス】
*1 厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト
*2 総務省(2021)「令和2年通信利用動向調査
*3 国土交通省 観光局「ワーケーション&ブレジャー
*4 JETRO(2020)「「デジタルノマドビザ」の発給の要件を盛り込んだ外国人法の改正案を可決
(エストニア)

*5 エストニア大使館「Digital Nonad Visa
*6 バミューダ「Welcome to Work from Bermuda.
*7 バルバドス「WORK FROM PARADISE
*8 国土交通省(2021)「令和2年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-」 令和3年3月 p.15,17
*9 総務省「お試しサテライトオフィス」モデル事業(平成 29 年度)調査報告書
*10 一般社団法人 日本テレワーク協会(2018)「第18回テレワーク推進賞受賞企業および団体を決定本年2月13日に表彰式を開催
*11 三井不動産(2018)「ニュースリリース:「WORKSTYLINGプロジェクト/多拠点型シェアオフィスによる働き方変革」のテレワーク推進賞「奨励賞」受賞が決定
*12 一般社団法人 日本テレワーク協会「ワークスペースの紹介
*13 ワーケーション自治体協議会公式ページ


【著者】横内 美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。
Twitter:@mibogon