感染予防はどうする?採用面接で企業や転職エージェントがすべき対策を薬剤師が解説

求人を募るにあたり、求職者との面接や面談は欠かせないものです。

しかし、面接で問題となるのが感染症対策です。新型コロナウイルス感染症の流行にともない、オンライン面接を導入している企業も増えていますが、最終面接まで求職者とまったく接しない企業は限られています。
新卒採用において実際、2020年度に内々定保有者限定で実施したアンケートでは、一度も採用担当者と対面せず、オンライン完結で内々定を得た人は半数にも届きません*1

(引用)マイナビ 人事担当者のための新卒採用支援情報サイト 新卒採用サポネット「調査・データ>2021年卒 マイナビ企業新卒内定状況調査>マイナビ2021年卒企業採用活動調査 6月実施*1

もちろん、新卒者と転職者では対面面接の割合も異なってくるでしょう。しかし対面面接を実施する以上、感染症対策には最大限の配慮が必要です。

そこで今回は、濃厚接触者の定義から感染症対策を考え、面接時に活用できる方法をいくつかご紹介します。

内容は主に企業での面接を想定していますが、エージェントにおける求職者面談の場合も基本的に対策は同じです。

クライアント企業様へのアドバイスと併せ、自社で面談を行う際の対策として参考にして下さい。

濃厚接触したかどうかは“距離”と“時間”で判断

感染拡大を防ぐためには、感染症にかかっている人と濃厚接触しないことが大切です。しかし新型コロナウイルスは、発症前から感染力を持つことがわかっています*2

だからといって、求職者全員に陰性証明を提出させることは非現実的です。

そこで、求職者と採用担当者の双方、そして求職者同士が“濃厚接触”しない環境を用意することが、感染拡大防止につながると いえるでしょう。

濃厚接触したかどうかは、主に距離と時間で判断されます。

具体的には、「必要な感染予防策をせずに手で触れること、または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m程度以内)で15分以上接触があった場合」に濃厚接触があったとされます。

ただし、濃厚接触者に該当するかどうかは、マスクの着用や発声の有無、3密の状況などに応じて保健所が個別に判断します。そして、濃厚接触者と判断されると、PCR検査の結果が陰性であっても14日間は不要不急の外出を控えるなど、保健所の指示に従わなければなりません*3

このような状況は、企業側はもちろん、求職者側にも大きな不利益をもたらすことになります。風評被害を防ぐためにも、求職者との面接時には濃厚接触を防ぐ対策を講じるべきでしょう。

面接会場で行うべき6つの感染症対策

求職者面接で、発声を避けることはできません。したがって、面接を実施する際には、発声をおさえる以外の方法で感染拡大を防ぐ必要があります。

そして、面接会場だけではなく、求職者が待機する待合室においても、感染症対策を行なわなければなりません。

(引用)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議の見解等>新型コロナウイルス感染症対策の見解(3月9日)>新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の見解」P.7 *4

(1)密閉対策

状況が許されるならば、窓を開けて常時換気を心がけましょう。風の流れが乏しい場合は、サーキュレーターや扇風機などを利用して、空気の流れを作ってください。

常時換気が難しい場合は、最低でも1時間につき2回以上、1回あたり数分以上換気することが推奨されています*5

面接会場であれば、求職者ごとの面接の間隔を十分にあけて換気の時間を確保しましょう。

求職者が待機する待合室では、出入り口と窓を開放して空気の流れを作る・ポスターなどで退出時に窓を開けることを促す、などの工夫をしておけば、従業員を待機させる必要がなくなります。

(2)密集対策

面接時間をずらして、求職者同士の密集を避けるようにしましょう。面接人数が多い場合は、数日に分けて面接を実施したり面接会場を複数設けたりして、一度に多数の求職者が集まらないようにする配慮が必要です。

面接会場では、求職者と面接担当者が互いの正面から少しずれた位置に座るように椅子を配置します。面接担当者が複数いる場合は、1メートル以上離れて座るようにしましょう。

待合室でも、椅子の間隔は1メートル以上あけてください。飛沫感染を防ぐために、椅子は横1列に並べるのが無難です。

(3)密接対策

密接対策として、面接担当者・求職者ともマスクを着用するようにしましょう。

しかし、マスクをしていても、飛沫を100%防ぐことはできません。近距離での会話は避け、不用意にマスクを外すことがないようにしてください。

マスクを外さなければならない喫煙は、禁止するのが望ましいでしょう。

(4)手を触れやすい場所に注意する

接触感染対策として、手指洗浄や手指消毒を励行しましょう。求職者には、来社時と待合室や面接会場への入退出時に、手指洗浄・手指消毒を促してください。

ドアノブや椅子の背もたれ部分などは無意識に触れてしまう部分なので、こまめに消毒することを忘れないでください。トイレの電気は、スイッチへの接触を防ぐために可能な限り点けたままにしておくことをおすすめします。

(5)面接はできるだけ短時間で

面接はできるだけ短時間で済ませる必要があります。

濃厚接触の定義に触れないようにするのであれば、15分以内ということになるでしょう。

15分では現実的に難しいという場合でも、できるだけ短時間で済ませる工夫を心がけて下さい。

また、求職者が待合室で待機する時間も、15分以内にとどめるようにしましょう。

求職者には、来社時間を指定して、指定時間前には入館できない旨を理由とともに伝えておくと、理解が得られやすくなります。

(6)人の流れを一方向に決める

ほかの従業員や求職者同士の接触機会を減らすために、面接当日の人の流れを決めておくのも有効です。

例えば、待合室へ行くときは階段を使い、面接後はエレベーターを利用といった方法でも良いでしょう。

「待合室はコチラの階段を上って右側(エレベーター利用不可)」

「出口はエレベーターを降りてすぐ(階段使用不可)」

など、ポスターなどで具体的な指示を示しておくと、求職者が迷わずにすみます。

また、面接当日は、出社する従業員の数を極力減らし、テレワーク日とするのもおすすめです。

感染症対策は人材確保にも影響を与える重大事項

求職者面接は3密をまねきやすく、感染症が拡大しやすい条件がそろっています。

この状況は、求職者が待機する待合室も同様です。

面接会場の感染症対策が万全でも、待合室での感染症対策が杜撰ならば、求職者は当該企業へ就職することに不安を感じるでしょう。

場合によっては、内定が出ても辞退してしまうかもしれません。

現実問題として、面接が原因で濃厚接触者やクラスターが発生すれば、優秀な人材を集めることは難しくなります。

またエージェントにとっては、コンサルタントや自社が斡旋した人材の面接からクラスターが発生したら、クライアント企業との信頼関係も揺らぎかねません。

面接・面談を実施する際には、会場だけではなく待合室の感染症対策もしっかり行いましょう。

また自社のコンサルタントや求職者本人には、感染予防はもはやマナーではなく信用問題であるという教育を徹底することも重要です。

求職者と従業員を感染症から守ることは、面接を実施する企業・エージェントの責任といえます。

徹底した感染予防対策を講じ、求職者が「ここで働きたい」と思えるような環境づくりを目指してください。


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【エビデンス】
*1 マイナビ 人事担当者のための新卒採用支援情報サイト 新卒採用サポネット「調査・データ>2021年卒 マイナビ企業新卒内定状況調査>マイナビ2021年卒企業採用活動調査 6月実施」P36
*2 厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)>4.その他ガイドライン等に関する事項>「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.1版」の周知について(別添)」P6
2.伝播様式【潜伏期・感染可能期間】
*3 厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
*4 厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>新型コロナウイルス感染症対策 専門家会議の見解等>新型コロナウイルス感染症対策の見解(3月9日)>新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の見解」」 P7
*5 厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>Q&A、自治体・医療機関・福祉施設向け情報>啓発資料・リーフレット・動画(ご自由にダウンロードしてご活用下さい)>三密」 P2


【著者】中西 真理
公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。