ホワイト企業ってどんな会社?その特徴を理解し働き方改革を推し進めよう

近年、日本の労働者は仕事に対し、心の豊かさや自由時間の充実を求める傾向が強まっています。*1

そのため、ワークライフバランスの実現を求め、いわゆる「ホワイト企業」に就活生や転職者の注目が集まっています。

そこで今回は、厚生労働省の資料などをもとにホワイト企業の取り組みを紹介し、またランキングも引用しながら「今求められている企業像」をご紹介していきます。

自社の現在位置の把握や今後の取り組みなどの参考にして下さい。

ホワイト企業の特徴

まず始めに、ホワイト企業と呼ばれるための会社の特徴について、いくつか確認していきましょう。

就活生が働きたいホワイト企業の条件

下図1は平成30年9月に経済産業省が公表した「どのような企業に就職したいか」などのアンケート結果です。

参照すると、就活生が就職したい企業の条件トップ3は以下のようになりました。

  1. 福利厚生が充実している(44.2%)
  2. 従業員の健康や働き方に配慮している(43.8%)
  3. 企業理念・使命に共感できる(38.1%)

ほかに「雇用が安定している(24.2%)」

「企業の業績が安定している(21.4%)」

などの回答もあり、近年の就活生には、「無理なく働ける環境がある企業」に人気が集まっていることがうかがえます。

図1引用)経済産業省「健康経営の推進について」P12
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/2018setsumeikai_meti.pdf

ホワイトマークは国が認めた「安全衛生優良企業」

労働者の安全や健康に積極的に取り組み、高い水準を維持している企業に対して、国は「ホワイト企業」としての認定を与えています。

下図2は代表的な「ホワイト企業認定制度」の一覧表です。

いわばこれらの要件を満たすことが、少なくともその要件を目指すことが、「国公認のホワイト企業」に近づく第一歩と言えるでしょう。

【国が認定しているホワイト企業のマーク】

国が認定しているホワイト企業のマーク概要
ホワイトマーク(厚生労働省)
ホワイト企業マークの中で最も取得基準が厳しく取得インパクトの大きい認定制度
健康経営優良法人(経済産業省)
健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業を顕彰する制度
ユースエール認定(厚生労働省)
新卒層の積極的な採用と育成に取り組む中小企業を認定する制度
くるみん認定(厚生労働省)
育休取得や時短勤務など子育て支援を推進する企業を認定する制度
プラチナくるみん認定(厚生労働省)
子育てサポート企業の証である「くるみん」の上位認定制度
えるぼし認定(厚生労働省)
女性の採用や活躍を積極的に推進する企業を認定する制度
プラチナえるぼし認定(厚生労働省)
女性活躍への積極的なサポートをする企業の証「えるぼし」の上位認定制度
図2 参考)非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構「『優ジロウ』ホワイト企業 ・ ブラック企業一覧検索」
https://shem.or.jp/yujiroを参考に筆者作成

ホワイト企業ランキング【2020年版】

これらホワイト企業マークを取得している企業は、厚生労働省や経済産業省が認定した一定の基準をクリアしている優良企業であると言えるでしょう。

ここでは、非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構が認定した、ホワイト企業のランキングをご紹介していきます。

【2021年 ホワイト企業ランキング】

順位企業名取得マーク
1位株式会社丸井グループ
2位東日本電信電話株式会社
3位サントリーホールディングス株式会社
4位株式会社常陽銀行
5位コニカミノルタ株式会社
6位イオン株式会社
7位セイコーエプソン株式会社
8位株式会社朝日新聞社
9位田辺三菱製薬株式会社
10位喜多機械産業株式会社
図3 参考)非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構「ホワイト企業ランキングTOP100」
https://shem.or.jp/top100を参考に筆者作成

1位は株式会社丸井グループ

ホワイト企業ランキングNO.1には「株式会社丸井グループ」が選出されました。

取得が非常に難しいとされる「ホワイトマーク」を始め、「健康経営優良法人」「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」「えるぼし認定」など5つの制度でホワイト企業として認定されています。

従業員が健康で、女性が働きやすい企業が多い

2位~10位の企業も全て「健康経営優良法人」「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」を取得しています。

「健康経営優良法人」は従業員の健康管理に配慮している企業です。従業員の健康を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として社会的に評価を受けています。*2

また、「くるみん認定」は、従業員が仕事と子育ての両立ができるように一定の要件を満たしている企業です。*3

今回トップ10にランクインした企業は全て、従業員が健康的に働けて、女性が家庭と仕事を両立させやすいホワイト企業と言えます。

働きやすく生産性の高いホワイト企業

それでは、働きやすく生産性の高いホワイト企業は、実際にどのような取り組みをしているのでしょうか。

ここでは、厚生労働省が創設した「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」で厚生労働大臣賞(最優秀賞)を受賞した2社について、その取り組み事例をご紹介していきます。

株式会社ディスコ

株式会社ディスコは、「個人 Will 会計制度」による生産性向上と、社員が自らの意志で仕事を選択できる働きがいのある組織を実現した企業です。

社内通貨として「Will」を活用し、社員一人ひとりが日常的な業務レベルで「生産性向上を意識する」「仕事への主体的な意欲をもつ」「残業の削減を図る」ことなどを実現しています。

そして、働きやすい環境を構築し働きがいのある組織を作り出しています。*4

図4 引用)厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」P13
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000157915.pdf

SCSK株式会社

SCSK株式会社は、経営トップが働き方改革運動を主導した取り組みと、業務のクオリティ・職場コミュニケーションの変革により生産性が向上した企業です。

2011年の経営統合を機に「人を大切にする」というスローガンを掲げ、社員の健康を重視する健康経営を推進していきました。

2013年からは働き方改革運動「スマートワーク・チャレンジ」を実施し、営業利益の連続増益、残業時間の削減、有給休暇取得率の上昇を達成しています。*5

図5 引用)厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」P17
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000157915.pdf

健康経営を開始すると業績はプラスの方向へ

近年は会社の利益のためならば、社員が犠牲になるのも致し方ないという時代ではありません。

経済産業省の調査では、社員を大切にする企業ほど業績も向上するというデータが発表されています。

健康経営を開始すると「企業の業績は上向きになる」ということについて解説をしていきます。

健康経営が進むと企業業績は上昇傾向に転ずる

下図6は経済産業省がまとめた「健康経営と企業業績との関係性」を調査したグラフです。

参照すると、健康経営を開始する前の5年以内では、売上高営業利益率の業種相対スコアはマイナスを示しており、業種相対で利益率が低い状況となっています。

しかし、健康経営を開始した後の5年間において業種相対スコアはプラスとなり、売上高営業利益率が増加するという結果になりました。

企業が従業員の健康保持・増進に取り組むと、従業員の活力や生産性が向上し、結果的に業績向上や組織としての価値が向上すると言えるでしょう。*6

図6 引用)経済産業省「健康経営の推進及び『健康経営銘柄2021』『健康経営優良法人2021』について」P19
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/1_METI_R2kenkoukeieikensyoseido_setsumei_shiryo.pdf

健康経営は「業績」「企業価値」の向上をもたらす

健康経営を実施した企業は「業績」や「企業価値」が向上するというメリットがもたらされます。

従業員の健康を大切にする企業ならば、社員は長く働きたいと思い人材不足にもなりません。従業員の意欲も高くなるため生産性が上がり、結果的に企業の業績も上がるのです。

また健康経営の優れているところは、多くのコストを必要とせずに始められるところにあります。

事例として、以下のような取り組みが挙げられるでしょう。(一部抜粋)

  1. 加入の健保組合へ40歳以上の従業員の健診データの提供
  2. 階段使用・社内でのストレッチの実施
  3. 社員食堂・弁当で栄養バランスの取れたメニューを提供
  4. 保健師や管理栄養士による生活習慣改善指導
  5. ノー残業デーや有給取得促進の仕組みを導入 *7
図7 引用)経済産業省「健康経営ハンドブック2018」P2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeiei_handbook2018.pdf

まとめ

今回はホワイト企業について国が認定する制度、ランキング、企業の取り組みなど詳しく解説をしていきました。

人口減少が進んでいく日本では、今後も持続的な経済の成長を通じて、勤労者生活を充実させて、より多くの人が就業し高い労働生産性を実現していくことが欠かせません。

働く人が意欲を持って仕事に取り組める職場や、社会環境を創り上げていくことは差し迫った課題です。*8

これからの企業は「人を大切にする」ホワイト企業であることが、社会的にも求められています。

ぜひ、できることから取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。


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【エビデンス】
*1・8参考)厚生労働省「働く人の意識と就業行動」P79
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/08/dl/02_0001.pdf
*2 参考)経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
*3 参考)厚生労働省「子育てサポート企業認定『くるみん・プラチナくるみん認定』」
https://shokuba.mhlw.go.jp/published/special_01.htm
*4・5 参考)厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」P4
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000157915.pdf
*6 参考)経済産業省「健康経営の推進及び『健康経営銘柄2021』『健康経営優良法人2021』について」P15
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/1_METI_R2kenkoukeieikensyoseido_setsumei_shiryo.pdf 
*7 参考)経済産業省「健康経営ハンドブック2018」P2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeiei_handbook2018.pdf


【著者】矢口ミカ
プロフィール:ライター。不動産・リフォーム・不動産投資・転職・整理収納関連の記事を複数のメディアで執筆中です。主人が経営している不動産会社で所有する投資用不動産の入居者管理もしています。宅建の他に住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。