リーマンショック超えの最新有効求人倍率 厳しい雇用環境の中で人材紹介会社が為すべきことは?

新型コロナウイルスは社会の多方面に大きな影響を与えていますが、雇用情勢もその一つと言えるでしょう。

その数字は有効求人倍率にも現れており、かつてのような売り手市場一色の空気感はありません。

その一方で過去最高の売上高を記録する会社もあるなど、人手不足が続いている業種が存在することも事実です。

そこでこの記事では、有効求人倍率の最新の状況を再確認し、コロナ禍の影響と今後の見通しについて解説していきます。

人材紹介会社の採るべき施策についてもご紹介をしてまいりますので、お役立て下さい。

有効求人倍率とは

有効求人倍率とは「求職者1人当たりにつき何件の求人があるか」を表す指標のことです。

全国のハローワークの有効求人数と有効求職者数をもとに、厚生労働省が算出しています。

有効求人倍率の計算方法は、有効求人数を有効求職者数で割って算出します。

<例>有効求人数が300で、有効求職者数が150だった場合

300(有効求人数) ÷ 150(有効求職者数) = 2.0(有効求人倍率)

1より大きくなるほど「求人数が多く、働き手が不足している状態」で「売り手市場」、

1より小さくなるほど「求職者が多く、仕事探しが難しい状態」が「買い手市場」ということです。

有効求人倍率は景気とほぼ連動しており、景気の状況を測る指標として重視されています。

■有効求人数
・ハローワークにおいて、当月の新規求人数と、前月から繰り越された求人数の合計
・正規と非正規の求人は区別されおらず、すべての雇用形態の求人が含まれている
・転職情報サイトや、求人情報誌などの求人情報は含まない

■有効求職者数
・ハローワークに登録されている求職者数のこと
・前月から繰り越された求職者数とその月の新規求職者数の合計

最新の有効求人倍率は?

コロナ禍で過ぎ去った2020年の有効求人倍率は「1.18倍」となりました。
前年度と比較すると、0.42ポイントの大幅な下降です。

ここ10年余りの全国の有効求人倍率は、以下のグラフの通り推移しています。

(参考)厚生労働省「一般職業紹介状況」を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1b.html

2008年から2009年にかけては、リーマンショックを機に大きく落ち込みました。

しかし2010年以降には右肩上がりに回復し、2014年にはリーマンショック前の1.04倍を上回る、1.09倍を記録、そして2018年には1.61倍にまで上昇しています。

そして2020年の落ち込みは、新型コロナウイルスの影響に他なりません。

飲食店・宿泊施設を中心に解雇や雇い止めが相次いだ影響で、求職者が6.9%増加し、企業の求人数が21.0%減少した影響です。*1

リーマンショック時の2008年から2009年の下げ幅は0.41ポイントなので、リーマンショックを上回る落ち込みということになります。

リーマンショックの際は、以前の水準まで戻るのに4年も掛かっていることが、グラフから読み取れます。

現在も続くコロナの影響を考えると、今回は回復にどれほどの時間がかかるのかはまだまだ見通せないと言えるでしょう。

2021年3月時点の有効求人倍率は1.10倍

2020年1月から2021年3月までの有効求人倍率の推移をみると、9月までは下がり続けたものの、そこからは少しずつ回復の兆しが見えます。

2021年3月時点の有効求人倍率は「1.10倍」です。

2月は1.09倍でしたので、わずかに上回りました。

しかし企業からの新規求人は、前の年の同じ月と比べて15か月連続で減少しています。

厚生労働省も「3度目の緊急事態宣言による影響が懸念されるなど、求人の減少傾向は続くとみられる」としています。*2

(参考)厚生労働省「一般職業紹介状況」を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1b.html

正社員有効求人倍率は0.84倍

正社員に限定した有効求人倍率をみていきます。

新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の発令を境に、2020年1月には1.07倍を記録していた倍率が、右肩下がりで下降していることが分かります。

2021年3月の正社員有効求人倍率は「0.84倍」で、未だ「買い手市場」です。

正社員有効求人倍率は、2ヶ月連続で上昇し、ごくわずかに回復の兆しが見られましたが、まだまだ予断を許しません。

依然として転職市場は厳しい状況が続いており、即戦力の経験者採用など、一部の層以外の人材にとっては「転職難易度が高い」状態と言えるでしょう。

(参考)厚生労働省「一般職業紹介状況」を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/000771732.pdf

有効求人倍率の低迷が続く中で人材紹介会社が取り組むべきこと

有効求人倍率の低下は、人材紹介会社にとって、求職者に紹介できる求人数そのものが減る社会環境が続いていることを意味します。

このような状況下で、人材紹介会社が取り組むべきことは、以下の2つということになるでしょう。

売り手市場を見極める

売り手市場を見極めることが大切です。

正社員の有効求人倍率は、依然として買い手市場の状況が続いています。

しかしマイナビが行った調査によると、「正社員が不足している」と考えている企業は6割にものぼります。*3

さらに今後1年間の採用意向については、約8割の企業が「経験者採用」を積極的に行う予定だと回答しました。

特に「環境・エネルギー」「IT・通信・インターネット」「メーカー」の業種では採用意向が高い結果となっています。

逆に「レジャー」の業種では、採用に消極的な企業が4割を超えており、未だ苦しい状況に変わりありません。

人材紹介会社は「どの業界・どの業種であれば採用が行われそうか」を見極める必要があり、積極的に求人案件を獲得していくことが求められています。

(引用)マイナビ「「中途採用状況調査(2021年版)」
https://www.mynavi.jp/news/2021/03/post_30192.html

マッチング能力を向上させる

現在も新型コロナウイルスの影響により、企業の採用活動は消極的です。

このような状況下で転職を成功させるためには「マッチング能力」が鍵を握っています。

マッチング能力が向上すれば、限られた求人数の中からでも最適な提案を行うことができ、ミスマッチもなく、企業と求職者が満足のいく結果を導くことができるでしょう。

マッチング能力を向上させるために必要なことは2つです。

求職者目線でのヒアリング力

人材紹介会社は、仕事の内容や条件面だけをヒアリングするのではなく、企業が求めている人物像の理解と、入社後が想像できるような求職者目線でのヒアリング力が必要です。

表面的な仕事の内容だけでなく、企業が「どのような人材を求めているのか」を正確に把握し、期待される役割や入社後のキャリアアップなども盛り込むことで、より魅力的な求人情報となるでしょう。

そして、企業と求職者の希望を正確に理解したうえでマッチングさせることができれば、ミスマッチを少なくすることが可能です。

新しい選択肢の提案を行う

求人数が限られているため、求職者の希望に完全一致する求人を見つけ出すのは困難な状況です。

キャリアアドバイザーは、求職者の希望を踏まえたうえで、新しい選択肢の提案をしていかなければなりません。

未経験の業界・職種への転職をすすめることもその一つです。

そのためには、求職者の希望条件だけでなく、過去の経験、経歴、仕事に対する考え方などを把握し「この求人なら求職者も活躍でき、キャリア形成も可能ではないか」という視点で判断することが必要です。

合わせて企業に対しては、実績や経験だけでなく潜在能力もあわせて、可能性のある人材を発掘し、迅速に紹介することが求められます。

状況によっては活躍できる人材は経験者だけでなく、未経験者の場合もあるはずです。

企業と求職者、両者に寄り添った提案をしていきましょう。

まとめ

有効求人倍率の最新数値について紹介しました。

回復の兆しがわずかにうかがえるものの、予断は許さない状況が続いています。

そして、企業は「即戦力が欲しいが採用できない」、求職者は「思うような仕事がなかった」ということが起こりやすい状況です。

そこで救いの手を差し伸べることができるのが、“人材紹介会社”ではないでしょうか。

ぜひ現場で困窮している企業と、働き場所がなくて困っている求職者の助けになって下さい。


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【エビデンス】

*1(参考)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192005_00010.html

*2(引用)NHK政治マガジン「3月の有効求人倍率1.10倍 新規求人減少」
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/59445.html

*3(参考)マイナビ「「中途採用状況調査(2021年版)」
https://www.mynavi.jp/news/2021/03/post_30192.html


【著者】髙橋めぐみ

求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。