年度末は、退職希望者が増える時期です。同時に人員補充を目的とした求人が増えるため、転職の好機ともいえます。
一方で、年度末はアレルギー症状を引き起こすスギやヒノキの花粉が大量に飛散する時期でもあります*1。
実際、転職を考えている方のなかには、この時期の花粉症に悩んでいる方も多いことでしょう。
しかしながら、面談中にくしゃみや鼻水が原因で悪い印象を残すのは好ましくありません。また、新型コロナウイルス感染症などへの罹患を疑われるのも避けたいものです。
もっとも、花粉症の症状の多くは、事前に対策を講じることである程度軽減することが可能です。ただ、時期や薬剤の選択を誤ると症状をおさえるのが難しくなります。
そこで今回は、転職時の面談前に取り組むべき花粉症対策を紹介します。
あらかじめ取り組んでおくべき花粉症対策
花粉症対策は、症状がひどくなってからではあまり効果が期待できません。また、花粉症の症状が重くなると、通常業務や日常生活にも支障が生じてきます。そこでここでは、転職・面談の有無にかかわらず、早めに取り組んでおくと良い花粉症対策を紹介します。
初期療法
花粉が飛び始める前、あるいは症状がごく軽い初期の段階で予防的に薬を使用すると、症状の発現を遅らせたり症状を軽くしたりすることができます。これは、粘膜の炎症が進んでいない早い時期に治療を開始すると、粘膜が正常化しやすく、炎症の進行がおさえられるからです。軽い花粉症であれば、初期療法のみで対応可能です*2,3。
「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」によると、初期療法では6種類の薬剤が選択できます*2。
これらのうち、第2世代抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬は市販薬としても販売されています。
ただし、添加物や用法用量などが医療用のものとは異なる場合があるため、医師や薬剤師と相談のうえで使用することをおすすめします。
第2世代抗ヒスタミン薬の例(成分名) | アゼラスチン、エピナスチン、ケトチフェンフマル酸塩、セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン、メキタジンなど |
鼻噴霧用ステロイド薬の例(成分名) | フルチカゾンプロピオン酸エステル、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルなど |
なお、毎年症状が重症化する場合は、初期療法に取り組んだあと早めに専門医を受診してください。重症の花粉症に効果が期待できる薬剤は、医師の処方せんがなければ入手できません。
症状に応じた薬剤選択
花粉症対策としては、症状に応じた薬剤を使うことも大切です。
くしゃみや鼻水の症状を市販薬でおさえたい場合は、抗ヒスタミン薬を使用します。ただし、初期療法で第2世代抗ヒスタミン薬を使用している場合は、ほかの抗ヒスタミン薬を追加してはいけません。作用が重複するため、眠気など好ましくない作用が強くあらわれる可能性があります。
鼻づまりには、鼻噴霧用ステロイド薬がおすすめです。こちらは、初期療法の第2世代抗ヒスタミン薬と併用しても大丈夫です。
ひどい鼻づまりには、初期療法に血管収縮薬配合の点鼻薬を追加するとよいでしょう。ただし、血管収縮薬配合の点鼻薬の使用は最小限にとどめてください。長期間連用すると、かえって症状が悪化するおそれがあります。
目のかゆみには、抗ヒスタミン薬や「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」と呼ばれる成分が配合されている点眼薬をおすすめします。両者は同時配合されている場合があります。
花粉症の症状 | 効果が期待できる市販薬 |
くしゃみ・鼻水 | 抗ヒスタミン薬ただし、初期療法で第2世代抗ヒスタミン薬を使用している場合は併用しない。 |
鼻づまり | 鼻噴霧用ステロイド薬初期療法で第2世代抗ヒスタミン薬を使用している場合でも併用可能。 |
ひどい鼻づまり | 血管収縮薬配合の点鼻薬初期療法と併用可能。使用は最小限におさえる。血管収縮薬の例:ナファゾリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリンなど |
目のかゆみ | 抗ヒスタミン薬やケミカルメディエーター遊離抑制薬を配合している目薬初期療法と併用可能。ケミカルメディエーター遊離抑制薬の例:クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウムなど |
アレルギーポータル「花粉症(アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎)」*4を参考に筆者作成
面談直前の花粉症対策
初期療法で症状がおさえられない場合や、毎年のように症状が重症化している場合は、早めに医療機関を受診して適切な薬剤を処方してもらいましょう。症状が重い場合に一時的に用いられるステロイド薬の飲み薬や、ステロイド薬配合の目薬は市販されておらず、対応可能な範囲に限界があるためです。
なお、症状が軽く市販薬で対応可能な場合であっても、面談直前に薬を使用する場合はいくつか注意点があります。
飲み薬・点鼻薬・目薬それぞれにポイントがありますので、市販薬選びの参考にしてください。
飲み薬:眠くなりにくい薬をあらかじめ探しておく
花粉症の飲み薬で比較的眠気が出にくいのは、第2世代抗ヒスタミン薬です。症状によっては、漢方薬もよいでしょう。
ただし、第2世代抗ヒスタミン薬であっても眠気の副作用がまったくないわけではありません。例えば、眠気が出にくいとして知られているフェキソフェナジンであっても、0.1~5%未満ですが眠気の副作用が報告されています*5。また、漢方薬も相性があります。
したがって、自分に合う使いやすい市販薬をあらかじめ探しておくことが大切です。
点鼻薬:即効性のある血管収縮薬配合の点鼻薬がおすすめ
面談当日に鼻づまりがひどい場合は、血管収縮薬配合の点鼻薬がおすすめです。効き目があらわれるまでの時間が短く、作用が数時間続くため、面談直前に使用しても大丈夫です。ただし、長期連用は症状悪化をまねくおそれがあるため、避けなければなりません。
なお、抗ヒスタミン薬入りの点鼻薬も市販されていますが、眠気の副作用が否定できないため面談前にはおすすめできません。
目薬
即効性を期待する場合は、抗ヒスタミン薬入りのものを選んでください。持続的な作用を求める場合は、ケミカルメディエーター遊離抑制薬配合の目薬をおすすめします。不安がある場合は、両者がともに配合されているものを選ぶとよいでしょう。
面談直前の花粉症対策におすすめ市販薬
種類 | おすすめの薬剤 | ポイント |
飲み薬 | 第2世代抗ヒスタミン薬、漢方薬 | あらかじめ眠くなりにくいもの・相性のよいものを探しておく。 |
点鼻薬 | 血管収縮薬配合の点鼻薬 | 面談直前の使用で効果が期待できる。 |
目薬 | 抗ヒスタミン薬+ケミカルメディエーター遊離抑制薬配合の目薬 | 抗ヒスタミン薬がかゆみを速やかにおさえ、ケミカルメディエーター遊離抑制薬が持続的な作用を発揮。 |
花粉症対策には生活習慣の見直しも大切
今回は、面接前の花粉症対策におすすめの市販薬を紹介しました。しかし、花粉症の症状悪化を防ぐためには生活習慣の見直しも必要です。
睡眠時間を確保して質の良い睡眠をとること・規則正しい生活を心がけることは、免疫機能を維持するためにも重要なことです。また、風邪をひかないようにすること・飲酒や喫煙を控えることなども、鼻やのどの粘膜を正常に保つために欠かせません。
転職は、その後の人生にも大きく影響する大イベントです。万全を期して市販薬を活用するのもおすすめですが、日々の健康管理にも気を配り、体調を整えて面談に臨みましょう。
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【エビデンス】
*1 引用)環境省「花粉症環境保健マニュアル2022(令和4年3月改訂)」P.31,32
*2 参考)環境省「花粉症環境保健マニュアル2022(令和4年3月改訂)」P.41,42
*3 参考)厚生労働省「Q13.早く治療すると、どのようなメリットがあるのですか。」
*4 参考)アレルギーポータル「花粉症(アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎)」
*5 参考)アレグラ錠添付文書
【著者】中西 真理
公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。