身元保証人って何?条件や頼める相手がいない場合の対処法を紹介

内定先の会社から「身元保証書」の提出を求められる場合があります。

身元保証書には「身元保証人」のサインが必要です。

しかし、身元保証人を誰にお願いすれば良いのか分からず、困っている方も多いのではないでしょうか。

今回は身元保証人の条件や、身元保証人を頼める相手がいないときの対処法について紹介します。

身元保証人とは

まず「身元保証書」とは、自分の「身元」を身元保証人という第三者に「保証」してもらう書類です。*1
そして、自分の身元を保証してくれる第三者が「身元保証人」となります。

企業は、入社の段階で新しく入ってくる社員の経歴や身分が本当に正しいかどうか確かめるために「人物保証」として身元保証書の提出を求めています。

また、入社後に横領、詐欺、無断欠勤などによって会社に対して損害を与えた場合、本人とともに身元保証人が「賠償責任」を負うことも約束します。

つまり身元保証人には、「人物保証」と「賠償責任」の2つの役割があるのです。

身元保証人と連帯保証人との違い

「保証」や「賠償責任」と聞くと、その言葉の重さに不安を覚えるかもしれません。

しかし、賃貸契約を結ぶ際などに必要な「連帯保証人」とは責任の範囲が大きく異なりますので、無闇に心配する必要はありません。

連帯保証人の場合は、契約者本人がもたらした損害すべてを補填する責任があります。
例えば、契約者本人が100万円の損害を出した場合、連帯保証人は「100万円全額」を賠償しなければなりません。

一方で身元保証人は、契約者本人がもたらした損害に対する賠償責任の範囲は限定されています。
本人に重大な過失や故意があった場合でも、身元保証人に対して、全額の賠償を請求することはできないことになっているのです。*2

こうした責任の範囲が、連帯保証人と身元保証人の大きな違いです。

身元保証人が負うべき責任

身元保証人の責任の範囲について、具体的に説明します。

横領や詐欺、無断欠勤など、意図的に企業へ損失を与えた場合、本人が補填や賠償ができなければ、身元保証人の責任となります。

しかし身元保証人の責任が重くなりすぎないように、「身元保証法」という法律によって一定の制限が設けられています。*3

例えば、身元保証契約の期間は「特に定めがなければ原則として3年間」です。
契約内で期間を定めた場合でも、「上限は5年間」と定められています。

また、会社は「労働者が業務上不適任・不誠実と考えたり、あるいは労働者の勤務内容や勤務地を大きく変更したりしたような場合」には、このことを「身元保証人へ通知する義務」があります。

この通知を受けた身元保証人は、希望すれば「保証契約を解除」することも可能です。*3

もし損害補償となった場合でも、企業側の管理責任や状況等を考慮し裁判所が決定するため、身元保証人に100%の損害賠償を請求されることは通常ありません。*4

身元保証人の条件

身元保証人は誰でもなれるわけではありません。

有事の際に賠償に応じられる資力のある人でなければならないため、「安定した収入を得ていること」が一般的な条件となります。*2

しかし身元保証人の条件は、会社ごとに異るので注意が必要です。

例えば、「本人とは生計が異なる」ことが条件にされていれば、同居している配偶者や親に身元保証人を依頼することは出来ません。

また親が年金を受給している場合、「年金生活者は身元保証人にできない」といった条件が設けられている会社もあれば、「経済的に独立していれば年金暮らしでも問題ない」としている会社もあります。

資格要件をよく理解して、身元保証人として誰を立てるのが最適かを考えましょう。

身元保証人を頼む時の注意点

身元保証人を頼むときの注意点は3つです。

・保証人の了承を得てサインしてもらう
・代筆可能かは会社に確認する
・印鑑は別のものを用意する

身元保証人を頼む場合は、必ず本人の了承を得てサインをしてもらいましょう。
身元保証書提出後に、身元保証人の本人確認をする企業もあります。
勝手に名前を借りてサインした場合、トラブルに繋がる可能性があります。

遠方に住む人に身元保証人を頼みたい場合など、代筆をしたい場合は会社に確認しましょう。

代筆が可能かどうかは、会社によって異なります。
身元保証人の了承を得たからと言って、会社に確認せずに代筆するのは絶対にやめましょう。

また両親や配偶者に身元保証人をお願いする場合は、別の印鑑を用意してください。
同じ印鑑だと受け付けてもらえない可能性があります。

身元保証人がいないときの対処法

転職活動では、身元保証人を用意できないということも決して珍しくありません。

身元保証人が見つからないときも焦らずに行動しましょう。

ここでは、身元保証人がいないときの対処方について2つお伝えします。

・まずは会社に相談
・身元保証人代行会社の利用を検討

まずは会社に相談

身元保証人を頼みたい人が遠方に住んでいて提出期限までに間に合わない場合や、両親が年金生活者で、親族にも条件を満たす人がいない場合など、すぐに頼める人がいない時は会社に相談してみましょう。

やむを得ない事情を正直に相談することで、身元保証人の条件を変更してもらえたり、身元保証人代行会社を紹介してくれたりする場合があります。

会社によっては身元保証書が提出できない場合でも、入社できることがあるようです。*5

身元保証人代行会社の利用を検討

どうしても書類を準備できない場合には、身元保証人代行サービスの利用を検討しましょう。

身元保証人代行会社とは、お金を払うことによって身元保証を担ってくれるサービスのことです。

身元保証人代行会社を利用することで、身元保証人を見つけられない場合でも対応できるようになります。

身元保証書の提出拒否はできるのか

身元保証書については、労働基準法では特に規定はありませんので、提出を拒否することも可能です。*4

しかし就業規則で「身元保証書を提出しない場合、採用を認めない」などと記載されていれば、企業側も採用を拒否する可能性があります。

身元保証書の提出を拒否したために、解雇が有効となった判例としては、シティズ事件(平成11年12月16日東京地判)があります。*6

この事件では、金銭を扱うことに伴う横領などの事故を防ぐために、社員に自覚を促す意味も込めて、身元保証書の提出を社員の採用の条件としていました。

裁判所は、身元保証書を提出しないことは「従業員としての適格性に重大な疑義を抱かせる重大な服務規律違反又は背信行為」と判断し、解雇を有効としています。

まとめ

身元保証人について詳しく説明してきました。

身元保証人の条件は会社によって異なるため、人に頼む前にその条件を確認することが大切です。

もし身元保証人をお願いできる人がいない場合は、会社に相談をしてみましょう。
正直に今の状況を伝えることでアドバイスをもらえる可能性があります。

いずれにしても身元保証人がいないからと言って、即座に内定取り消しとなることはありません。
焦らずに、身元保証人代行会社を利用することも検討しながら進めてください。

あなたの転職活動が上手くいくことを願っています。


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【エビデンス】
*1 マイナビ学生の窓口フレッシャーズ「身元保証書の役割、提出方法など、基本事項を徹底解説!
*2 マイナビジョブ20’s「身元保証人の条件や連帯保証人との違いについて
*3 サポネット「採用の法律学|入社時の「身元保証書・保証人」の法的意義とトラブル時の対応方法
*4 マイナビ転職「損害賠償についての誓約がある身元保証書の提出は一般的ですか?
*5 ミドルシニアマガジン「内定後の手続きも抜かりなく!身元保証人がいない場合の対処法
*6 全基連「全情報 解雇予告手当請求控訴事件


【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。