採用戦略の1つにも キャリア教育導入のメリットとは?

近年キャリア教育が注目され、企業での推進を求める動きが広がっています。
しかし「キャリア教育にコストなんてかけらない」「企業にメリットがない」と考えている担当者も多いのではないでしょうか。
確かにキャリア教育は、企業に負担がかかる取り組みです。

その一方で、キャリア教育には「企業の知名度が上がる」「若手の人材確保が期待できる」などのメリットがあります。

そこで今回は、企業がキャリア教育を支援するメリットや、実際に行っている支援活動の内容を紹介していきます。
「自社のことを若い人たちに知ってもらう機会がない」「若い人が全然応募してくれない」と悩んでいる担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

キャリア教育とは

キャリア教育とは、「子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的働きかけのこと」です。
文部科学省では、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義しています。*1

現在のキャリア教育は小学校から行われ、中学校、高校と成長していく過程で、発達の段階に合わせて実施されています。

具体的には、職場見学や職業体験、インターンシップなどが行われています。

キャリア教育が必要とされる背景

キャリア教育の重要性が叫ばれるようになった背景には、20世紀後半におきた地球規模の情報
技術革新に起因する社会経済・産業的環境の国際化、グローバリゼーションがあります。*2

産業・経済の構造的変化や、雇用の多様化・流動化等は、子どもたち自らの将来のとらえ方にも大きな変化をもたらしました。

子どもたちは、自分の将来を考えるのに役立つ理想とする大人のモデルを見付けにくく、自らの将来に向けて希望あふれる夢を描くことも容易ではなくなっています。
 
また環境の変化は、子どもたちの心身の発達にも影響を与え始めており、
「人間関係をうまく築くことができない」
「自分で意思決定できない」
「自己肯定感をもてない」
「将来に希望をもつことができない」
といった子どもの増加などがこれまでも指摘されてきています。*2

大きく変化する社会の中で、子どもたちが希望をもって未来を切り拓いて生きていくためには、変化に対応していく力と態度を育てることが必要です。

そこで注目されたのが「キャリア教育」でした。

子どもたちが未知の知識や体験に関心をもち、仲間と協力して学ぶことの楽しさを通して、未経験の体験に挑戦する勇気とその価値を体得することで、生涯にわたって学び続ける意欲を維持する基盤をつくることができるようになると考えられています。*2

(引用)文部科学省「第1節 キャリア教育の必要性と意義」P2

しかしキャリア教育を実践し、変化に対応していく力を持つ若者を育てていくためには、教育現場だけでなく、社会を構成する各界が互いに役割を認識し、一体となり対応することが必要です。

企業がキャリア教育を支援するメリット

2005年に制定された「次世代育成支援対策推進法」では、次世代を担う子どもが健やかに生まれ育成される環境を企業が整備するように義務づけており、社会貢献活動の一環で出前授業などのキャリア教育に取り組んでいる企業が増えてきました。*3
時間や手間などのコストがかかっても、教育支援をする企業が増えているのは、企業にとってもメリットがあるからです。

東京商工会議所が行った「企業による教育支援活動に関する調査集計結果」では、企業が感じているメリットは下記の結果となりました。

(引用)経済産業省「キャリア教育支援ガイドブック」p4

大きく3つに分けてお伝えしていきます。

・企業の認知度・知名度の向上
・若手の採用活動への良い影響
・社内の人材活性化

企業の認知度・知名度の向上

企業がキャリア教育の支援活動を行うことによって、企業としての認知度・知名度が向上するというメリットがあります。
自分が知っている企業かどうかは、就職先を選ぶ際の判断基準の1つになります。
認知度が上がれば、就職先に選んでもらえる可能性も高くなるでしょう。
また自社製品やサービスのファンになってくれる可能性もあります。

若手の採用活動への良い影響

キャリア教育を行うことによって、学校を中心とした家庭や地域社会と関わることができます。
学校や教育委員会、地域社会と強いパイプを作ることで、将来の人材確保に繋がるでしょう。
また人事部門は、キャリア教育によって把握した若者の意識や実態を採用活動などに反映できるので、採用時のミスマッチや早期離職の防止にも役立ちます。

社内の人材活性化

社員が子どもたちに仕事を教えることによって、社員自身が仕事への理解や誇りを深め、新たな気づきを得ることに繋がります。
その結果、社員の意識やモチベーション向上に期待ができます。

キャリア教育の実践例

キャリア教育の支援をする取り組みとして経済産業省が「キャリア教育アワード」を行っています。
キャリア教育アワードとは、産業界による優れた教育支援活動の取組とその効果を広く社会で共有し、こうした活動を奨励・普及・促進することを目的として、企業や経済団体による教育支援の取組を公募し、優秀と認められる事例を表彰するものです。*4

2010年度から実施しており、最も優秀と認められる取り組みには、経済産業大臣賞が授与されます。

ここでは「2020年キャリア教育アワード」を受賞した「コロナ禍での課題と新たな可能性に挑戦した企業」の取り組みを4つご紹介します。

障がいのある子どもたちに向けた特別支援学校等へのキャリア教育支援活動

シャープ株式会社とシャープ特選株式会社が障がいのある方の職業観や勤労観を育み、自立支援につながるきっかけづくりとして、3つのコースに分けてキャリア教育を実施しました。

  1. 職場見学(来社型)コース
    障がいのある社員が働く職場見学と座学を通じて、働くことの大切さを伝える。
  2. 職場体験実習(来社型)コース
    障がいのある社員と共に就労体験と座学を通じて、働くことの大切さを伝える。
  3. 出前授業(学校訪問型)コース
    障がいのある社員が講師として訪問し、座学とグループワークを通じて、働くことの大切さを伝える。

オンライン出前授業を開始したことで、これまで対象としてこなかった支援学校にも職業観や将来を考える機会を提供することに成功しました。

泉南市におけるキャリア教育推進活動

NPO法人JAEがコロナ影響下でも、子どもたちが実社会の課題に触れ、仕事体験を通じて答えのない問いへの挑戦をし、大人と交流することで「夢を描き、将来について前向きに考える力」「困難を乗り越えて前へと進む力」を育みたいという考えから実施しました。
映像教材やオンラインを活用した「リモート職場体験」を企業や教員と協働開発し、事前学習で自己分析や目標設定をした後、ポップコーン会社の社員として「CM製作」の仕事体験に取り組む内容となっています。

具体的には下記のような工夫を行いました。

●ワークシートや指導案等を事前に配布し、学校がスケジュールに組み込みやすいように工夫
●ゲーム感覚で実施できるなど、興味関心を引きやすい授業内容を設計
●直接訪問せず、学校のタイミングで活用できる動画を配布
●動画はクイズやプチワークや、働く人が語る具体的なエピソードを盛り込む
●企業の制服や資料など物品の貸し出しも実施
●生徒のプレゼンに加えて生徒と社員の交流・質疑応答も実施
●リアルかオンラインか、展開パターンを複数設けて、学校の環境に合わせて臨機応変に対応

キレイのタネまき教室 ~おそうじについて学ぼう~

株式会社ダスキンが、掃除の基礎知識の習得を目標とした2部構成からなるキャリア教育を実施しました。

「家庭掃除」についての体験型学習で、STEP1とSTEP2に分かけれています。

STEP1:ホコリ汚れの正体を知り、掃除の大切さを学ぶ
STEP2:窓・廊下・トイレ掃除の正しい手順とその意義・効果

これまでの出前授業は、雑巾を子どもたちが実際に絞るなどの体験学習でしたが、オンラインで実施することは困難であると判断し、内容を「学校掃除」から「家庭掃除」に変更、新たにWeb教材として制作しました。

にししんハイスクール・ものづくりコンテスト

西尾信用金庫は、愛知県の専門高校の機械、電気・電子・情報系学科に学ぶ生徒を対象に「にししんハイスクール・ものづくりコンテスト」を開催しています。
ものづくりのテーマに「コロナ対応」を入れたことで、参加者たちは今後の「withコロナ」について考えたり、社会に出てからのWeb活用など、相手が見えない状況で自分たちの伝えたいことを伝える構成を考えたりするきっかけとなりました。

企業としては、高校生が地元企業などと連携し、学校で学んだ技術を活かして、テーマに沿った製品開発を行うことで「ものづくり人財」のを育成を目指しています。

まとめ

地球規模の情報技術革新に起因する社会経済・産業的環境の国際化、グローバリゼーションなのどの影響を受け、キャリア教育の必要性と役割が見直され、再び注目されています。
学校と企業が連携してキャリア教育を行っていけば、企業は社会貢献企業としての認知度や知名度の向上が期待でき、将来に向けての優秀な人材の確保にも繋がっていくでしょう。
さらに、社員の意識向上も期待することができるため、社内の人材活性化にも繋がっていきます。

会社の知名度が上昇しないと悩んでいる企業や、若い人材の採用に悩んでいる企業は、職場見学などのハードルの低いところから、キャリア教育に取り組んでみるのはいかがでしょうか。


【無料】人材紹介事業者向けセミナーのアーカイブ配信

現在、人材紹介事業を行っている方はもちろん、
人材紹介事業の起業を検討中の方向けの動画もご用意しております。
求職者集客から求人開拓まで、幅広いテーマを揃えていますので、お気軽にご視聴ください!
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
視聴料 :無料
視聴手順:
①下記ボタンをクリック
②気になるセミナー動画を選ぶ
③リンク先にて、動画視聴お申込みフォームにご登録
④アーカイブ配信視聴用URLをメールにてご送付
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –


【エビデンス】
*1 文部科学省「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(第二次審議経過報告)
*2 文部科学省「第1節 キャリア教育の必要性と意義」P1
*3 厚生労働省「次世代育成支援対策推進法の概要
*4 経済産業省「コロナ禍でも学びを止めない!キャリア教育レポート〜キャリア教育アワード受賞企業・団体がみた2020年〜


【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。