転職先の企業を選ぶときに、年収や給与は大きな判断基準となります。
転職のタイミングで少しでも上げたいと考える人も多いでしょう。
では「給与がもう少し高ければ入社したい」という企業に出会ったとき、どのように対応すれば良いのでしょうか。
なかなか自分からは切り出しづらい年収交渉について、成功させるためのポイントや注意点をご紹介します。
そもそも年収交渉はマナー違反?
結論からお伝えしますと、企業から提示された給与・年収に納得できない場合は、年収交渉をしても直ちに問題にはなりません。
転職経験者へのアンケートによると、希望年収額を「直近の年収より高めに答えた」人が52.9%です。
半数以上の人が、年収アップを視野に入れた交渉をしています。*1
さらに「希望年収を高めに答えた」人のうち、「希望年収より高い額を支給されている」人が40.5%、「希望年収とほぼ同額を支給されている」人が24.8%と、合わせて65.3%もの人が年収アップに成功しています。*1
年収交渉を成功させるためのポイント
年収交渉は悪いことではありません。
しかし相談の仕方を間違えてしまうと、あなたの印象が悪くなる可能性があることには、注意しましょう。
ここでは、年収交渉を成功させるためのポイントを5つ紹介します。
・業界・業種の年収相場を知っておく
・自分の年収相場を確認する
・企業を納得させる根拠と理由を準備する
・年収交渉のタイミングを見極める
・年収の最低ラインを決めておく
しっかりと準備を行い、自分の希望と能力に相応しい年収を目指しましょう。
業界・業種の年収相場を知っておく
給与水準は業界・業種によって差があるため、年収交渉をする前に希望する業界の給与水準を確認することが大切です。
今の自分の年収を基準に考えてしまうと、希望する業界の給与水準と大きな開きが生まれる可能性もあります。
下記の表を参考に、自分の年収と比較してみましょう。*2
自分の経験やスキルを業界の給与水準に照らし合わせ、無謀な希望年収を伝えないよう注意する必要があります。
自分の年収相場を確認する
年収交渉をする前に、自分の経験やスキル、能力に相応しい年収相場を知っておかなければなりません。
企業は転職者の経験やスキルなどを総合的に判断して給与を決めますが、優秀な人材を適正なコストで採用したいというのも本音です。
そのような中で、業界・職種・能力・経験に応じた平均年収よりもはるかに高い金額を希望してしまうと採用されることはありません。
さらには、自信過剰な人、客観的に物事を見られない人だと思われてしまう可能性もあります。
自分の年収相場を把握するためには、人材紹介会社に相談し客観的なアドバイスをもらうのも、一つの手段でしょう。
企業を納得させる根拠と理由を準備する
年収交渉を成功させるためには、「年収に見合う人材だ」「年収が高くても採用したい」と企業を納得させる客観的な根拠が必要になります。
これまでの経験や実績、スキルなどを提示できるように整理しておきましょう。
実績やスキルは「目標を130%達成し、1カ月間で1,000万円を売り上げました」「年間MVP賞に選ばれました」など、具体的かつ客観的に理解できる言葉で伝えることが大切です。
企業側が、あなたがどのように活躍できるのかをイメージできれば、スムーズな給与交渉ができるでしょう。
また「なぜ年収を上げたいのか」という納得感のある理由を用意することも重要です。*3
例えば「子どもが産まれるので、今の収入を維持する必要がある」などと伝えれば、悪い印象は持たれないでしょう。
年収交渉のタイミングを見極める
年収交渉のタイミングも重要です。
一次面接でいきなりお金の話をすると「年収が高ければ他の企業でも良いのか」と思われてしまい、良い印象になりません。
希望年収を伝えるのは、面接官から「年収はいくらを希望しますか」と話を振ってくれるまで待ちましょう。
もし最終面接まで話が出ない場合は、「何か質問はありませんか」と質問されたタイミングで、こちらから伝えるようにします。
企業が転職希望者に内定を出すときには、すでに年収が決定しているケースが多いものです。
年収に重点を置いて転職活動を行っている方は、内定が出る前に交渉をしましょう。
年収の最低ラインを決めておく
年収交渉をするときには、希望年収だけでなく、年収の最低金額を決めておくことも大切です。
具体的な最低金額を決めておけば、年収交渉が上手くいかなかったときの引き際を判断しやすくなります。
また年収を上げることを目的とした転職活動でも、給与面以外に魅力を感じる企業と出会うかもしれません。
その企業が自分で決めた年収の最低ラインを満たしていれば、また違った選択肢としての転職という可能性も出てくるでしょう。
年収交渉をするときの注意点
年収交渉を成功させるために、注意点についても確認しておきましょう。
・待遇面の質問ばかりするのはNG
・年収の虚偽申告は危険
・希望年収が通らないこともある
待遇面の質問ばかりするのはNG
逆質問でも、待遇や給与の質問ばかりしないようにしましょう。
企業は面接を通じて「この人は自社で活躍してくれそうか」を見ています。
そこで待遇面の話ばかりしてしまうと、「この人は給与だけで転職先を決めているんだな」というイメージを持たれてしまうでしょう。
仕事内容に関する質問などを挟んでから、希望年収の話を切り出すなど、質問の順番なども考慮しましょう。
年収の虚偽申告は危険
面接でこれまでの年収を聞かれたときに、事実よりも多い年収を答えてしまう方がいます。
前職の年収を考慮して、これからの年収を考えてくれる企業もありますので、年収を水増しすることで良い条件が引き出せるかもしれません。
しかし入社時に、源泉徴収票の提出を求められますので虚偽申告が分かってしまいます。*3
虚偽申告が発覚した場合、内定が取り消しになることもありえますので、年収は正直に伝えましょう。
希望年収が通らないこともある
いくら優秀な人でも、希望年収が通らないことがあります。
マイナビが中途採用を行っている企業に対して行った調査では、「年収交渉では自社の希望年収が優先される」が72.5%となっており、「転職者の希望年収が優先される」と答えた企業は27.6%に留まりました。*4
希望年収を提示したときに、下記のような背景があると年収交渉しても実らない可能性が高いでしょう。*5
- 同じ職種・ポジションを複数名採用するため、給与体系や給与テーブルが統一され、個別の事情が考慮されない
- 給与体系・給与制度が確立・固定されており、スキルが高い人でも「特例」として認めづらい
- 最近、同じグレードの社員を採用したため、その人の給与額と差をつけづらい
- 現社員と同等のポジション(部長・課長など)で入社する場合、現社員の給与レンジと大差をつけづらい
しかし企業が「どうしても欲しい人材」だと判断した場合は、「入社一時金」といった形で上乗せするケースもあります。
まとめ
年収交渉のポイントや注意点についてお伝えしてきました。
転職時に年収交渉をすることそのものは、問題ありません。
しかし進め方次第では、誤解を生み、内定に影響するリスクがあります。
「自分で給与交渉を行うのは難しい」と感じる方は、人材紹介会社を利用してみるのも一つの手段でしょう。
あなたの経験やスキル、希望年収を踏まえて求人を紹介してくれたり、年収交渉そのものを代行してくれます。
あなたの転職活動が上手くいくことを祈っています。
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【エビデンス】
*1 マイナビ転職「「希望年収」履歴書と面接で答え方が違う? 好印象な年収アップの交渉テクは?【例文あり】」
*2 マイナビ「【2021年12月度】正社員の平均初年度年収推移レポート」P3
*3 NIKKEI STYLE「転職時の年収交渉 今の年収を高めに伝えるのは反則?」
*4 マイナビ「中途採用業務の実績調査」P8
*5 NIKKEI STYLE「転職するなら年収アップ 給与交渉で失敗しない秘訣」
【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する一部上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。