責任を持って仕事を続けていく上で、体調に全く不安がないという人は余り多くないと思います。
中には、病気やけがなどの体調不良で休職したり、退職したりする人もいることでしょう。
厚生労働省は、2020年11月1日から2021年10月31日の1年間に、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%だと発表しました。*1
つまり、10社に1社がメンタル不調で休職・退職者がいるという実態があります。
しかし転職活動では、健康上の理由での退職にネガティブな印象を持つ方も多いです。
面接で退職理由を質問されたときに「答えづらい」と感じる方もいるでしょう。
そこで今回は、健康上の理由で退職した場合の転職先への伝え方についてお伝えします。
企業が退職理由を聞く理由
企業が退職理由を質問する理由は、概ね以下の2つに集約されるでしょう。
・同じ理由で退職しないかを確認するため
・自社と求職者の相性を判断するため
同じ理由で退職しないかを確認するため
面接で退職理由を聞く理由の一つに、「前職と同じ理由で退職する可能性はないか」を確認したいという思惑があります。
前職を退職した理由が「人間関係がうまくいかなかった」など、どの職場でも起こり得る内容であった場合は、同様の理由で自社も辞めてしまうのではないかと不安を持たれてしまいます。
一方で、今回の転職によって解消できる理由である場合は、長く活躍してくれそうだと思われ、企業から懸念を持たれる可能性は低くなるでしょう。
退職理由には、仕事への考え方や姿勢が現れるものです。
面接で伝えるときには、ネガティブな印象にならないように気を付ける必要があります。
自社と求職者の相性を判断するため
企業は、自社と求職者の相性を判断するためにも退職理由を確認しています。
例えば「給与アップをするための転職」だった場合、面接官はそれを実現できる環境・仕組みが自社にあるか、求職者の目的を実現することが自社のメリットになるかを考えます。
良い人材だからと採用しても、求職者の目的や希望を満たせなければ、求職者のモチベーションが下がり、再び退職してしまうことも考えられるからです。
短期間での退職は、企業にとってマイナスになります。
退職理由を聞くことで、自社と求職者の相性を判断し、短期間での退職を防ごうとしているのです。
健康上の理由で退職した場合の伝え方
履歴書に「退職理由を書かなければならない」という決まりはありません。
書類選考が行われる場合、書面に記載されていることのみで採否を判断されますので、あえて退職理由を記載しないという方法もあります。*2
しかし面接で退職理由を質問されたときには、正直に伝えた方が企業とのミスマッチを防ぐことができるでしょう。
3つのパターンに分けましたので、参考にしてみてください。
・健康上の問題が解決している場合
・健康上の問題が解決していない場合
・休職中の場合
退職理由で好印象を与えるためには、「業務への影響はなさそうだ」「同じ理由で辞める可能性は低いだろう」と判断してもらえるような伝え方を意識することが大切です。
解決している場合
現在は回復し、健康上の問題が解決している場合は、詳しく説明する必要はありません。
「現在は完治しており、働くうえで問題になることはありません」とはっきりと伝えましょう。
簡単に事情や体調について説明するとともに、今後に対する前向きな姿勢を見せることで、面接官にいい印象を持ってもらえます。
体調不良の原因が労働環境にあったとしても、前職への批判的な発言はネガティブな印象を与えてしまいます。
自身の健康管理について反省を述べ、健康に対する意識が高まったことを伝えましょう。
解決していない場合
体調が完全に回復しておらず、業務に影響がある場合は、「1か月に1度、検診のために半休を頂ければ助かります」などと伝えておきましょう。
業務への影響があったとしても、入社してもらいたいと思ってもらえれば、配属先のフォロー体制を整えてくれるでしょう。
前職では接客をしていましたが、気管支炎になってしまい、咳のためにお客様と会話することが難しくなりました。
現在は気管支炎の症状は落ち着きましたが、2か月に1度、検診のために半休をいただきたいと考えております。
また現在でも、急に咳き込んでしまうことが月に1回程度あるため、接客ではなくデスクワークが中心の仕事に転職したいと考えるようになりました。
休職中の場合
休職中に転職活動をしたいと考えている方もいるでしょう。
転職活動では、休職している事実を自ら率先して職務経歴書に記載する義務はありません。*3
しかし、休職していることが選考中や入社後に発覚すると、人事担当者に悪い印象を与えてしまう可能性があります。
休職している事実を伏せて選考を進めていても、結局は源泉徴収票や住民税の手続き時に発覚してしまうケースが想定されますので、事前に伝えておくと安心です。
介護の仕事にはやりがいを感じておりましたが、腰が痛くなり病院に行くと「疲労骨折を起こしている」と診断されました。
現在は体調も回復し、来月には休職が明ける予定です。
休職期間中に自分のキャリアについて見つめ直した結果、長期的に取り組んでいける仕事へのキャリアチェンジをしたいと考えるようになりました。
休職中に転職活動をしていることが現在の勤務先に知られると、復職することを前提に休職となっているため、解雇となってしまう可能性があります。*3
できれば休職中は回復することに集中し、転職活動は復職や退職した後に行うのが望ましいでしょう。
病気やけがを隠したときのデメリット
病気やけがの健康上の問題が解決していない場合や、再発の可能性がある場合は、正直に伝えるようにしましょう。
病気やけがを隠して入社すると、公休日以外に病院に行くことが難しくなります。
周りからの理解が得られず、症状が悪化することもあるでしょう。
また、面接時に健康状態について尋ねられて、偽って回答をした場合は、内定取り消しになることもあります。*4
一方で、入社前に病気やけがについて伝えておけば、通院への理解が得られたり、配属先のフォロー体制を整えてくれたりしてくれるはずです。
まとめ
健康上の理由で退職した場合の転職先への伝え方についてお伝えしてきました。
企業は、応募者のスキルや能力、経験、人柄などを総合的に判断して採否を決定します。
採用したいと判断した人材の場合は、納得できる説明さえあれば、健康上の理由で退職したことが問題になることはほとんどありません。
企業と良好な関係を保ちながら、元気に仕事を続けるためにも、ウソをつくことなく退職理由を伝えるようにしましょう。
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【エビデンス】
*1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「過去1年間にメンタルヘルス不調で1カ月以上休業・退職した労働者のいる事業所割合は10.1%」
*2 マイナビ転職「病気で退社した場合、履歴書にどう記載すべき?」
*3 マイナビAGENT「ブランクができた場合の職務経歴書記載方法」
*4 マイナビ転職「持病で通院することを伝えるべきか?」
【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供するプライム市場上場企業(元東証1部)に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。
体調不良が原因で、退職しました。
前職では、複数のプロジェクトに関わっていたこともあり、健康管理よりも業務を優先してしまいました。
その結果、胃潰瘍を発症してしまい、療養に専念するために辞職いたしました。
現在は医師からも完治したと言われており、業務に支障はありません。
今後は健康管理を徹底し、同じようなことが起きないよう注意しながら積極的に仕事に取り組んでいきたいと思っています。