駐在員のリアルってどんな感じ?3年住んでもドイツ語が話せない理由

海外で働きたいけど、海外就職はハードルが高い……。

そんな人が一度は考えるであろう選択肢が、「駐在員」だ。

日本の企業に所属しながら海外拠点で働く駐在員であれば、海外移住の手配は所属企業がしてくれるし、基本的に期間限定だから人生設計もしやすい。

海外志向の人にとって、駐在員という働き方はまさに理想的だろう。

とはいえ、「駐在員って実際どうなんだろう?」と、ピンとこない人も多いのではないだろうか。

というわけで今回は、ドイツ在住のわたしが、現地の駐在員の方たちから聞いた話を紹介していきたい。

駐在員なのにサビ残当たり前!?働き方は日本流or現地流

海外で働くというと、日本とはちがって毎日定時帰宅、有給休暇もたくさん取れる……というイメージが強いと思う。

しかし駐在員から聞いて驚いたことなのだが、「日本企業より日本企業している企業」は、実は結構たくさんあるらしい。

海外拠点とはいえ、働いている人がみんな日本人だと、しぜんと働き方も日本流になる。

日本人だけの閉鎖空間では価値観が更新されず、いまでも昭和的な働き方がまかり通っているそうだ。

基本的に社員はみんな日本人コミュニティに所属しているから現地の人との交流はなく、日本で働くのとほとんど変わらない生活を送っている人もいるとのこと。

その一方で、日本の企業ではあるものの現地基準で働き方や待遇が決められており、その国の働き方に合わせている「なんちゃって現地企業」もある。

外資系企業や現地採用の人たちといっしょに働く職場だと、このタイプが多いそうだ。

いままでと同じ働き方ができる「ザ・日本企業」のほうがやりやすい人もいるし、「なんちゃって現地企業」のほうが海外経験として貴重だと考える人もいる。

それは好み・適正の問題なので、どちらがいいということはない。

しかし「海外に行ったのに海外らしい経験を一切できなかった……」とがっかりする事態は避けたいところ。

どちらの働き方で、どういう職場の雰囲気なのかは、事前にちゃんと確認しておくことをおすすめしたい。

英語だけでOK?現地語ってどれだけ必要なの?

さてさて、英語以外が公用語の国に赴任する場合、気になるのは「現地語はどれくらい必要なのか」だと思う。

「英語が話せればいいって聞くけど本当に大丈夫?」というのは、実際に研究者としてドイツに渡る予定だった友人に聞かれたことでもある。

ドイツの都市部であれば、ドイツ語が話せずとも、英語だけで生活することもできなくはない。駐在員として選ばれる程度の英語力があれば、生活にそれほど苦労はしないだろう。

実際、3年間ドイツで暮らしていてもまったくドイツ語を話せない駐在員も、何人かいたしね。

しかし、外国人が少ない地域や田舎であれば話は別だ。

わたしが住んでいるのはドイツの小さな村で、大家さんや行きつけレストランのマスターたちは英語がほとんどしゃべれない。書類もすべてドイツ語だし、ご近所づきあいもドイツ語のみ。

わたしがザ・アジア人の見た目をしていても、英語で話しかけられることは一切ない(ベルリンやフランクフルトといった大都市では、最初に英語で話しかけられることも多かった)。

ほかの小さな町に住んでいたときも、鍵を失くして鍵屋に電話するも英語で話したら切られた人や、ドイツ語を話せず大家の一方的な言い分で引っ越しを余儀なくされた人もいた。

国や地域によっては英語がまるで通じないこともありうるし、環境によっては、現地語ができないといたるところで不便な生活を強いられるかもしれない。いくら「仕事場は英語だけで大丈夫」といっても、ね。

そういう事情を踏まえると、現地語は、当然ながらできるに越したことはない。

なにより、現地語を話せるとその国の文化や価値観をより深く理解できるから、海外生活をもっと楽しめるしね。

……とはいえ「やるべきなのはわかってるんだけど」と現地語の勉強を伸ばし伸ばしにして結局やらなかった、という人もたくさん見てきたから、勉強するなら事前にすることをおすすめする。

現地に行くと慌ただしくて勉強する余裕がないかもしれないし、現地の語学学校でアルファベットの読み方から習うのは、時間もお金ももったいないから。

現地で友だちづくりは最難関…日本人コミュニティに頼る人も

とはいいつつ、わたしが海外に来て一番苦労したのは、言語の壁ではなく、実は「友だちづくり」だったりする。

大学2年生の夏休み、わたしはドイツのとある大学で開催された、1か月間のサマーコースに参加した。

はじめてのドイツ、はじめてのヨーロッパだったので、「いっぱい友だちをつくってドイツ語を勉強するぞ!」と意気込んでいたのだが……。

ふたを開けてみれば、ドイツ人の友だちは、現地で日本語を勉強していた2、3人のみ。

サマーコースに参加するのは外国人だけだから、クラスメートも交流パーティーの参加者も、全員外国人。

ドイツ人の友だちがほしい!と思っても、現地の学生にツテなどあるわけもなく、かといってクラブ活動にひとりで参加するのも気後れする。

というわけで、結局ドイツ人の友だちは、ほとんどできなかった。

それと同じで、駐在員として海外に滞在しても、現地に溶け込み現地の人と交流している人は、それほど多くない。

わたしが知り合った駐在員の家族はだいたい日本人コミュニティに所属していたので、現地の人との交流は一切なし……というのも珍しくなかった。

日本人コミュニティであれば、日本語で会話できるし、価値観も似ているし、海外在住の苦労もわかってくれるから、心地いいのだろう。

企業は現地で「仕事をする」環境は整えてくれるが、現地に「馴染む」ための環境を用意してくれるわけではないから、そうなってしまいがちなのだ。

大人になると「友だちづくり」はなかなか大変だし、現地の人相手となるとまた一段ハードルが上がるしね……。

しかしそこは趣味のクラブを探したりツテで紹介してもらったりと、機会を自分からつくるしかない。

むずかしいことではあるけど、現地に味方がいるのはこの上なく心強いから、友だちは多いほうがいい。当然だけど。

自分がよくても家族がギブアップは駐在員あるある

そして駐在生活で忘れてはいけないのが、家族の存在だ。

駐在員として海外赴任する際、配偶者や子どもを伴う人は多い。

配偶者自身がもともと海外志向だったのならともかく、「海外で暮らそう」なんて提案は人生設計を丸ごと変える一大事。うまく海外生活に適応できる人もいれば、そうじゃない人もいる。

外国語が話せないから人とのかかわりは日本人コミュニティのみ、そこで馬が合わず浮いてしまいホームシックになった……なんてのは駐在員家族あるあるだ。

海外生活は子どもの将来のためになると考える人も多いが、子どもからしたら、友だちと離れて見ず知らずの異国で生活するのだから、当然心理的負担は大きい。

現地の学校に入ってもなにもわからずふさぎこんでしまったり、日本人学校に入った結果帰国子女なのに現地のことをなにも知らなかったり……親としては悩みの種だろう。

精神的に限界になり、家族だけが日本に戻り任期中は海外で独り暮らし、という悲しい話も聞いたことがある。

家族を伴って赴任するのであれば、日本人ネットワークを使ってアドバイスを受けたり、先輩駐在員に相談したりしておくことが不可欠だ。

配偶者や子どもが孤独感を感じないよう、不便をできるだけ減らせるよう、現地で頼れる人に当たりをつけておくことも必要だと思う。

企業のバックアップが手厚ければそれに頼ればいいが、そうでないのなら、有料の移住サポートサービスを使うのもアリ。

駐在同伴の海外移住で海外生活をめちゃくちゃ楽しんでいる人もいれば、馴染めずに胃を痛めながら生活している人もいる。家族の適性を考えて、事前に相談や確認をしておくことが大切だ。

駐在員志望なら準備と確認がなによりも大事

駐在員として海外で働くというのは、ものすごく大きな「チャンス」だと思う。

海外に行きたいと思っても、住むところや仕事先を見つけるのが大変で、なかなか実現できないという人は多い。しかし駐在員であれば、企業のバックアップを受けながらそれができる。

そんなチャンスが目の前にあるのなら、利用しない手はない。

しかし当然ながら、海外生活はうまくいかないこと、予想外のことの連続だ。

それを乗り越えるために必要なのは、まず現地にどれだけ比重を置くかを考え、それに応じた準備をすること。外国人コミュニティ、日本人コミュニティ、現地コミュニティ、どこに所属したいかで必要な準備は変わるからね。

現地コミュニティの比重が高いのであれば、できるかぎり現地語の勉強をしておくこと。カタコトでも話せるだけで、英語オンリーより相手の対応がよくなることも多い。

また、家族がどう思っているのかを聞き、海外生活が良いものになるように必要なサポートを確認すること。ネットを駆使すればたいていの情報は手に入るし、わからないことは事前に現地にメールで問い合わせておけばいい。

日本のような「迅速で親切な対応」を期待できないことも多いので、早めに動くことが大切だ。

そして、困ったときのフォロー体制をできるだけ万全にしておくこと。企業のサポート範囲がどの程度かの確認はもちろん、追加でプライベート保険に入るか否か、緊急帰国に必要な渡航費の確保はできているか、などなど……。可能であれば、頼れる現地の友だちをつくるといい。

案外どうとでもなるのが海外生活ではあるが、それはあくまで「海外適性が高かった人」の話。

自分や家族がそうだとはかぎらないことを踏まえて、慎重すぎるくらい話し合って、確認して、準備しておくに越したことはない。身の回りのことがうまくいけば、そのぶん仕事に集中できるしね。

というわけで、下準備を念入りにして、実りの多い駐在生活を送ることを祈りたい。


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【著者】雨宮 紫苑
ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。
Twitter:@amamiya9901