20代の転職活動は難しい?「転職ネイティブ世代」の動向と注意点を詳しく解説

若い人の転職が増えています。

より良い条件、より高い成長性のある企業を求めて若い世代の転職活動は活発化しており、とくに20代に顕著に見られます。

そのような中、現在の求職者や企業はどのような会社、あるいは人材を求めているのでしょうか。

今どきの若者の振る舞いや価値観などの分析と併せて、見ていきましょう。

年々増加する20代の転職とその理由

マイナビの調査では、転職者の比率は世代を問わず増加傾向にあります(図1)。

図1 正社員の年代別転職率(複数回答)
(出所「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」株式会社マイナビ) p10
転職動向調査 2021年版(2020年実績)-.pdf

2020年はコロナ禍ということもあり、全体的に転職を控える人は多かったと思われますが、20代の転職率が他の世代よりも群を抜いて高いことがわかります。

「転職ネイティブ」とも呼べるでしょう。

また、20代の転職意欲はコロナ禍にあっても他の世代より旺盛です(図2)。

図2 転職活動に対する新型コロナウイルスの影響
(出所「『転職動向調査2021年版』を発表」株式会社マイナビ」)
https://www.mynavi.jp/news/2021/03/post_30246.html 

「転職に積極的になった」「やや転職に積極的になった」割合を合わせると、特に男性では51.2%で、他世代よりも大幅に高くなっています。

終身雇用の崩壊も大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

ひとつの会社に長く勤めることに大きな価値を感じなくなっているとも言えます。

そして、数多くある転職理由のうち、若い世代ほど多く挙げている項目は以下のようなものです(図3)。

図3 転職活動を始めた理由(複数回答)
(出所「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」株式会社マイナビ より筆者作成)  p11
転職動向調査 2021年版(2020年実績)-.pdf

収入アップを目指すのは全世代のことでもありますが、コロナ禍においての企業の待遇(テレワークや時差出勤)への不満が20代で大きくなっています。

注目したいのは「休日や残業時間」です。50代の数字と比べると大きな開きがあります。この意識の違いはなぜ生まれるのでしょうか。

注目される「Z世代」の仕事への価値観

転職ネイティブとも言える20代を理解するために、Z世代を知ることは欠かせません。

Z世代とは概ね1990年代中盤以降に生まれた世代で、大卒であれば社会に出てすぐ〜数年といったところです。

「デジタルネイティブ」「SNSネイティブ」と言われることもありますが、デジタルに限らない特徴を持っているのです。

Z世代の育った背景

Z世代は「不安定な時代に育った」と言われますが、実際の出来事を振り返ってみましょう(図5)。

図5 1995年以降のおもな出来事
(出所:「キーワードでみる年表 平成30年の歩み」NHK などより筆者作成)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/heisei/chronology/

もちろんいつの時代にも暗いニュース・明るいニュースは存在しますが、やはりショッキングなニュースの密度が高い時代ではないでしょうか。

このように見ると、国内だけでなく国際社会を震撼させる出来事の連続とも言えます。一晩にして世の中の常識をひっくり返してしまう出来事とも呼べます。

Z世代が「安定性を求める」と指摘されることにも無理はないでしょう。

就職・転職市場の大変化

一方で、厳しいばかりでもないという様子があります。「ゆとり世代」との違いはここにあります。

博報堂出身で若者研究を続けている原田陽平氏は、Z世代は就職についてこのような傾向があるといいます。

20年以上もの長い間、若者研究を続けている私の感覚では、第一次就職氷河期の余韻が残り、第二次就職氷河期世代もいた「ゆとり世代」が学生だった頃は、私の研究を手伝ってくれている彼らにやる気を出させるために「こんなこともできないと、どこにも就職できないよ」などと、就職不安につけ込んだ「危機感訴求」をすると、それが大変効果的で、彼らの目の色が変わっていました。

ところが、逆求人サイトが全盛の、超人手不足の時代を生きてきたZ世代には、この「危機感訴求」はあまり効かなくなっています。

<引用「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか」光文社新書 p65>

上に紹介した「転職理由」は、人手不足を背景にした「働き心地重視」の傾向とも言えます。特に逆求人サイトの影響は大きいでしょう。事前に待遇などについて念入りにコミュニケーションを取ったうえで足を運べるからです。

それも、ある意味では「片手間で」です。何通もエントリーシートを書いたりOB・OG訪問をしたりという手間はありません。デジタルネイティブならではの「基本はネットでコミュニケーションを取る」という生活形態にもマッチしています。

楽観的・ポジティブな面を持ちながら慎重さも持ち合わせている、といった特徴があります。

「転職ネイティブ」の転職活動と就業傾向

では、転職ネイティブの転職活動の様子を見ていきましょう。

マイナビの調査では、20代が転職で利用したサービスで多いのはこのようなものです(図6)。

図6 直近の転職で利用したサービス・手法(複数回答)
(出所「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」株式会社マイナビ より筆者作成) p16
転職動向調査 2021年版(2020年実績)-.pdf

そして、転職で利用するサービスには、

  • 費用がかからない
  • 求人数が多い
  • 情報が詳細である
  • 時間、手間がかからない
  • 自分のペースで活動できる

ことを求めています*1。

また、先の原田曜平氏はZ世代についてSNSを通じた同調志向があると指摘しつつ、就職についてはこのような出来事が見られると言います。

一人の若手社員が辞めると、他の若手社員もそれに触発されて辞める……こういった「連れション離職」も、全国の企業で増えているという話をたくさん聞きます。
逆に「連れション就職」や「連れションバイト」も増えているようです。

<引用「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか」光文社新書 p72>

これまでの就職転職活動と大きく異なるのは、SNSを通じて同じ企業を目指す仲間や転職仲間がすぐに見つかることと、仲間を通じていつでも詳細な情報交換をできる点でしょう。

企業についての話題だけでなく、転職エージェントの雰囲気や対応もまたすぐにシェアされてしまうということでもあります。OB・OG訪問よりもはるかにリアルタイムで生々しい情報を、手間をかけずに収集できる手段でもあるのです。

転職ネイティブにこそ長期プランを

「最近の若者は」と括ってしまうと、転職ネイティブの傾向は理解できません。

バブル世代と異なるのはもちろんのこと、「ゆとり世代」ともまた異なる、デジタルを背景にした転職活動方法や考え方が、転職ネイティブにはあります。

「働き心地」というのは人によって異なりますので、転職エージェントとしては登録者から現在の企業のどこが不満なのかを詳細に聞き取り具体的に掴む必要があります。

何よりも早期退職には最も気をつけなくてはなりません。

一方で、20代で転職を考える人にも気をつけなければならないことがあります。

「令和の大リストラ」に象徴されるよう、40代、50代の社員ではなく若い人に企業がリソースをつぎ込む傾向があり、若い人の争奪戦が起きていることは確かです。しかし、あまり短期の離職・転職を繰り返してしまうと、スキルの蓄積が不十分・中途半端になってしまうということです。

これは将来的に自分の首を絞めてしまうことになりかねません。

よって、転職ネイティブの転職にあたっては、転職エージェントも転職希望者も共に、どんなスキルをどのくらいかけて習得したいのか、そのスキルを持ってその先はどう自分を活かしたいのか、最終的にはどう社会と関わりたいのかまでを共に考える必要があります。


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【エビデンス】
*1 「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」 株式会社マイナビ より筆者作成 p19


【著者】清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka